元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

さすらい少女2004夏 目次

2021-08-09 06:18:24 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004 夏

-目次-

     

   10 11 12
















「ぶぉぉぉぉぉぉぉ、ぶごごごぉぉぉぉぉぉっぉぉおおっ、オイラはフォームデストロイヤぁぁぁぁぁぁあっーーーーーー、オ前はぁぁぁオ前のぉぉぉぉ存在はぁぁぁぁ存在はぁぁあぁだぁめぇだぁぁぁぁ、だぁめぇぇだぁぁぁ、うううう宇宙がぁぁぁ許さねぇぇぇんだぁぁぁぁ、喰ってやるぅぅぅうっぅうぅぅ、オイラはぁぁぁぁ、オイラはぁぁぁぁ、どぉぉぉこぉぉぉまぁぁでぇぇもぉぉぉどぉぉぉぉこぉぉぉぉまぁでぇぇもぉぉぉぉぉ、いつぅまぁでぇもぉぉぉぉぉぉ、オ前を追ってぇくぅぅぅぅぶぉぉぉおぉぉぉぉ・・・・・」
 



KIPPLE


さすらい少女2004夏 12

2021-08-08 06:35:25 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-12-


 私は公民館の戸口のところで不安そうに待ってる弟のところに直行して、ギュッと腕を握って引っ張って、さっさと公民館を出てったよ。相変らずカンカン照りで暑い暑い、霊安室はひんやりしてたので余計に、むわ~っと感じるわ。気づくと、まだマスクとかしてたんで全部取って、ポイって道路に投げ捨てた。さて、どうしようって、私の手を強く握り締めてる弟の顔を見ると、けっこう泣けてきて、いとおしくて抱きしめた。そんで青い顔して汗だくで震えている弟の耳元で、そっと、でも物凄く力強い小さな声でささやいた。

まっかせなさい!このお姉ちゃんにまっかせなさい!親戚縁者なんて最近は、お年玉もケチる嫌なやつばっかだ!引き取られるなんて、まっぴらよ!ねぇ!あんたも、そうでしょ!

 って弟は、こくんと、うなづいたよ。やっぱ感じてたんだな、親戚なんかに引き取られたら、それこそ、生命保険でもかけられて殺されるのがオチだ。私は死んでるから、えへへ、いいけどさ、何たって弟は本当にまだ生きてるわけだし、独りぼっちの天涯孤独だ。よしよし。まかせないさい!たとえ幽霊だろうが何だろうが、あんたを全力で守ってやるからさ、立派な男に育ててやるぞ!そして、さらに物凄く力強い小さな声で私は弟に囁いた。

ど~んと、お姉ちゃんの豊満な小さな胸に飛び込んで、大船に乗った気持ちで、まーかせなさい!あったしはねー、幽霊になって旅に出て、スーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着してきたのよ!見てよ、この私の身体を!うりうり!活力に満ち満ちてるんだからさ、一つ一つの細胞がチョー活性化して亀石の上で神のゴールデン・スーパーエナジーを受けて、死んでいようが幽霊だろうが、もう関係ないから!とにかく、ここに!あんたの目の前に私はちゃんといるよ!全身全霊でお肉の塊1つで、100万馬力で、チョッパーバイクで、あんたと一緒に荒野の人生ハイウェイ、大爆走だ!思いっきり充実して生き抜いてやろうよ!ケータイもパソコンもTVゲームも、そんなもんもう、いらなーーーい!生身で勝負だ!ドンとこいっ!何故、ベストを尽くさないのかぁ~!

 やっと弟が笑った。ふぅ~よしよし、良い子だ、うしっ!

 ねぇキャプテン、あんたに影響受けたせいで、私は生きてる幽霊になっちゃったよ!本当なら焼け死んで昇天してたんだね。弟たった一人残してさ。よしっ!キャプテン!あんたに宣言してやるわ!

 私は、キャプテンみたいにゴミ屑みたく殺されたりしませ―ん!

 私は、死にましぇーん!

 だってもう1度、死んでるし、しかも、このスーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着した私は、今、限りないエナジーに満ち満ち、人生を!全身の細胞から湧き出す生命力!身体中に刻み込まれた、この黄金のド活力で全力を振り絞って乞食でもなんでもやって、このダイヤモンドの絶対に傷つかない図太い神経と無敵の内臓と!カツ丼と!不屈の精神で、人生を!人生を!絶対に生き抜いてみせる!何が何でも幸せになってやる!肉肉幽霊として幸福に生き切って見せる!気合ダッシュと根性ラッシュ!

 私は炎天下の中、座り込んで弟を思いきり抱きしめると、タオル地のハンカチで汗を拭いてやって、それから、すっくと背筋を伸ばして立ちあがり、ピッカピッカに輝く大空に向けてバッと両腕を広げガニマタで地面にどっしり足をつけ、腰を落として、涙こらえて、ふんばってふんばって、拳を握り締め変身したてのハルクみたいに雄叫びを上げたよ。

「うがぁー!キャープテーン!あんたはゴミ屑みたく死んでったけどさー!あったしは死んでも死なない100万馬力のウルトラ少女だーい!キャプテーン!あんたの得た自由ってなんだったのさー!ホントは死にたがってたんじゃないのー!あったしは思いっきり、これから自由に生き抜いてみせるよー!キャプテーン!あんた、やっぱし、ダッセーよ!時計を捨てて手にしたのは自由じゃなくて、そりゃ死だよー!わかってたんでしょー!キャプテン!私はケータイや掲示板を捨てて本当の自由を手にしてムチムチの肉肉エナジー満載幽霊として爆裂ダッシュで生き抜いて見せるぞーーー!

それが私!それが私の幽霊道!

 

 さよなら、キャプテン・アメリカ!

 そして、有難う、キャプテン・アメリカ!生身の幽霊はキャプテンさまさま!

 いいかーキャプテン!私の名は!今から!

 ゴースト・キャプテン・ジャパーーーン!略してG・C・J!

 何が何でも生き抜いて、本物の自由の旅にでる幽霊なのだー!参ったかー!

 

 これで、話は終わりにするね。何たって、これから私のケータイ・メール・掲示板、神経いらいら糞くらえ!の本物の人生がはじまるからだよ。でもさ、ちょい、気になるっていうか、う~ん、幽霊って本当に死ねないのかなぁ~?って!死んでたまるかぁ~♪成仏なんてヤナこった~♪

 

 じゃね、ばいば~い!たぶん、もう会う事もないね!

 今まで聞いてくれて有難うね!そっちは生きててね!

 あーばよ!

 

 

 

 ニカッ!





さすらいの幽霊








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さすらい少女2004夏 11

2021-08-07 06:27:52 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-11-


 フワーっと冷気と供に、引き出しみたいのから現れたのは、ズバリ、透明なビニール袋に入れられて、名札を付けて前から順に横向きに並べられた黒焦げの死体が3つだ。ニコニコが、いちいちビニール袋についたチャックを開けてるよ。焼死体丸出しにしやがった!

 うぅ、覚悟はしていたものの、うえ。げろげろ!げろげろ!なぁんてね!ふん!輝く鋼鉄の心臓とダイヤモンドの神経を手に入れた私はもう何があっても堂々だ!こい!来るならこい!なんでもこい!だ!とは言うものの、お父さんにお母さん、グチャグチャだけど全然分かるじゃん!げー!うぅっ!うわぁ~ん!ううわぁ~ん!何で私は、こんなに辛い目にぃ~ひぃ~!あんまりぃ酷すぎます~!この世は地獄ですか~!骨が突き出てるよ~、マスクしててもオエオエなこの臭い、何?これ、喉に引っ付いてくるような、げほげほ!だー!うが!うが!しっかりするんだ!キャプテン!キャプテン!見守ってくれー!

 そして、私。

 私だった。間違いない。実に私で。ちゃんと私で。私が見ても私だった。私が言うんだから本当だ。役所や警察はさすがだ。私は真っ黒け。身体は半分くらいしか残ってなくて下半身は無いし、胸も黒いくすんだ色の骨が突き出したりしてメチャクチャで、両腕は酷く焼け焦げた感じでメチャクチャな胸の上で両手を合わせるようにしてる。顔っていうか、頭は黒焦げで無い。穴が開いてて脳味噌みたいのが黒ずんでぐにょぐにょ見える。目や耳や鼻も溶けてくっついたみたいになってる。けど、私だ。全体はハッキリしてる。私以外の何物でも無い。そして隣りにニコニコがいるのも忘れて私は絶叫したよ。

「ぎゃぁーーー!なんなのよーーー!私は今、生命力バリバリで身体の底からボウボウと細胞が活性化して燃えてるのよぉぉぉ!なによぉおおお!死んだくらい!死んだくらいぃぃぃいいい!死んだくらい、なんだってのよぉぉおお!いいわ!私は幽霊だったんだ!家を出る前に焼け死んでたんだぁー!だからなによ!シックスセンスまるだしじゃん!死んだのに気づかずに思いを遂げたんだぁー!じゃ、このムクムクと湧き起こってくる生命力はなによぉぉおおお!この生命力は!私を!ちゃんと!生身の幽霊として!ちゃんと!生かしているじゃないのぉぉーー!」

 あんまりにも堂々と絶叫するもんだから、隣りにいたニコニコはさすがに驚いてたよ。あはは、実は私は幽霊だったんだ。そんで、それを目の前にして、目をむいてるよ、無理も無いや。あったしだって、気が狂いそーだー!で、なんだっけ、私は何?幽霊なんだ、生きてる、あはは、世の中にはそんな事もあるんだねぇ、これからどうしよー、キャプテン!隣りのニコニコは面食らって遺体と私を見比べて、さすがにこれだけ損壊した遺体でも目の前で生身で絶叫してる私自身そのものだとハッキリと確認したようで、ぶつぶつと、もう分かりました、もう、いいでしょうって、私の腕を握って引出しを閉めようとするんで、 ちょっと待ったぁー!気になるのは遺体の私の握り締めた両手!黒焦げのボロボロの私は絶対に何か握ってる!私は、それを確かめるまで絶対に引き出しを閉めさせない!

 私はバッとニコニコの腕を振り払うと、自分の遺体に飛びついたよ。飛びついたって言っても比喩だけど、だから、ガッと自分の黒焦げの両手を幽霊の私が手袋した手で掴んで、思いっきり開いてみた。意外と固くてべりッと折れるように遺体のメチャクチャな胸の上で組まれた両手は剥がれて、あ、あ、やっぱ、

 出てきたのはケータイだよ。

 死ぬまでケータイを握り続けた私。そして幽霊になってケータイを捨てた私。うん、これは確実に私のケータイ。そう、この黒焦げ遺体はキャプテンの捨てた時計だよ。過去の煮詰まってた私、ケータイ・メール・掲示板・いらいらいらいら、いっつも気にしてストレス・バリバリの私!この私はケータイとともに死んで!ケータイ捨てたさすらいの幽霊の私は、リセットされて、旅でウルトラ生命を得たのよ!

 そうか!ニカッて笑った、あの駅員、あの旅館の老人や亀石のお婆さんたち!分かった!ニカッ“おや、あんたもかい”だ!なんだ、みんな、生きてる幽霊だったんだーーー!仲間だったんだー!だっからさ、あんなに優しかったんだー!あははは、世の中、捨てたもんじゃないかもねー!あはは、あいつ、あの亀石で会ったオッサン、キップルとか言ってたな、あのオッサン電波系ってやつだ、幽霊が見えたりすんだよ!だからか!私が幽霊だって見抜いて絡んできたんだよ!オールOK!自分が幽霊だって自覚した途端に色んな事がわかってきたよ。

 それから私は胸を張って霊安室を後にしたよ。ニコニコは、うろたえていたけど、私には何となく分かったよ、彼女、以前にもこんな事があったんだね。世の中には不思議な事があるって知ってんだ。なるほど、そっかだから私を規則破って連れてってくれたんだな。以前、ニコニコが経験したのは誰の幽霊なのか、ちょっと気になるけど、もう、どうでもいいわ。





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さすらい少女2004夏 10

2021-08-06 06:29:40 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-10-


 それから私は、その女の人に連れられて、公民館の霊安室という嫌な名前の場所に行くことになったんだ。まず、市役所に戻った。弟さんには、なにせ親族として遺体を判別できる唯一の生存者だったため仕方なく1度確認してもらったけど、それ以来ずっと、状態が悪いので入れることはできないっていうので、ああ、と私にしがみ付いて震えてる弟を見て、同感だと思った。それに同意すると、今度は遺族リストというのを出して、そこに署名だ。何とか何とかに同意します、もしも何らかの不都合が生じた場合は自己責任と伝々、ショックを受けて頭がおかしくなったりしたら、あなたの責任ですよって事らしい、じゃ弟のこの状態は弟の責任なのかよ!って何だか面倒な手続きをいくつか済ませると、こんな時にも事務的なニコニコ笑う、その実は結構親切な女の人と一緒に近くにある公民館に向かったんだ。弟は一緒に来たけど、霊安室の前で待つことにした。

 公民館に入ると警官がけっこう沢山いて、あーそうか、テロリストが爆弾を誤って爆発させたんだっけ!まったくどいつもこいつもドジばっかね!そこで、今度はマスクとビニールの上っ張りと手袋を渡されたよ。そんで、また署名。ハンコ持ってないから指で捺印だ。ペタ、ペタ。指が赤いわ。じゃ弟は、ここで、待っててねと不安がるのを不憫に思いながらも、マジ、ヤバそうなんで、しょうがない。マスクしてビニールの上っ張りを着て、手袋をして準備OKしてると、さっきの事務的にニコニコ笑う女の人がマスクと上っ張りと手袋をして、へんな事に神妙な顔をして強面の2人の男の警官と一緒に私のトコにやってきて、その片方の強面の警官が、こう言ったんだ。

「だめですよ、偽名使っちゃ。この名前は御遺体リストに載ってるんです。はい、関係ない人は出てってください!親戚の方なら、ちゃんと本名を書いてくれないと、ちゃんと、こっちは調べますからね。」だってぇーー!

 えー!そりゃないよー!キャプテン!それで引き下がるわけにはいかないので、私も意地だ。

「偽名じゃありません!親戚でもありません!本人です!娘です!私は生きてます!そのリストが間違ってるんです!」

 って言うと、もう片方の強面の警官が、ちょっと待ってなさいって、また待たされたよ。弟が戸口の方で不安そうに震えてるじゃん!早くしてくれよ!私は、ここで、こうして肉肉肉肉して、心臓どっくんどっくん、ちゃんと生きてるでしょーに!その事実は御遺体リストに載っていようと、書類がなんだろーと絶対に!絶対に!誰にも否定なんかできやしないんだから!

 しばらく待っても、その警官はちっとも帰って来ないので、そばでポカンとしながらも事務的にニコニコ笑う女の人に、私は生きてるんだ!ほら、ここに思いっきり、生命力ブッチギリで生きてるんだ!って思いをぶちまけたわよ!そしたら、その女の人、一瞬、笑いを止めて遠くを見るような目をすると、いきなり私の腕をグイって握って、警官を振り切って戸口から外に出たんで、私は引き摺られるようなカッコになって、おっとっとっとな感じだ。残された一人の警官がポカンとして止まってんの!やるじゃん!ニコニコ!ニコニコって愛称で呼んであげるわ!

 それからニコニコは、私の腕をぐんぐん引っ張って公民館の敷地の中を、ずんずん進んで行くんだけど、黒っぽいいかにも霊安室って感じの建物が近づいてくるにつれて握る手が弱々しくなり、こう言ったよ。

「いい?私は、あなたを信じるけど、何があっても取り乱しちゃ駄目よ。それからマスクは絶対に外さない事!喉がおかしくなって咳が止まらなくなって吐いちゃうから。でもね、このリストは、かなり正確なのよ。まさか間違って生きてる人間を載せてたりなんか有り得ないの!数も合ってるし、いくらひどい焼死をしたからって、あそこは基本的に住宅地でしょ、全部確認してるのよ。1人1人、いい?あなたとあなたの御両親の遺体を確認したのは弟さんなのよ。この書類に署名してあるでしょ。これ、弟さんよね。それに、もし何だったらDNA鑑定や復元って作業も出きるの。爆発自体以外には、事件性は確認されていないの。だから誰か他の人の死体が、あなたの代わりに何らかの理由で火事現場に遺棄されたなんて可能性も、まずないの。」

 って、ニコニコは、又、立て続けに喋ってるよ。イー加減にうんざり。もー見れば分かるよ。見ればさ。だって私だよ。いくら燃えて黒焦げになっちゃってたって自分くらい見分けられるって!って言うか自分の訳ないじゃん!ニコニコは、そうは言うけど世の中には訳の分からない事だっていっぱいあるんだ。どっかの変態が午後7時前に私の部屋に入って来て私を殴って気絶させて、新幹線に乗せてった、そんで私の代わりに誰かの死体を部屋に置いて、私はバカで、記憶が飛んじゃって夢でも見てて、名古屋で正気に戻った・・・く・苦しいか!

 とか考えてるうちに霊安室に入ったよ。あちこちに警官がいて、遺族らしきマスクにビニールの上っ張りに手袋の人たちがうろうろしてるよ。大惨事じゃん!全然知らなかった、ケータイもNETも捨ててたわけだし、TVも見なかった。でも知ったらどうだっての?さすらいの一人旅のせいじゃないよ。起こったものは起こったんだ、知ってたら戻るか。生き返るか。

 って、うぇ!見る前から気持ち悪くなってきた!まさか床にシーツかなんか被せて置いてあるんじゃないでしょーね!って、そうじゃなかったよ、霊安室って1階は事務室と待合所になってて、遺体は地下に安置してあるそうで、すぐにニコニコが手続きを済ませてくれて、階段を下って行くと、地下は幾つかの部屋に分かれてて202ってボードが貼ってある部屋に入ったよ、もちろんニコニコに案内されてね。

 ニコニコはリストを見ながら202の部屋の中の壁一面に幾つもの大きな洋服箪笥が埋め込まれたみたいにズラズラと並んでる銀色の冷たそうな引出しみたいなのを、いちいち確認して、その中から私の苗字が書かれた引出しみたいのに手をかけて思いっきり引っ張ったよ。おいおい、市役所の職員がこんなことしていいのかい!って思ったけど、どーもニコニコはけっこう偉い人みたいで、実はテロ対策員死体処理班だったりして、ってケッコウあたってたりするんだ、こういうの。





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さすらい少女2004夏 9

2021-08-05 06:31:03 | 夢洪水(散文・詩・等)
さすらい少女 2004

-9-


 私は別に身体がどうって事も無いので、って言うより身体はバリバリ元気で、あれからすぐに弟を引っ叩いて正気にさせて、病院の医師や公民館から来てる人に色々聞いてみると、お父さんと、お母さんは、やっぱり、火事で死んじゃったらしい。何故か、弟は無傷で、火事になった時、コンビニか、どっかに行っていて助かったらしい。でも、何だか変な気がするんで、って、だいたい何で私の名前が遺体のリストに堂々殿堂入りしてるのよ!で、弟に、

「何?これ、お姉ちゃんの名前が何で載ってるの?」

 って聞いても弟は何だかブルブル震えておかしくなっちゃってるんで、おそらく、あれだ、例のPTSDとかいうやつだな、で、埒があかないので、公民館の職員の一番親切そうな男の人に聞いてみた。

「あのー、これなんですけど、遺体ってどこにあるんですか?私、遺族なもので一応確認したいんです」って。

 ペコリって可愛くお辞儀なんかすると、プンって自分の臭いがして、あ、あ、やべぇ、かなり臭いぞ、汗だくばっかなのに、洗濯してないもんなぁ、なんて呑気なこと自分は考えてたんだけど、その男の人は、外見と違ってけっこう無愛想で、あーとか、うーとか、言って要領を得ないんだよ。あー助けてよ、キャプテン!

 それでも懸命に私は3日前の大火事で焼け死んだ家族の生き残りで、お父さんとお母さんの遺体は、どこにあるのか?いったい誰がどうやって処理をしたのか、それと、何故、私の名前が入ってるのか、などなど、しつこくしつこく尋ね続けてると、その男の人の後ろにいた、例の市役所の事務的にニコニコ笑う感じの悪い女の人が、割って入ってきたよ。

「あっ!あなた、この間は、私も動転していたものだから、ごめんね。私が代わりに説明するわ。あの夜はね、午後7時頃に、あなたの隣りのアパートから突然、爆発音がして出火して、あっという間に付近一帯に火が燃え広がったのよ。物凄い勢いだったから、おそらく何かの特殊な爆薬が原因じゃないかって警視庁のテロ特捜班までやってきて、今も念入りに調べてるみたいだけど、どうもテロ関連らしいの。アパートが自称アルカイダ系を名乗る日本人のアジトだったらしいの、インターネットに彼らのホームページがあって、そこに犯行声明みたいなのが書いてあって、調べたら、そのホームページが置いてあったプロバイダにそのアパートの住人が加入していて、間抜けな事に本人がそのアパートからNETに接続して・・・通信記録に・・・IDもパスワードも・・・判明して・・・爆発は事故だったみたいで・・・犯行声明によるとアメリカ大使館を・・・」

 って、この人、意外と良い人?へぇ~人は見掛けによらないってね。いやいや、なんだ、それ。ピンと来ないけど、何でウチの隣りのアパートにテロリストがいて、爆弾を爆発させるのよ!わけわかんないっーーーつぅの!げげげげぇだ!うが!うが!それで、巻き添えクラってウチが焼けてお父さんもお母さんも焼け死んじゃったってーーーーのぉ~!あー納得いかないよっ!焼け跡には警視庁のテロ特捜班どころか近所のオバさんくらいしかいなかったじゃんー!って弟がブルブル震えてるんで、ギュッとだきしめたよ。何て不憫なんだー!ああ、あったしも、どーしよー!ねー!どーしよーーーー!危機一髪、越えちゃってるよ!

 で?え?ちょちょいまって!この人、ペラペラまだ喋っているけど、その懸命さは、よしよし良い子だ、でも最初に午後7時って言ったよね!ね!ががががーーーん!!午後7時だってぇーーーー!?うっそー!うっそー!だってぇ、あったしぃ~、その時間なら、、まだ家にいたよー!待ったー!ちょっと待ったぁーー!そんな時間に、さすがに早寝のお父さんとお母さんだって起きてたし、私が1度、ケータイ持って弟がTVゲームやってて、お父さんとお母さんが寝たのを確認して抜け出したのが、確か・・・午後11時頃だよ。アホアホで、もう1度戻ってケータイ置いてきたのが、せいぜい11時15分か20分頃だよ。どーいうことだ?隣りが爆発したのが午後7時なら気づかないはずが無い!ましてや、そんな凶悪な火災が、あっという間に広がったんなら、絶対に、私も燃えてるね。・・・って、燃えてる・・・。う、嫌な気がして来たよ。ちょっと、しがみ付いて震えてる弟にニカッて笑顔でグッと顔を寄せて、聞いてみたよ。

「午後7時に、あなた、どこに行ってたの?ゲームしてたんじゃない?それと!その時、あたしは、いた?」

 ニカッの効力のせいか、弟は震える声で、けっこうハッキリと答えたよ。

「僕、コンビニにジュース買いに行ってたんだ。おねえちゃん、自分の部屋で何かゴソゴソやってたじゃん!」

 だってさ。

 そうよ、午後7時頃なら、私は自分の部屋で「プチ・イージーライダー作戦」の主に心の準備ってやつをしてたんだよ。お金の心配とね、で、緊張してバックにそれ以外入れるの忘れて飛び出たアホだったんだけど、そうか弟にはちゃんとアリバイがあるんだ、爆発時間に外出していればねぇ。あーあー、ついに私は齢、15で美人薄命の法則に従って死んじゃったのかー!思えば短い人生だったな、何一つ充実したことなんかありゃしなかったっていうか、これからだろ!って時に、死んでやんの、ドジ。どーりで家出てから名古屋まで夢の中にいたみたいで、記憶がハッキリしないわけだー!あーそうか、そうか、私は死んでたのか!

 んな!バカな!私はシックスセンスか!ほら見ろ、このお肉で満ち満ちた張り裂けんばかりの黄金のピッカピカの活力に溢れかえったこの身体を、ほら見ろ、この太もも、このお尻、この胸はちょっとちっちゃいけど、ピッチピチだぞ、ほら見ろ、この腕、真っ黒に日焼けしてエネルギー充填完了のチョー健康娘じゃん!ここにいる私は肉体派の幽霊かい!全身に自然の黄金エナジーを蓄えて歩くウルトラ生命力になって帰ってきた、この私が実は死んでた?きゃははは!そんなバナナーー!って思ったけど、今度は縦線が顔いっぱいに入ったよ。実に納得がいかないので、やっと一気に喋り終わってぜいぜい言ってる市役所の事務的にニコニコ笑う女の人に、グワッと向かい合って、じっと見つめて大声で言ったよ。

「じゃあ、遺体は、どこにあるんですか?私に見せてください!自分で確認してって言ってたじゃないですか!遺族にちゃんと確認させてください!」





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