旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

先生、そりゃないよ

2018年02月14日 21時37分17秒 | エッセイ
先生、そりゃないよ

 自慢じゃないが、学生の時には何度も先生に叱られた。元から要領のよい方じゃあない。でも叱られたことは覚えていても、その内容はすっかり忘れた。よい叱られ方は、その場でガツンで後を引かない。未だに覚えているのは、叱られた言葉に納得が出来ない場合だ。すっきりしないで、、わだかまりが残る。叱られたその場で、理路整然と異議申し立てが出来ていたら、人生が変わっていたかもね。

 最初は小学校6年の時。おバアさんのキツイ先生だった。理科室でノコギリ鮫の歯(?ノコギリの部分)を振りかざして女の子数人を追い回していたら、捕まった。まあ言っちゃあ何だけど、キャーキャー言って逃げ回っていた女の子の方が、はるかに楽しんでいた。でもまあいい。これは現行犯だから、怒られて当然だ。

 ただ先生、余計な事を言った。「あなたはね、お母さんが思っているほど、良い子じゃないのよ。」お袋は関係ないだろ。別にお袋の前で良い子を演じた覚えはない。そんなに器用な柄じゃあない。と言ってお袋を責める積りは毛頭ない。彼女は規格外だ。地球規模に愛情が大きく、良くも悪しくも常識に捕らわれないから、良いといったら良いのだ。
 先生はただ眼前の行為を、本人に対して叱ればよいので、親とかを持ち出してはイカン。後味の悪い叱られ方をすると、後々まで傷つくさ。

 中3の頃、図書室の前の教室で、休み時間に5-6人の生徒が残っていた。昼休みだったのかな。その内、数人が教壇に手をついて黒板の下の壁を、後ろ足でバンバンと蹴り始めた。俺も一緒になって蹴った。別に蹴る理由はない。何が面白いのか、今では分からないがバーンバーンと思い切り蹴った。
 すると顔をしかめて見ていた1人の生徒が立ち上がり、同じように蹴った。バーン。その直後に図書室から飛び出してきた老教師が、「何をやっとる!お、お前か。」と一回だけ蹴った生徒の耳をつかんで教室から引きずり出した。「他にもやった者はおるのか!」
 俺たちは素早く顔を見合わせ計算した。「奴はどうせ助からない。何人か名乗り出ても、出なくても同じだ。」汚ねー。老教師に怒鳴られ殴られた生徒は、責任を他になすりつけることはしなかった。男らしー。
 めっちゃ後ろめたい俺たちは、後で謝ったりなだめたりしたが、真面目な奴は結局本心からは許してくれなかった。傷ついていたんだろうな。今更ごめんね。
 先生は、もっと冷静になって状況を把握した方がよいね。まあ悪いのは俺らだけれど。

 最後は、逆にあっぱれな叱り方。中高一貫の校舎は、丘のてっぺんに建っていたから、よく夕暮れ時に渡り鳥がガラスにぶつかった。麓の駅から歩いて15分ほどかかる。登下校時は、注意は再三されていたが、横にダラダラと広がって通行の妨げとなっていた。あの横並びほど、罪の意識が無いわりに迷惑な行為はない。
 自分はその時現場にいなかったので、後で聞いた話だ。或る朝、40代の国語教師が速足で列を追い抜き、外側をチンタラ歩いている生徒を後ろから容赦なくガツンガツンと殴って歩いたそうだ。やり過ぎだ。キチガイ教師とうわさは沸騰したが、翌日から列のふくらみはピタっと止んだ。
 先生の追い抜き、ぶん殴り行進は、それほどインパクトがあったのだ。先生、あっぱれ。さぞかし拳が痛かったでしょう。不思議なことに、先生の人気はその日から上昇傾向を示した。恐れたのではない。恐れ入ったのだ。

コメント
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