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■『運命の力』 プレトーク

2006年02月25日 | 私のこだわり・音楽編
新国立劇場 次回公演、 ヴェルディ 『運命の力』 のプレトークを聴いてきました。 芸術監督のノヴォラツスキー氏の司会で、 指揮の井上道義氏、 演出のエミリオ・サージ氏(マドリード・レアル歌劇場音楽監督)のかなり突っ込んだお話が聴けてとても有意義なひと時でした。

まず、ノヴォラツスキー氏から、今回は St.ペテルブルクの初演版でなく、 スカラ座で上演された改訂版を使うということ、 そしてオペラの舞台となったスペイン人の人生観を鑑み、 スペインの演出家に依頼するに至ったエピソードなどが語られました。

指揮者の井上氏は桐朋音大で斉藤秀雄先生の教えを受けた方ですから、 (本人も語っていましたが) 小澤さん同様、 学生時代に歌劇の指揮は全く勉強しなかったそうです。 24歳のときに受けた スカラ座のグィド・カンテルリ指揮者コンクールも、 オペラ指揮者を目指してではなく、ほんの軽い気持ちだったと話していましたが、 ここで見事に優勝し、 それがきっかけとなりイタリア・オペラに興味を持つようになったとのこと。 

今回は第三幕 第二場のアルバーロとドン・カルロの決闘場面を一部カットするとも語っていました。

演出のサージ氏は、 井上氏の言葉を借りるなら、時間の流れが鷹揚なスペイン人っぽい演出スタイルではなく、 構成も歌詞もすでに自分の頭のなかに入っていて、仕上がりが非常にスピーディーだそうです。

オリジナルでは18世紀中ごろのセビリアとなっているところを、 サージ版では登場人物のキャラクターはそのままにして、 舞台を1930年代中ごろのスペイン内乱時期に設定しなおしているとのこと。 

この時代にスペインでも色濃く残っていた 『家系の名誉』が『法の重視』に優ると考える人々が、運命に翻弄されていくところ、 また教会をいうものが実は人々を本当に救済し得るものか・・・が 重要なポイントとなっていると語っていました。

そのような経緯からノヴォラツスキー氏は、 今回のプロダクションを観るにあたって、 スペイン内戦をテーマとした ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』(もう一つ小説を挙げていましたが失念)を読んでおく(映画を見る?)と、 スムーズに物語りに入り込めるでしょうと話していらっしゃいました。

帰り際、 井上氏に 
「序曲の冒頭にでてきて、 その後もことあるごとに聴こえてくる ”三回鳴る主音” はどのように解釈されますか?」 とお尋ねしたら、
「三つ連続して鳴らすというのは、バッハの時代からあるよね、 収まりがよく感じられるんじゃないかな、 『父』と『子』と『聖霊』とって十字をきるように・・・」 と話してくださいました。 
ふむ、 なるほど・・・、 私は始めて序曲を聴いた時、不安定さを感じたのですが、欧米人は違うものを感じ取るのかしら・・・、 と思いました。

3月の『運命の力』 待ち遠しいです。