Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

ジョイント・リート投資法人(8973)

2009年09月03日 | 国内上場REIT


ジョイント・リートの株価のパフォーマンスが堅調だ。スポンサーのジョイントコーポ
レーションがオリックスのサポートによる資本注入があったのにも関わらず、破綻したのは
驚きだったが、その後の株価の上昇はスポンサー破綻リートとは思えないほどの好調ぶり
である。無論、市場の関心は新スポンサーがつくことを予想して先回り買いしているわけ
だが、逆にいえばスポンサーが決定すると株価が落ちるのではないかとも思える。異常と
も思えるこのパフォーマンスが本物であるのか少し分析してみる。


 当法人は東京圏の賃貸住宅及び商業施設を主たる投資対象とする複合型ファンド
で、運用資産53 物件、総資産1047億円、純資産492億円(3月末)。ポートフォリオ
の地域別投資比率は東京都心・城南地区37.6%、東京・周辺都市部26.4%、その他
36.0%、用途別には住居70.9%、商業施設29.1%となっている。平均築年数は8.0年
の中小型REITである。スポンサーは破綻したジョイント・コーポレーションで現在
は実質的にメインスポンサーが不在の状況。

 (収益動向)

 前期実績の分配金は5485円とその前の期と比較して半減した。資産取得中止に伴う
違約金565百万が発生したことのがその理由。今期は特別損失が発生しないと予想さ
れているので分配金は倍増する見込み。ポートフォリオ子の収益力を見ると年間の
賃貸NOIは53.4億円。FFO(Funds From Operation)23.6億円。期末稼働率は97.3%とな
っており、これらの数字から見るとまあ普通。レジデンシャルとしてはまあ可もなく
不可もなく。一つだけプラスにみることができるのはレジデンシャルの稼働率が少し
上向いているところぐらいか。

 (バランスシート)


 LTVは49.3%と微妙に高い。スポンサーが苦境でしかも、金融危機の影響で物件取得
を中止したことによる違約金の支払いがやはりきいている。さらに問題になりそうな
のが投資法人債を2本出していること。発行残高は100億円で第1回50億円が2010年3月
12日償還、第2回が50億円で2012年3月13日償還となっている。金融機関との極度ロー
ン契約が昨年12月に終了し資金調達面での苦境は続いている。しかしながら、金融機
関からの借り入れはバランスもよく、長期固定比率が比較的高い。またみずほ、三井
住友、住友信託、あおぞら銀行など幅広く借りており、日本政策投資銀行も融資団に
参加している。オリックスの途中からの支援が効いたのかもしれない。

 
 (成長戦略)

 戦略というよりはまずはスポンサーがどこになるのかというのが重要だ。それもあ
まりゆっくりはできない。投資法人債の償還が来年の3月にあることから今年中には
スポンサー選定をしなくてはならない。投資法人債に関してはいくつかのシナリオを
もっているようで、①借入金への切替、②物上担保付投資法人債の発行、③物件売却
④第三者割当増資などのいくつかのシナリオがある。法人側が指摘するシナリオを見
て見ると①の借入金の借換えは無理だろう。②の担保社債は可能性としてはあるが、
やさしいとは思えない。REIT市場が回復したといっても投資家サイドの需要が極めて
弱い。③と④が最も可能性があり、新スポンサーが発表されれば第三者割当増資を行
う確率が高い。その場合の稀釈化がどの程度になるかという点だが、投資法人債の償
還を考えると2万株以上、最低でも2割。通常に考えると3割のダイリューションが発生
すると考えるのが妥当だろう。少し気になる点といえば投資主構成だ。外人の比率が
高く、これが障害になるとは思えないが、タワー投資顧問などの機関投資家も大量に
保有している。大規模な第三者割当増資はやりづらいかもしれない。これは既存の投
資家にとってプラスかもしれないが、新規にスポンサーになろうとするものにはあま
り良い形ではない。



 (投資判断)

 新スポンサーが誰になるのかという点とその場合、可能性として高い第三者割当増
資による稀釈化がどの程度になるのかという点が重要だ。NAVは47万円あり、仮に3割
の稀釈化が発生したとしても32万9千円。現在の株価で仮に合併比率が決められるとし
て、負の暖簾代はそれほどの巨額にはならない。直近の株価の上昇がそれを阻害して
しまった。もともと大型のREITでもないので負の暖簾代目当ての合併対象にはそれほ
どの魅力はないだろう。あるとすればレジデンシャル系REITで資産成長を目指してい
るというごく普通の理由になるだろう。当法人のレジデンシャルだけを見ると平均築
年数が3.1年と実は結構新しい。それが高めの稼働率を維持する原動力になっている事
は否定できない。投資判断としては微妙なとろこだ。稀釈化後の分配金利回りは恐ら
く6%を下回るだろう。仮に合併相手のレジデンシャル系REITがそのぐらいの水準であ
れば、まあ良くも悪くもない。つまり普通。そのくらいまで株価がすでに上昇してい
るという事だ。

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