元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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音楽室5号 第10章

2021-06-27 06:50:50 | 音楽室5号

 


第10章
(絵の中の風鈴燃える内臓


sleep

☆オハヨウ☆

 さて、一体全体どうしたことでしょう。

 キーホーはゴトゴト揺れる列車の座席で目を覚ましたのです。

 キーホーは、寝ぼけ眼を、こすりながら、何故、バスじゃなくて列車で目覚めたのかをクルクル考えておりますと、車内モニターにカラス女が映っているのに気づきました。


 「音楽室よ!」


 そう。キーホーは思い出しました。


   ゴットン。ゴットン。


 キーホーの隣の席では、ダンビラを持った税理士が茶色い行李の中に頬を突っ込んでゴソゴソやっていました。

 キーホーは税理士の肩先を、ちょんとつついてみました。

 すると税理士は、くるりと身体を逆回転させて汗まみれの汚い顔をキーホーの胸元に、くっつけて、埃の様な声を出したのです。

「おい。苦しいぞ。イ・イキが出来ない。」


 キーホーが税理士の顔を胸から離してやると、ハァハァ言って税理士は、説明し始めました。


zeirisizeirisi

「うようよの世界に果実は無かった。

 ただ、うようよだけがあり、がんとして在った。

 うようよを紙の様に破いて向こう側へ行く人は少ない。

 もっと、うようよしていく人達が多かったのだ。

 まして果実や、マサカリを買い求める事など、とてもできなかった。

zeirisi 回路の中に入ると、全体を知る事は難しくて、余程の暴発の閃きを必要とした。

 しかし、人々は憧れ、せめて外装だけでもと、格好つけるのだが、そこから矛盾が生じ、内部戦争を心に宿し、発狂した人もいた。

 しかし肥満型の現実人間達は利欲打算を構造化し、団体・組織を作り、うまくやり、それを再び、すっかり正しいのだと受け入れ、入団し、団体・組織内でヌクヌクしようと本気に思い込む奴もいた。

 しかし、皆、心の片隅では果実を欲して止まなかったのさ!」


 それから税理士は、ぷいと横を向いて針で布きれを突き刺す様にブツブツ言いました。


「辻の芸術家たちは悲しかった。

 無能者は、もっと悲しかった。

 何のせい?

 うようよだよ。

 チョッ。」



 列車は、ゆっくりと止まり、プラットフォームの駅舎の影で、車掌さんが両手を漏斗形に口にあてて、駅名を知らせていました。


 っ。

                     


 それでは、と税理士はキーホーに会釈すると、ドタバタと身の回りの物を掻き集めて、
』のプラットフォームに窓から飛び降りて行ってしまいました。


 


 

KIPPLE



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