kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

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泊まり込み 23

2006年08月17日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

私は、2階の“あの部屋”にある大きな冷蔵庫の前で気を失っていた。



あれから1ヶ月が経った。



思い出したくない事や、思い出せない事が多過ぎて、“考える”と言う事を
完全に放棄している。私は散々な事情聴取やしつこいマスコミのおかげで
ノイローゼになった。もちろん、仕事は辞めた。今は実家に帰って、引き
こもりの生活を余儀なくされている。わすかな外出は、未だに赤黒く晴れ
上がっている右手の治療と神経科へ通いに病院へ行く時ぐらいだった。





ブタの事で知っている《事実》

ブタは即死だった。ブタの住処はやはり2階のあの部屋だった。しかし、
勝手に入り込んだわけじゃない。ブタはあのビルのオーナーの娘だったのだ。

親子2人は、いくつか持っているビルの管理費だけで生活出来ていた。
彼らは、マンション、土地、山など所有する田舎の地主で、今回の事件が
起こったビルは都会で初めて買い取ったビルで、オーナーが幼い頃から
精神を病んでいる娘にプレゼントしたのだった。容姿や精神的な部分で
どこに行っても虐められる地元の田舎では駄目だ。新しい土地での新しい
出会い、もっと人とのふれあいや厳しさを知ってほしい、といった親心
だった。コンビニにアルバイトとして入れたのもそういう意味だった。


しばらくして、オーナーは姿を見せなくなった。


オーナーの姿を見かけなくなっても誰も不思議には思わない。それぐらい、
都会での隣人のつきあいは希薄だと言う事だ。それに、経理のほとんどを
ブタがしていた為、オーナーが消えていなくなろうが、死んでようが、ビル
内で仕事をしている人間にとって何も変わらなかった。オーナーの知り合い
には、病気改善が目的で海外に長期休養で出かけているとブタは嘘をついて
いた。ブタには知り合いはいない。見事に世間を騙し通せた。


そして、事件が起こり、ブタが死んだ。


その後、2階の部屋にある特大冷蔵庫から、細かく切り分けられた“人間”
が発見される。その犠牲者は複数で、中には父親であるオーナーの“パーツ”
も見つかった。解剖台として使われた広めのキッチンに、血を抜く作業場
としてバスルームがあった。犠牲者の共通点は、最近都会に出て来た独り
暮らしの若者達だった。人付き合いや仕事が出来ないのにコンビニの仕事
を続けていたのは、品定めををするのには好都合だった。夜中に一人分の
食料を買う若者達。なぜ、彼らを襲ったのかは、ブタが死んだ今は誰も
解らない。しかし、ブタは大量殺人の犯人である事には間違いなかった。




ただ、どこを探してもあの斧は見つからなかった。








物語は唐突に終わる。明日は《真実》編。           ボスヒコ