肉人
慶長14年(1609年)というから、関ヶ原の合戦と大坂の陣の中間になる。所は大御所、徳川家康が住む駿府城。4月4日の朝だった。家康は将軍の位を息子の秀忠に譲り、駿府に住んで天下を裏から動かしていた。江戸にはいないが、名実共に天下の第一人者である。家康の警備は日本一厳重であったはずだ。そんな駿府城の中庭に、突如奇怪な生き物が現れた。
不思議と人間っぽい小柄な生物で、指の無い手で天を指す。一頭身の肉塊のような、子供のような。どこから来たのか、気がついたらそこにいた。例えて言えば、大きな里芋かこんにゃくに目鼻らしきものをつけ、短い手足を取りつけたようなもの。居合わせた人々は声をあげて驚いた。
肌の色は、豚色というか妙に生々しい肌色で、言ってみれば肉人(にくじん)。今なら肉饅マンとでも言おうか。警備の侍は、肉人をつかまえようとするが、肉人はその姿に似ずすばしこくて捕まらない。
この騒ぎを聞いた家康は、「捕まえられないなら、追い払え。」と命じた。警備兵は肉人を大勢で取り囲んで、城の外まで連れ出し、その後も追い続けてついに小山の向こうに追放した。
思えば一昨年には駿府城が全焼した。肉人の現れる一か月前には、夜空に四角い月が現れたという。肉人は何故ここに現れたんだろう?家康に何か伝えたかったのか?そも肉人はしゃべれるのか?
ある有識者は云った。「惜しいことをしましたな。その者は中国の史書にも出てくる。その者を捕えてその肉を食していたら、とても力が強くなり武勇に秀でたことでしょう。」他にも現れたってこと?食べた人はいるのかな。百鬼夜行などに出てくる妖怪〝ぬっぺふほふ〟に似ている。これは割と有名な話だよ。
慶長14年(1609年)というから、関ヶ原の合戦と大坂の陣の中間になる。所は大御所、徳川家康が住む駿府城。4月4日の朝だった。家康は将軍の位を息子の秀忠に譲り、駿府に住んで天下を裏から動かしていた。江戸にはいないが、名実共に天下の第一人者である。家康の警備は日本一厳重であったはずだ。そんな駿府城の中庭に、突如奇怪な生き物が現れた。
不思議と人間っぽい小柄な生物で、指の無い手で天を指す。一頭身の肉塊のような、子供のような。どこから来たのか、気がついたらそこにいた。例えて言えば、大きな里芋かこんにゃくに目鼻らしきものをつけ、短い手足を取りつけたようなもの。居合わせた人々は声をあげて驚いた。
肌の色は、豚色というか妙に生々しい肌色で、言ってみれば肉人(にくじん)。今なら肉饅マンとでも言おうか。警備の侍は、肉人をつかまえようとするが、肉人はその姿に似ずすばしこくて捕まらない。
この騒ぎを聞いた家康は、「捕まえられないなら、追い払え。」と命じた。警備兵は肉人を大勢で取り囲んで、城の外まで連れ出し、その後も追い続けてついに小山の向こうに追放した。
思えば一昨年には駿府城が全焼した。肉人の現れる一か月前には、夜空に四角い月が現れたという。肉人は何故ここに現れたんだろう?家康に何か伝えたかったのか?そも肉人はしゃべれるのか?
ある有識者は云った。「惜しいことをしましたな。その者は中国の史書にも出てくる。その者を捕えてその肉を食していたら、とても力が強くなり武勇に秀でたことでしょう。」他にも現れたってこと?食べた人はいるのかな。百鬼夜行などに出てくる妖怪〝ぬっぺふほふ〟に似ている。これは割と有名な話だよ。