楽天モバイル「契約者400万件超え」赤字脱却目指す
石野純也・ケータイジャーナリスト
楽天モバイルの契約者数が、9月末時点で411万件となり、400万件を超えた。
本格サービスを始めた2020年4月から1年間は「1年無料キャンペーン」を行って約300万件を獲得。
その後の半年間でさらに100万件を超える契約者を得て、規模は順調に拡大している。
4月に導入した、1ギガバイト(GB)以下で0円になる新料金プラン「UN-LIMIT VI(アンリミット・シックス)」が評価されたようだ。
三木谷浩史CEO(最高経営責任者)によると、最近は毎月の加入者が前年同期比で2倍程度に増えているという。
KDDIのローミングを減らしたい
一方、楽天の携帯部門のモバイルセグメントは、21年第3四半期(7~9月)は1052億円の営業赤字。
赤字幅は四半期ごとに拡大し、グループ全体の収益を圧迫している。
現状では、利用者が増えれば増えるほど、楽天モバイルの赤字は膨らむ構造になっている。
まだ基地局が少なく、電波が届かないエリアの穴埋めをするため、KDDIとローミング契約を結んでいるためだ。
楽天モバイルの利用者は、楽天の電波が届かないエリアでは、auのネットワークにつながる。
その際にKDDIに対するローミング費用の支払いが発生する。
料金は、1GB当たり500円。
auローミング時の高速通信は5GBまでに制限されているが、利用者が多く使うと、その分、KDDIへの支払いが増える。
KDDIへの支払いを減らすため、楽天モバイルは基地局設置を急ぎ、自社エリア拡大のペースを上げている。
本格参入時に総務省に提出した計画を約4年前倒しし、10月14日には人口カバー率94.3%を実現。
基地局で使う半導体の調達が間に合わず、進捗(しんちょく)はやや遅れているが、22年3月には人口カバー率96%まで拡大する予定だ。
エリア拡大が進んでいることで、KDDIから借りるローミングエリアを10月から大幅に縮小している。
切り替え対象になったのは23道県。
ローミングからの切り替えを既に始めている地域と合わせると、39都道府県で楽天回線への切り替えが行われている。
対象となった地域でも一部はKDDIのローミングは残るものの、切り替えを加速させているようだ。
楽天モバイルとKDDIのローミング契約は半年に1回見直しを行っている。
次回更新時の22年4月に「もう1回、大規模なローミングの停止を行うと、かなり収益の改善効果がある」(山田善久・楽天モバイル社長)。
ローミング費用を大幅に圧縮できることで、22年第2四半期(4~6月)には、黒字化できる見通しだ。
赤字構造から脱却できれば、加入者獲得に本腰を入れる可能性もある。
契約にはエリアも注意して
ローミングの終了は、利用者にとって二つのメリットがある。
一つは、データ容量の制限がなくなること。
周囲に楽天回線がない地域では、ローミング時の5GBが上限になっていたが、
楽天回線接続時にはデータ通信をどれだけ使っても料金は月3278円で変わらない。
もう一つのメリットが通信速度だ。
KDDIのローミングは、プラチナバンドと呼ばれる800MHz(メガヘルツ)帯を使っているが、
低い周波数は電波が遠くまで届き、エリアを広げやすい半面、電波容量が少ないため速度を出しづらい。
楽天の自社回線は1.7GHz(ギガヘルツ)で容量も大きいため、通信速度を上げやすい。
ただ、周波数によって電波の特性が異なるため、ローミングを打ち切った当初は、
エリアの“穴”ができてしまう恐れもある。特に1.7GHzは屋内まで電波が届きにくく、自宅で利用する時に電波が弱くなってしまうリスクがある。
楽天モバイルは利用者と密に連絡を取り、圏外になった人にはドコモ回線を使った格安SIMの端末を貸し出すなど対策はしているが、
大手3社よりはつながらない場所が多くなる点には注意が必要だ。
契約時には、料金の安さだけでなく、エリアも念頭に置いておくべきだ。
楽天モバイルは1GB以下なら料金がかからないため、まず2回線目として試してみてもいいだろう。
<「知ってトクするモバイルライフ」は毎週火曜日に掲載します>
サブ回線の話題