ソフトバンクは、1月に中古のiPhoneの販売を始めた。中古のiPhoneは、KDDIも2020年9月から取り扱っているが、21年12月にはiPhone 11 をラインアップに加えた。いずれも「認定中古品」という位置づけで、ソフトバンクはオンライン限定、KDDIはUQ mobileのみでの扱いになる。新品のiPhoneに比べて価格は大幅に安い。
一例を挙げると、KDDIのiPhone 8は端末価格が550円(ナンバーポータビリティーで他社から乗り換え、かつ特定プラン契約の場合。以下同)。iPhone XSは1万6500円。比較的新しい19年発売のiPhone 11はもう少し高い2万3800円だが、それでも新品の最新モデルと比べると割安だ(いずれも64ギガバイト版の価格)。ソフトバンクも、同水準の価格で販売している。
アップルの「認定整備済み品」とは異なる
認定中古品とは、KDDIやソフトバンクが定めた基準を満たしている中古端末のこと。初期化したうえで、本体クリーニングを行い、基本機能が問題なく使えることを確認済みだ。長期間使っていると劣化しやすいバッテリーも、総容量が80%以上維持されているものだけを販売しているので、安心して購入できる。
ただ、アップルが販売している認定整備済み品(iPad、Apple Watch、MacなどでiPhoneは販売していない)とは異なっている点には注意が必要だ。アップルの認定整備済み品はリファービッシュ品と呼ばれ、外装もきれいなものに交換するが、キャリアの認定中古品には機能に影響のない小さな傷などが残っていることもある。
また、KDDIはサブブランドのUQ mobileのみが販売しており、基本的には回線契約が必要になる。ソフトバンクは、メインブランドのソフトバンク回線の契約者向けに販売している。アップルストアで購入するものとは異なり、端末だけを単体で購入して好きなSIMカードを使えるわけではないことも頭に入れておきたい。
2社は認定中古品の扱いをiPhoneだけにしているが、その理由は、iPhoneは古い端末でも最新のOS(基本ソフト)を使える点が大きい。iPhoneはアンドロイドに比べてサポート期間も長く、中古端末でも安心して購入しやすい。また、iPhoneの仕様には通信事業者ごとの差がなく、同一モデルが海外でも流通しているため入手しやすい。こうした点が中古端末販売がiPhone中心になる理由と言えるだろう。
総務省も中古市場拡大に注力
総務省も中古端末の拡大には力を入れている。調査会社・MM総研によると、20年度の中古端末の販売台数は185万台で、その規模は年々拡大している。MM総研は、25年度に268万台まで市場が拡大すると予測しており、今後は、KDDIやソフトバンクのような取り組みが増える可能性がある。
一方で、大手通信事業者が新品のiPhoneを大幅に値引きして販売する事例も増えている。端末の割引は、現在、2万2000円までに規制されているが、これは回線契約を伴う場合のみで、本体価格自体を値引きすることは禁止されていない。この仕組みを利用し、第2世代のiPhone SEや、1世代前のiPhone 12 miniなどを、1円など、ほぼ無料で販売する店舗が目立つようになった。
こうした割引はタイムセールに近く、いつでも適用されるわけではない。ただ、より性能の高い新品が安く手に入るとなれば、わざわざ中古のiPhoneを選ぶ人は少なくなるだろう。中古の方が端末の選択肢は広いが、スムーズに販売が拡大するかは不透明と言えそうだ。
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