気ままな旅

マイカーでの気ままな旅で、束縛された予定や時間にとらわれない、自由奔放な行動をとる旅の紹介です。

中国の風情が・・名庭園「豫園」江南4都市を巡る旅-⑧

2010-03-17 15:02:21 | ツアー旅行
  2010年1月25日(月)上海と江南4都市巡り5日間のツアー旅行も4日目に達し、午前中に上海市内の博物館などを見学、豫園商城内の中華レストランで昼食を済ました。その後、中国の明や清の時代の街並みを再現、中国らしい風情満点の豫園商城を見学する。
 豫園商城には、外国からの観光客も多く訪れ、大きな賑わいを見せている。
 豫園商城と隣接した場所にある中国の名園 「豫園=よえん」の入り口に案内されてやってきた。
 白壁で造られた高い塀の中央部分に入口があり、数人の人たちが入園券を購入する為に並んでいる。
 私達もガイドのカクサンが入園手続きをしてくれ、完了後に入場門をくぐり抜けて庭園に入って行く。
 豫園の「豫」は「愉」に通じ、「楽しい園」という意味があるらしく、豫園は外難と並ぶ上海2大観光スポットで、上海を訪れた人は必ず訪れるといわれている。
 豫園入口の正面には、大きな石が置かれ、その石には「海上名園」と彫られている。
 石の後ろには、堂々とした三穂堂(さんすいどう)が建ち、風格のある屋根には三国志で有名な武将の勇ましい像がある。
 三穂堂は1760年の創建で、その名は豊作を祈願して名づけられたといわれ、扉の装飾には稲や麦などの豊作物が描かれている。
         
           
「海上名園」と彫られた石庭と豊作を祈願して建てられた三穂堂、屋根の上には三国志で活躍した張飛と関羽の像がある。 

           
   三穂堂の屋根、三国志で活躍した関羽の像、日本ではあまり見かけない屋根の像

 豫園は、四川省長を務めていた上海出身の潘充端が、父親を喜ばす為に造園した庭園で、1559年に着工している。しかし、完成するまでに18年という永い歳月を要したことから、父親は完成した豫園を見ることなく亡くなっている。
 造園したのは、明代(1368年~1644年)の代表的な造園家、張南陽によるものであった。
 豫園は、江南庭園の特徴である建物、太湖石、水、樹木の四つの要素を巧みに調和さして、中国らしい見事な庭園を演出している。 

           
豫園のなかにはたくさんの獅子像があるが、仰山堂の脇にあるこの像は豫園唯一の鉄で出来た獅子である。 
 
           
 石と水が織り成す造形美と、建物の屋根が反り返る中国らしい風情を感じさしている仰山堂(ぎょうざんどう)

 この建物は1866年に建てられ、池に囲まれた建物からは、2000トンの武康黄石を積み上げた、高さ14mの築山(大假山=たいかざん)を一望できるように造られている。
 その堂々たる形状の造園美は、造園当時とほとんど変わらないといわれている。
 
           
 建物から池と庭園のシンボルである高さ14mの大假山(たいかざん)を中心に、池やお堂・石などを見事に配置された庭園

           
        築山の石や樹木の配置と建物と池とを見事に調和さした仰山堂の庭園

           
太湖石(石灰岩)の奇岩と樹木を巧みに配して造られた仰山堂の庭園、日本庭園とは造園の原点は同じかもしれないが、違ったイメージが湧いてくる。

 仰山堂から白壁の所々にある、細工を施した通し窓を見ながら進んでいくと、万花楼の入り口に達する。
 入って直ぐに東屋があり、その向こう側には白壁と太湖石や樹木を巧みに使った庭園が出来ている。
 東屋と庭園の間には池が造られ、池の奥にも白壁の塀が造られている。
 白壁は洞窟のイメージを引き出すかのようにアーチ型でくりぬいて造られ、奥の池にも通じている。 
 この場所は時々御見合いの席にも使われていたようで、初対面の男女、どちらかが、この東屋に座り、向こう側に造られている廊下の窓から、相手に知られずに観察されていたようで、お見合い独特の雰囲気が伝わってくる。
 どうやらこのようなお見合いの雰囲気は万国共通の様に感じられる。

           
お見合いなどに使われた魚楽榭という東屋と、太湖石の奇岩を使った庭園、じっとしているとお見合時のイメージが湧いてくる。

           
  万花楼内の通路から庭園と、御見合いの席に使われた奥にある魚楽榭(東屋)を見る。

           
 万花楼前の広場には大きな木が2本立ち、その前には庭園が造られている。周辺には中国の風情をかもし出す、幾数もの反りあがった屋根が見事な景観を現している。

           
この建物のもとは明代(1368年~1644年)の花神閣で、その後の清代(1644年~1912年)に再建された万花楼。
       
 この万花楼の建つ広場から周囲を眺めていると、中国建築様式の美しさが伝わってくる。
 反りかえった屋根や、雲が流れていくような建物の設計など、随所に中国建築らしさを感じさしてくれる。
 この広場には樹齢400年といわれる銀杏の木が立ち、建物の向かいには、池をはさんで太湖石の湖石假山の中国らしい美しい庭園が造られている。
 また、この広場に訪れた多くの観光客が、奥行きのある庭をバックに盛んにカメラのシャッターを切っている。 
 どうやらこの場所は観光客の絶好の撮影ポイントのようである。
 
          
 広場の前にある万花楼の庭園、石灰石の奇岩と、白壁で造られた通し窓の彫り物や樹木がうまく調和し美しい庭園に仕上がっている。
 花の季節には、違った光景が楽しめそうである。 

           
 開けた口の中には真珠を現す石が入り、白壁沿いに、今にも動き出しそうな表情を表している龍壁

 中国で龍は皇帝のみが使えるシンボルであったが、豫園の龍は本来5本である爪を4本にすることで「これは龍ではありません」と申し開きができたのだといわれている。
 それにしても、見事な龍で、塀の機能と龍の彫刻を一体的に表現した手法には感心させられる。

           
             多くの人達が訪れ賑わっている点春堂 

 1851年に発生した中国市場最大の内戦「太平天国の乱」で、100万人以上の人たちが犠牲となった。
 乱に呼応し、武装蜂起を企てた「上海小刀会」の指令本部が、この建物である点春堂であった。 
  
           
  点春堂の前と奥にある小さな建物が打唱台で、芸能の歌唱などが行われる舞台でもあった。

           
小刀会が壊滅し建物は破壊されたが、1868年に再建された点春堂。内部には内戦当時の武器や自鋳の通貨、発布文書などが展示されている。

 豫園は清朝(1644年~1911年)末期には、二つの歴史的な事件により荒廃していたようである。
 ひとつはアヘン戦争(1840年~1842年)で、戦争後のイギリス軍によって占領され破壊される。
 もうひとつは、表記している太平天国の乱(1851年~1864年)であった。

           
点春堂と向き合って建っている打唱台。屋根の造りや装飾など細部にまで、意匠を凝らした優美な造りに仕上がっている。

            
手前の建物は打唱台で奥の建物が快楼。 壷の形をした門、豫園にはこのような形の門が幾つか造られている。

           
美しい池のある庭園を眺めながら、池の上に出来た和熙堂(わくどう)の回廊を通り会景楼へ向かう人たち。

           
     豫園の中心にあり、三方を池や築山に囲まれたロケーションに建つ会景楼

 会景楼という名は豫園のなかで、特に景観が美しいという意味からきている。
 会景楼の側には、天空で玉を奪い合うような2体の龍が、真ん中に玉を置き、向かい合っている姿も、白壁沿いに造られているのも印象的であった。 

          
 会景楼から池を隔てて月見が出来るように造られている。正面にある建物が得月楼である。
 かつて十五夜になると、この部屋から池に映る月を愛でたとされ、建物の名もこれにちなんだといわれている。

           
 得月楼から円形の門を通して会景楼方向にある庭園の池やを建物を見る。池に架かった石橋付近には赤い鯉が集まり、独特の風情をかもし出している。

            
最初に豫園を造った「潘充端」の書斎であった「玉華堂」、書斎の席からは 玉玲瓏の庭園が眺められるように造られている。

           
        江南三大名石のひとつと称される太湖石の奇岩で出来た庭園の玉玲瓏
    
           
太湖石は穴が多く複雑な形ほど美しいとされ、玉玲瓏の奇岩には72個の穴が開いている。水を注げば流れ落ち、香をたけば全ての穴から煙が立ち上がるといわれている。中央の石が玉玲瓏、高さは約3.3m。

           
玉華堂前と同じ池に架かり、波打っている渡り廊下に反り上がった屋根や、屋根の上にある装飾品などが、より一層の重厚さを感じさしてくれる老君殿。 

           
         三国志の武将や鳥など複雑な飾り物が設置されている老君殿の屋根 
    
 上海の中心部にある名庭園の豫園、門前にある豫園商城や上海老街と共に、上海の一大観光スポットとしての大きな賑わいを見せている。
 大変なる豫園商城の活気ある街並みから、静かな雰囲気に包まれている豫園に入園していくと、その静かなたたずまいをかもし出している建築物や、庭園の美しさから戸惑うほどであった。
 ルンルン気分にさしてくれる豫園商城から、心の落ち着きとや、すらぎを感じさしてくれる豫園の名庭園。
 どちらも中国らしい様式を巧みに取り入れ、風情を味わせてくれる名所である。
 今回のツアー旅行で、無錫にある恵山寺の庭園や、蘇州の留園など、中国を代表する庭園を見学してきたが、どちらも甲乙をつけがたい名庭園であった。
 中国と日本の庭園の造園手法には、共通点も感じるが、違いも多いように感じる。
 共通点は禅の世界でいわれるように 「心」の字体を元にする造園技法である。
 日本庭園は、周りの自然や、大小の石や砂、樹木などの組み合わせに重きをおいているよう思えるが、中国では庭石そのものの美を強調したり、建築物や壁などの細工を、こまめに多く施しながら、庭園全体を造っているように思えてくる。
 いずれにしても、庭園は世界各国で造られ、その手法もヨーロッパとアジアでも全く違う様に、その国や地域に住む人たちの、生活様式や習慣、国の風土や気候、産物である石や樹木・水などの影響を受けながら造られている。
 私にとって、静寂に包まれた庭園を見ることは、落着きと平安を感じ、大きな楽しみで、今後も機会あるごとに見学していきたいと考えている。
       


最新の画像もっと見る

コメントを投稿