KIMISTEVA@DEEP

新たな「現実」を構成するサブカルチャー研究者kimistevaのブログ

家族というタテマエのおかげでお幸せな方々へ

2008-01-23 11:47:56 | ニュースと政治
つくばみらい市で行われる予定だった「DV講演会」が、電話やメールでの多数の抗議、市民運動による抗議で中止になったそうですな。

わたしはこの講演会がどういう趣旨のものだったのか、誰が呼ばれてどういう話をする予定だったのかを知らない。
だから、新聞上には「「DV防止法」に反対する人々」としか書かれないような抗議者の人たちが、何にそこまで憤って、何をそこまで反対して、講演会の中止に至ったのかわからない。
少なくとも、「DV防止法」に反対する人たちにとっては、「家族」がものすごく大切なものなようだから、その前提に沿って話を進めるしかない。


新聞が報道する限り、「家族が壊れる」という理由で「DV防止法」に反対する人たちが、「DV防止法」に関する講演会の開催に抗議し、中止に至らしめた、とそういう話であるらしい。


・・・これ、本当に、この世界で起きた現実の話なのだろうか?
と、わたしは耳を疑ってしまった。

なにそれ。
よーするに、「家族」の存在を疑うことすらできないよーな、お幸せな方々が、暴力を受けて日々泣き暮らしているような人たちをなんとか保護しようとするような法律の制定に反対したあげく、そういう人たちがどうにか自分の現状を理解しようと集まろうとするその場までなくしてしまったということ?


・・・なにそれ?


いまどき、そんなにわかりやすい「悪者」って存在するの?信じられない。
まるで、「パンがなければブリオッシュを食べればいいのに」と言い捨てたマリー・アントワネット日本版。
そんなの、まだ現実にいたのか。
信じられん。


・・・でも実際そうなんだよね。
お幸せな人たちは、自分の「幸せ」を自明のものとして疑わないから、その前提そのものが崩れることをなんとしても阻止したがる。
自分の幸せが、どうしてどうやってどのようにできてるのかなんて知ろうともしない。わかったとたんに「幸せ」は「幸せ」じゃなくなっちゃうからね。
残るのは、ただ無味乾燥な権力構造だけ。
それを知ったときに、その人ははじめて自分が「権力者」であったことを知るんだ。
それはとてもつらいことだから、そういう人たちは権力構造を見ないようにする。
そういうことは歴史の中で何度も何度も繰り返されてきたことだ。

・・・まぁ、でもそれはいい。
わたしがわからないのは、なぜ、困っている人・傷ついている人を助けようという法律を、「自分の幸せを崩したくない」という理由でそこまで反対できるのか、だ。
そこまで、人間って利己的にしか動かないのか。
J.S.ミルの描いた人間像なんて嘘八百なのか。
「公共性」なんて概念は、もはや遠い世界の話なのか。
そんなに人間って他人に対する想像力が働かないのか。

わたしには、わからない。
ともかく、理解不可能だ。
いくら「家族というタテマエ」で幸せになっている人がいようと、大切なのは現在、困っている人を救うほうだろう。
っていうか、「DV防止法」くらいで崩れるような「家族」なんてはじめから崩壊してるんだよ。そんなことすら、わからないのか。


「家族」というタテマエのおかげでお幸せな方々へ。
もう一度、自分たちがマリー・アントワネットだということを思い起こしたほうがいい。
「暴力をふるう夫がイヤなら、暴力をふるわない人と結婚すればいいのに。」・・・って本気で言えるようなら、それはもうすでに現実認識狂ってるよ。


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2 コメント

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かんばんわ。 ()
2008-01-23 21:54:20
先日はどうもお世話さまでした。

>「DV防止法」に反対する人々
・・・???
そそそれは、奴隷禁止法に反対する白人、みたいなものでしかぁ?(((ノд<)))

あまりにも非現実的すぎてぴんとこない。
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まあ (kimisteva)
2008-01-24 11:28:43
DV体質(自覚有)なわたしにとって見えている「現実」は、わたしに固有なもので、DV体質でない人にはまったく見えない世界なのかもしれないしね、とも思います。

でもだからこそ、当事者以外の人たちがある問題に対して声を挙げるときには慎重になるべきだと思うんだけど・・・なかなかそうならない、ということを象徴的に示した事件であるように思います。

日本人が日本国内で行う「黒人差別撤廃運動」が結局は、不毛な言葉狩りで終わってしまったように、当時者以外の人間が見ている現実は、当事者の見ている現実とギャップがある、というのは常に心に置いておかなければならない事実であるようです。


実際、わたしには「家族」幻想にしがみつかなきゃ生きていけない人たちの気持ちはよくわからないしね。
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