Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

DAオフィス投資法人(8976)

2009年09月02日 | 国内上場REIT
 当法人は東京都心の中規模オフィスへの重点投資を行うオフィス特化型ファンドで
運用資産は30 物件、取得価額2,650 億円。地域別には東京主要5 区90.9%、その他
首都圏7.3%、地方主要都市1.8%となっている。平均築年数は20.2 年。スポンサーは
独立系不動産業のダ・ビンチであったが、本年に入り大和証券グループ本社がスポン
サーとなった。物件は東京主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)に重点
投資をしているが中規模がほとんどであるが大規模物件として新宿マインズタワー(取
得価格ベース1338億円、ポートフォリオの50.5%)が最大である。ポートフォリオ
構成としては1物件で半分以上を占めており、2番目の物件はダヴィンチ銀座ビル(取
得価格ベース141億円、資産の5.3%)と偏ったポートフォリオになっている。財務内
容に関してはスポンサー交代前から保守的なLTVコントロールをしており、今回の大和
証券による増資によりLTVは22%と上場REITの中でもひときわレバレッジが低くなって
いる。



 (前期決算)

 決算は営業収益で47%減少、営業利益で61%、経常利益で68%の減少で着地。一番の
大きな原因は売却益が今回なかったこと。スポンサー交代に備えて無理な不動産売却を
抑えたのと、より根本的には鑑定評価が減少して含み益がなくなったのが大きい。その
前の期には69.7億円の売却益があったが、今回はゼロ。鑑定評価は2681億円に対して、
取得価格が2650億円とかろうじてプラスだが、評価益はなくなったと考えるのが妥当だ
ろう。鑑定評価が2桁減価したのはダヴィンチ南青山、ダヴィンチ御成門、新宿マインズ
タワー、サンライン第七ビル、べネックスS-3などのだが、とりわけポートフォリオの
5割を占める新宿マインズタワーの減価だけで140億円と大きい。


                表 鑑定評価額の変化(一部抜粋)



 少しだけプラスの面をとらえれば賃貸事業収益自体は小幅ながらも増収となっており、
稼働率も97.7%と高い水準を維持したことだ。加えて、財務面ではLTVが低いこともあり
特段の問題点がないことだろう。それでもこれだけLTVが低いのにもかかわらず融資関
連費用が7.12億と比較的高水準だ。営業利益が42.8億円に対して営業外費用が12.88億円
うち、融資関連費用が営業外費用の55%と高い。結構銀行にむしられているのではない
かという気もする。一番の理由はあおぞら、新生銀行の2行が融資残のむ53.7%を占めて
おり、この2行は貸してはくれるが、結構えぐい金利で貸している代表格だ。大和証券
へのスポンサー変更で三井住友あたりが参入してくれれば、支払い金利、融資関連費用
の低下は期待できるだろう。


                図表 融資関連費用と借入先


 (今期予想)

 今期、来期予想ともに減収・減益。稼働率のに低下、賃料下落などが主因だが、賃貸
収益が今期638百万、来期782百万ととかなり減少する予想をしている。トップラインの
減少はかなり保守的に見ているような気もするが、少なくとも中小オフィスビルに関し
ては予断を許さないだろう。分配金は前期9179円から6009円と34%減少し、来期にはさ
らに4154円と30%減少する予想をしている。来期の落ち込みはかなりきついが保守的に
見ているかどうかさっぱりわからない。保守的であって欲しいところだ。



 (成長戦略)

 スポンサーの交代により、財務戦略には自由度が増してきている。さすがに融資関連
費用は今期から大きく減少するが、やはり新たなパイプラインを検討する時期に来てい
ると思う。しかしながら、大和証券のパイプラインサポートというのは本当に期待して
よいのだろうか。なんか途中で売却してしまうのではないかという一抹の不安が残る。
少なくとも不動産開発事業をやっている商社などと違い、投資銀行にそれが本当にでき
るのかという疑問がある。ゴールドマンサックスのような不動産ビジネスを展開してい
るところなら話はわかるが、大和証券というのは......LTVは十分低いのだしいまが物件
購入のチャンスだと思うが、レバレッジを上げないというのはあまり合理性はないので
はないだろうか。まあ潰れないというのは分かったが、このままだと成長がないのは自
明だ。もしかしたら他のREITに売却するつもりでこのREITを買ったというのならまだ
理解しやすい。というか、ありえるかも。評価損抱えているのなら別に売らなくてもよ
いが、特に積極的に買う理由がない。

拍手する
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本ビルファンド投資法人(8951)

2009年09月01日 | 国内上場REIT
 正直言ってこの銘柄を分析する必要があるのだろうかという気持ち
はあるが、食わず嫌いというのもいけないので内容を分析してみるこ
とにする。REIT業界の東電といった方が良いだろうか。結論としては
安全だといういうのがすでに見えているのだがそはれでもあえて調べ
ることにする。

(ポートフォリオ構成)

 当法人は東京都心部のオフィスを中核としたREITで、6月末での状
況は東京都心部59.7%、東京周辺都市部26.4%、地方都市部13.9%となる
総資産7943億円と大型REITの一つである。主要な資産はNBF日比谷
ビル(旧大和生命ビル)、西新宿三井ビル、芝NBFタワー、NBFプラチナ
タワー、NBF南青山ビル、ゲートシティ大崎、虎ノ門琴平タワー、NBF
豊洲ガーデンフロント、中野坂上サンブライトンツイン、NBF豊洲
キャナルフロントどで上位10資産で全体のポートフォリオの45%を占
めている。


          図 主要ビル


 テナントはやはり三井系が多く、三井不動産(23%)、日本アイ・ビー
エム(3.9%)、グラクソ・スミスクライン(2.8%)、博報堂DY(2.6%)、アク
サ生命(2.5%)、富士ゼロックス(2.2%)、新日本製鉄(2.1%)、トランス
コスモス(2.0%)、日経BP社(1.8%)、整理回収機構(1.2%)などで上位10社
で44.2%(面積ベース)を占めている。ポートフォリオの平均築年数は14.8
年、LTVは47%、平均調達コストは1.58年、長期有利子負債の平均残存年
数は4.56年となっている。S&P、ムーディーズ、R&Iから格付けを取得し
ており、それぞれA+、A1、AAと高い格付けを取得している。


(前期決算)

 営業収益は前期比1.5%減、営業利益2%減、分配金2.1%減と減収減益と
なったが、当初予想との比較では1275円上回った。現在の市況環境は
空室率、募集賃料ともに2004年の水準まで戻っており、06年、07年の市
況とは様変わりとなっている。稼働率は95.4%と前期と比較して1.4%低下
した。稼働率の低下はピークの12期の99%から4期連続で低下しており、
過去のボトム(4期で92.3%)よりは状況はましだが、マーケットの悪化に伴い
稼働率の低下は続く可能性が高い。営業収益面では稼働率の低下を除け
ば特段の特殊要因はない。新規物件の取得に伴い公租公課が3億円増加し
たが、そのまま営業利益の減少に繋がっている。

           図 稼働率


 賃料水準は前期と比較すれば1割近いダウンになっていると説明してお
り、この影響が来期からでてくる見込みだ。新規取得では2物件の取得を
実施。NBF御茶ノ水ビル、東上野4丁目ビル(いずれも新築)を行っている
ことからポートフォリオの築年数の上昇を抑える効果がある。他のREIT
と異なるのはこの状況でも外部成長が可能である点だ。鑑定評価額は
8700億円と前期と比較して704億円減少した。帳簿価格との差で見ると
1304億円の含み益があり、ポートフォリオの内容に不安はない。


(今期決算)

 来期の決算は稼働率の低下と前期の賃料改定の影響もあり、トップライ
ンは8%程度のダウンになるとしている。稼働率前提は今期94%、来期93.4%
と2期連続低下を予想している。また解約床の埋め戻しの為のコスト(仲介
手数料など)の増加を見込んであり、今期18500円、来期16100円と2期連続
減配を想定している。



(成長戦略)

 REIT各社がファイナンス問題に直面している中、ほとんど影響がなく、
また新規のコミットメントラインの設定を認めてもらえるなどさすがに市
場のベンチマーク銘柄であるという印象を持った。しかし、それだけに市
場の評価も高く常にプレミアムがついてる。市場が急落したときには投資
の機会はあると思うが、それこそあまり面白みのない銘柄であることも事
実。保有資産のクオリティから考えると市況の回復で稼働率の回復が真っ
先にやってくるだろうとも思える。順調な外部成長が可能で中長期での保
有対象にはなりうるだろうが、どうも食指が動かない。因みに現在投資し
ていないが、やはりベンチマーク銘柄は市況急落、暴落の時に仕込むしか
ないのだろう。

拍手する
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする