売却によって目先の危機を回避したわけだが、問題となるのはやはり9月末に到来する
新生信託の分の返済だ。追加売却により資金を確保する必要があるわけだが、売却ができ
るかどうかも検討する必要がある。今回3月末までの一連の売却による損失の処理は負の
のれん代を利用する予定であるが、今度の9月末返済に必要な168億円を確保できる資産
売却を推測してみよう。仮に評価損益が今回売却と同じ条件でなおかつ売却価格が同じで
あるとの前提を置くと、必要な資産売却は帳簿価格ベースで243億円となる。その場合
の推定損失額は75億円になる。
理論的には損失を負ののれん代を超えて損失を出して処理しても構わない訳だが、REIT
投資家の信頼を裏切ることになり、今後の資金調達に支障をきたすことにもなるからなるべく
ならこの選択肢は選びたくないのが実情だろう。まずは影響がない範囲でそれができるかどう
かを検証してみよう。そのためにはまず負ののれん代がいくらになるのかを計算しなくては
ならない。負ののれん代の計算は下の図のようになる。
この図に従ってのれん代を計算できるはずだが、何故か負ののれん代は公表されていない。
理由は不明だが、投資判断には必要なので計算してみることにする。その前に今回の合併ストラ
クチャーであるが、存続法人としは旧東京グロース投資法人がなり、LCPは消滅法人となった。
一方で存続法人となったインヴィンシブル投資法人はTGR投資主に5口、LCP投資主に4口を割り
当てる。端株処理のためにTGRの投資口分割を行ってそれを回避することになる。従って現在の
株価は旧投資口価格で見る場合には株価を5倍にする必要がある。
のれん代の計算はLCPの直近決算である2009年8月末現在の数字と、その後プレスリリース
された分については修正して用いた。但し、実際の合併は2010年2月1日であることら数字が
変化している可能性が高い。今年の1月に入り、借入金の元本一部返済を実施していていることも
あり、のれん代計算に関しては参考程度という認識をする必要があるだろう。計算式は下図のとおり
であるが、受入れ資産に関しては4月にプレスリリースがでており、旧LCPの鑑定評価が行われて
おり、それを時価として採用した。資産は時価評価が原則であるから鑑定評価ベースの金額に現預金・
信託預金を加える。合併費用は推測ができないのでとりあえず10億円とおいた。それほどかかる
とは思えないが、少なすぎるよりは保守的に計算できるだろう。引受け負債も短信ベースからの引用
で金融機関からの借入れ、敷金、預かり保証金、信託敷金・保証金、未払い税金、前受け金を含む、
負債も原則時価評価だが、土地・建物と異なり減価することはないので貸借対照表計上額を採用。
合併対価に関しては継承法人であるインヴィンシブルが旧LCP投資主に交付した新株発行株数に
合併効力日のインヴィンシブルの終値の株価を掛け合わせて算出した。
計算してみると意外に多いことがわかる。例えば日本リテールファンドとラサールジャパン
の合併ではディスクロされた負ののれん代は86億円だった。ただ、JPRと当法人ののれん代
の計算の違いはJPRが合併直前の12月1日に鑑定評価の再評価を行ったことで時価評価が低下
したのが原因だと考えられる。当法人に関しても2月1日ベースでの鑑定評価の再評価がなされ
ているが、鑑定評価機関が異なることから時価を「どの程度の時価」であるかと評価するのは難
しい。別段、当法人の鑑定評価が甘いなどというつもりは全くないが、「時価」に関しては必
ずしも同じ評価基準で測定されていないことに留意する必要があるだろう。またくどいようだが、
なるべく正確に計算するように努めたが、正確性を保障できないのであくまでも参考程度にして
ほしい。
これから読み取れるのは今回実施した売却損は負ののれん代計上により十分吸収できることが
わかる。一方で、残りの負ののれん代は22億円程度。合併費用がほとんどないと考えても
25億円弱と予想されるから50-60億円の特別利益の不足が考えられる。因みに負ののれん代
の会計基準に関しては変更がなされており、今年度に全額計上されるのはほぼ間違いがないだろう。
(......と思う) 会計基準の変更に関しては以下の通り。
当法人が取りうるオプションはいくつかある。
(a) 資産売却を行い、168億円を調達する。特別利益を計上するも赤字決算。無配転落
(b) 残りの負ののれん代に収まるような評価損の物件を選び売却。予想通り着地
(c) 残りの負ののれん代に収まる部分だけ売却、168億円の一部を返済。その場合、
売却実績と同じ
条件とすれば50億円程度の売却額(帳簿価格ベースで70億円、売却損20億円)。
残りの118億円程度を金融機関と交渉してロールオーバーもしくは新規融資を受ける。
個人的な見解では(c)のシナリオが望ましいし、実現可能性はあるんじゃないかとも思う。
(a)はしてもいいが市場の受けはあまりよくないだろう。(b)はポートフォリオを悪化させる
だけで誰にも得はないし、なるべくならやらないほうがいい。というか、現状のポートフォリオ
では不可能だ。実はもうひとつ「ウルトラC」技が存在する。やり方によっても天国にも地獄にも
なる方法だ。それはこんな方法
(d) 株主割当増資を行う。例えば今の時価の0.8を払込価格とし、1株につき1株を割り
当てる。仮に現在の株価を基準にすれば市場から75億円を調達できる。そうする
と93億円分だけ残るのでポートフォリオへの影響を最小化できる。また、この
方法が取れるのは現在当法人の1株当たり純資産が株価を大きく上回っている
からできる方法だ。
海外では結構行われている方法でそれで危機を脱した海外REITも多かった。しかしながら、
この方法が問題なのは発表後、株価が急落して行使価格を下回り大量の失権株が発生すると
地獄を見ることになる。市場がホットな状況で株価が急落しない環境が必要だ。
だいぶ長くなったが最後に借入金返済後の当法人を評価してみる。
(続く)
新生信託の分の返済だ。追加売却により資金を確保する必要があるわけだが、売却ができ
るかどうかも検討する必要がある。今回3月末までの一連の売却による損失の処理は負の
のれん代を利用する予定であるが、今度の9月末返済に必要な168億円を確保できる資産
売却を推測してみよう。仮に評価損益が今回売却と同じ条件でなおかつ売却価格が同じで
あるとの前提を置くと、必要な資産売却は帳簿価格ベースで243億円となる。その場合
の推定損失額は75億円になる。
理論的には損失を負ののれん代を超えて損失を出して処理しても構わない訳だが、REIT
投資家の信頼を裏切ることになり、今後の資金調達に支障をきたすことにもなるからなるべく
ならこの選択肢は選びたくないのが実情だろう。まずは影響がない範囲でそれができるかどう
かを検証してみよう。そのためにはまず負ののれん代がいくらになるのかを計算しなくては
ならない。負ののれん代の計算は下の図のようになる。
この図に従ってのれん代を計算できるはずだが、何故か負ののれん代は公表されていない。
理由は不明だが、投資判断には必要なので計算してみることにする。その前に今回の合併ストラ
クチャーであるが、存続法人としは旧東京グロース投資法人がなり、LCPは消滅法人となった。
一方で存続法人となったインヴィンシブル投資法人はTGR投資主に5口、LCP投資主に4口を割り
当てる。端株処理のためにTGRの投資口分割を行ってそれを回避することになる。従って現在の
株価は旧投資口価格で見る場合には株価を5倍にする必要がある。
のれん代の計算はLCPの直近決算である2009年8月末現在の数字と、その後プレスリリース
された分については修正して用いた。但し、実際の合併は2010年2月1日であることら数字が
変化している可能性が高い。今年の1月に入り、借入金の元本一部返済を実施していていることも
あり、のれん代計算に関しては参考程度という認識をする必要があるだろう。計算式は下図のとおり
であるが、受入れ資産に関しては4月にプレスリリースがでており、旧LCPの鑑定評価が行われて
おり、それを時価として採用した。資産は時価評価が原則であるから鑑定評価ベースの金額に現預金・
信託預金を加える。合併費用は推測ができないのでとりあえず10億円とおいた。それほどかかる
とは思えないが、少なすぎるよりは保守的に計算できるだろう。引受け負債も短信ベースからの引用
で金融機関からの借入れ、敷金、預かり保証金、信託敷金・保証金、未払い税金、前受け金を含む、
負債も原則時価評価だが、土地・建物と異なり減価することはないので貸借対照表計上額を採用。
合併対価に関しては継承法人であるインヴィンシブルが旧LCP投資主に交付した新株発行株数に
合併効力日のインヴィンシブルの終値の株価を掛け合わせて算出した。
計算してみると意外に多いことがわかる。例えば日本リテールファンドとラサールジャパン
の合併ではディスクロされた負ののれん代は86億円だった。ただ、JPRと当法人ののれん代
の計算の違いはJPRが合併直前の12月1日に鑑定評価の再評価を行ったことで時価評価が低下
したのが原因だと考えられる。当法人に関しても2月1日ベースでの鑑定評価の再評価がなされ
ているが、鑑定評価機関が異なることから時価を「どの程度の時価」であるかと評価するのは難
しい。別段、当法人の鑑定評価が甘いなどというつもりは全くないが、「時価」に関しては必
ずしも同じ評価基準で測定されていないことに留意する必要があるだろう。またくどいようだが、
なるべく正確に計算するように努めたが、正確性を保障できないのであくまでも参考程度にして
ほしい。
これから読み取れるのは今回実施した売却損は負ののれん代計上により十分吸収できることが
わかる。一方で、残りの負ののれん代は22億円程度。合併費用がほとんどないと考えても
25億円弱と予想されるから50-60億円の特別利益の不足が考えられる。因みに負ののれん代
の会計基準に関しては変更がなされており、今年度に全額計上されるのはほぼ間違いがないだろう。
(......と思う) 会計基準の変更に関しては以下の通り。
当法人が取りうるオプションはいくつかある。
(a) 資産売却を行い、168億円を調達する。特別利益を計上するも赤字決算。無配転落
(b) 残りの負ののれん代に収まるような評価損の物件を選び売却。予想通り着地
(c) 残りの負ののれん代に収まる部分だけ売却、168億円の一部を返済。その場合、
売却実績と同じ
条件とすれば50億円程度の売却額(帳簿価格ベースで70億円、売却損20億円)。
残りの118億円程度を金融機関と交渉してロールオーバーもしくは新規融資を受ける。
個人的な見解では(c)のシナリオが望ましいし、実現可能性はあるんじゃないかとも思う。
(a)はしてもいいが市場の受けはあまりよくないだろう。(b)はポートフォリオを悪化させる
だけで誰にも得はないし、なるべくならやらないほうがいい。というか、現状のポートフォリオ
では不可能だ。実はもうひとつ「ウルトラC」技が存在する。やり方によっても天国にも地獄にも
なる方法だ。それはこんな方法
(d) 株主割当増資を行う。例えば今の時価の0.8を払込価格とし、1株につき1株を割り
当てる。仮に現在の株価を基準にすれば市場から75億円を調達できる。そうする
と93億円分だけ残るのでポートフォリオへの影響を最小化できる。また、この
方法が取れるのは現在当法人の1株当たり純資産が株価を大きく上回っている
からできる方法だ。
海外では結構行われている方法でそれで危機を脱した海外REITも多かった。しかしながら、
この方法が問題なのは発表後、株価が急落して行使価格を下回り大量の失権株が発生すると
地獄を見ることになる。市場がホットな状況で株価が急落しない環境が必要だ。
だいぶ長くなったが最後に借入金返済後の当法人を評価してみる。
(続く)