kiske3の絵日記

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泊まり込み 21

2006年08月15日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

ド============ン!!!!!!!!

「!!!…………………………」

真後ろで音がやんだ。彼女はバリケードの最後の机に手を置いたまま、耳を
澄ましていた。微かに話し声が聞こえる。さすがに、ビルならではの反響音
とは思わなかった。引きつった笑い声、悲しげにすすり泣く声も混じって
いる。その中に聞き慣れた不快な音があった。それは豚のような鼻息だった。



落下物は浮浪者の頭には落ちて来ず、地上に直撃して粉々に砕け散った。寸で
の所で若い警官が浮浪者の足を持って引っ張ったのである。引っ張り方に勢いが
あった為、若い警官と浮浪者は落ちて来たガラスの破片やモニターの部品なども
避けられた。しかし、逃げ遅れた先輩警官達はそれらを全身に受けて倒れた。



彼女は躊躇なく後ろを振り向いた。血だらけのブタが無表情で立っていた。
ブタの右手には都会のビルの中で絶対に見る事はない物がしっかりと握られて
いる。ブタはそれを嫌そうに上げて近くにある机の上に振り下ろした。

ド============ン!!!!!!!!

ラップ音ではなかったのか!!!??? 否、最初は確実にラップ音だったはず…
と思った時、高田が倒れている辺りに人らしき白い影が揺らいでいるのが見えた。
話し声やラップ音の原因をつきとめたが、ブタが持っている物はどこから持って
来たのかは皆目わからなかった。それは、長さが50cmぐらいの錆びた斧だった。



若い警官は救急車や県警の応援を要請をした後、階段を上がろうとしている。
エレベーターが故障しているのか、ボタンを押しても下降して来なかったのだ。
彼は勤続初めての大事件の遭遇に不謹慎にも心が躍っていた。厳しい訓練の
手はずを思い出せば大丈夫だと自分に言い聞かし、応援を待たずして現場に
向かっていた。2階に上がった辺りで1階の方からドアが閉まるような音がした。

自分が用心していなかった方向からの物音に、先ほどの自信も吹っ飛び、彼は
大きく振り返った。薄暗いライトに照らされて塵が舞っている。気のせいかと
思い、自分の臆病さに舌打ちをした時、何かがもの凄い勢いで駆け上がって来た。

タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!

「え!?何だ!?誰だ!!!だ、……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

1階途中の折り返し地点を曲がって姿を見せたのは、血だらけのつなぎを着た
首から上が無い男だった。若い警官は叫びながら一目散に駆け上がった。ほぼ
同じ速度で追って来る首なし男。蒸し暑い階段内に拳銃の発砲音が響き渡る。









彼女は近くの鉛筆やカッターなど鷲掴みして身構える。ブタはこぼれ落ちた
文房具を無感情で目で追いながら、もう一度、斧を振り落として音を立てる。
そして、彼女にゆっくり目を戻し、裁判するかのように話しだしたのであった。

「…おまえ、なんで、き、きたんや…」
「なんでって、仕事よ!仕事で来たんじゃないのよ!」
「…。ちゃう、ちゃうやろ。お、おまえの事、なんか、き、聞いてないやろ?」
「はあ!? バッカじゃないの!? 自分で何言ってんだかわかってんの!?」
「ふ、…復讐やったら、高田、のせいやからな。あ、あいつが悪いんやで…」
「高田!? ……ねえ、ちょっと訊きたい事があるんだけどさ…。おばさんさぁ、
 高田さんと大切な約束したけど、裏切られたでしょ? …ざまあみろだわ!」

ブタは本来の姿に戻り、雄叫びを上げながら斧を大きく振りかぶった。彼女は
その瞬間にブタの懐に飛びこんで、鷲掴みにしていた物を顔目がけて突き
刺した。斧は最後のバリケードの机に突き刺さり、ブタの口に直撃した文具類は
前歯をほとんど折った。ブタはよろめきながら後ろに落ちてあったパソコンに
つまづいて倒れる。彼女は斧が刺さった机を退かして、入り口のドアの内鍵を
外した。ドアを開けた時に、階段の方角から拳銃の発砲音が聞こえた。彼女が
発砲音で一瞬たじろいだ時に、血だらけのブタが四つん這いで走って来た。















うう…、終わりそうで終わらない。でも、もうすぐ終わるぅ。   ボスヒコ

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