日米のTPP交渉、米国内では
反対運動が高まりつつある!
AIIB不参加ワシントンでも
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東京新聞:週のはじめに考える
TPPに中国の脅威:社説・コラム
2015年4月26日
環太平洋連携協定(TPP)交渉が動きだしています。米国は中国の台頭に押されて妥結を急いでおり、日本が交渉を主導する好機にもなるでしょう。
二十六日からの安倍晋三首相の訪米で、TPPは主要議題となりそうです。オバマ大統領が日本に対し、米国がいかにTPP交渉取りまとめに真剣かを訴えるのは間違いないところでしょう。
五年にも及ぶTPP交渉を妥結させようとする米国内の機運は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立と無縁ではありません。
AIIBには米国の反対にかかわらず英国、ドイツ、オーストラリアといった米国の同盟国も創設メンバーに名を連ね、
ワシントンでも「外交上の失態」との批判が出ています。
だからこそ、TPPで失態から巻き返そうとする焦りは強まる。
「国際経済のルールを作るのは中国のような国ではなく、われわれだ」。オバマ大統領は一月の一般教書演説に続き、今月にも中国を意識した声明を出しています。
◆迫るAIIBの影
米国がAIIBに批判的なのは、これまでの中国のアフリカやアジアでの援助の基準が不透明で環境破壊を招き、工事の入札や調達も公正さに欠けると判断しているからです。中国が目指す国際秩序は「周辺国が中国に従属する十六世紀のモデルの再現」(ラッセル米国務次官補)とみています。
米国は歴史的に東アジアの市場開放に敏感です。「米国は第二次世界大戦前も『門戸開放』『機会均等』を訴え、中国で勢力拡大した日本と対立したのを忘れてはならない」と指摘する米アナリストもいます。
だからといって、米国主導のTPPは中国排除ではない。アジア太平洋地域で米国権益の参入を確保するのが狙いのため、世界最大の市場である中国に加入してもらわなくては意味がないからです。
「中国には『後からTPPに参加しても、ルール変更に応じる』と説明している」。米国務省担当者は、こう誘い水をかけていることを明かしています。
一方で、米国は日本のAIIB参加に「柔軟に対応せざるをえない」と、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所のグッドマン政治経済部長は話しています。
米国自体は議会がAIIBへの出資を認めないため参加しないが、それだけに米国には「日本を参加させてAIIB改革を促すほうが得策」との見方があります。
◆市場原理主義に変化
TPPといえば、「二十一世紀型の高次元の自由貿易体制」をうたい、米国は日米交渉でも「例外なき関税撤廃」に固執してきました。
コメなど農業分野で「聖域」を主張する日本と紛糾し続けた理由の一つです。
この米国のかたくなな姿勢に変化が表れています。日米首脳会談に向け、十九日夜から二十一日未明まで開かれた日米閣僚級協議で、フロマン米通商代表が「例外なき関税撤廃」の説教を封印したといい、日本側担当者は「今までになかったことだ」と驚きます。
コメをめぐっては、米国が主食用を日本に輸出できる特別枠を設ける案が検討されている。まだ両者の主張に開きは大きいが、関税撤廃は避けられる見通しです。
中国の台頭が結果的に、両国に現実的な歩み寄りを促すことになったとみてもいいでしょう。
ただ、日米のTPP交渉が本格化するにつれ、米国内では反対運動が高まりつつある。
特に、オバマ大統領当選に大きな役割を果たし、与党・民主党の支持基盤である労働界は「多国籍企業に有利な取り決めになる」と批判のトーンを強めています。
日本の「連合」に当たる米最大の労働組織、労働総同盟産別会議(AFL・CIO)は議員に対し、「次の選挙では資金を出さない」と揺さぶりをかけ、TPP推進のオバマ大統領に真っ向から対立しています。
◆真の豊かさに向けて
一九九四年発効の北米自由貿易協定(NAFTA)では、多く米国企業はメキシコに拠点を移し、「米国の労働者はメキシコに仕事を取られるのを恐れて、トイレ休憩さえ要求できなくなった」とAFL・CIO幹部は語ります。
TPPでも同じ懸念を抱くのは妥当でしょう。ヒト・モノ・カネが自由に動いたら、市民の権利や生活が脅かされるのでは元も子もない。米国内でもTPPが批判にさらされるようになったのは歓迎するべき動きです。日本国内で議論されてきた問題点が、国際的な広がりを持つことになります。
内外の圧力で米政府が聞く耳を持つようになった機会を、日本政府は生かすべきです。首相訪米ではそんな視点で、日本の存在感を確かめたいものです。
東京新聞 社説・コラム(TOKYO Web)より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015042602000140.html
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