REITの合併が相次いで株価の動向だけで判断するとやはり存続会社となるREITの
スポンサーの信用力で株価が動いている状況はあまり変化がないようだ。当法人の株価
動向を見てみると11月に合併がアナウンスされてからの株価は期待を織り込むとすぐ
に反落するという形になっており、現在の株価は低迷している。
株価が低迷している理由はいくつかあると考えられるが、①強力なスポンサー体制
に変更された訳ではないので信用力に不安が残る。②決算期が12ヶ月決算に変更(一時的
であるが)上、配当予想が300円と大幅に減額され市場平均利回りはおろか国債利回り
も下回ったこと、③不動産売却により収益低下圧力が予想されること。などが主たるもの
であると考えられる。合併法人の分析はきわめてややこしくアナリストレポートもほとん
どでていない。
まして業績予想は皆無だ。世の中の野アナリストのレベルがこれでわかると思うが、ここは
アクティブ投資家としてチャレンジしてみよう。最終的に株価判断までつなげていきたいが、
まずは今回、グロース投資法人とLCP投資法人との合併によって何がどう変わったのかを
分析を試みる。なお、分析に当たっては正確性を心がけたが保証はできないので参考程度に
読んでいただくことを望む。
今期予想を見ると売上、営業利益、経常利益は増加するが、当期利益が減益になる予想
となっており、決算期変更により、365日決算になった。分配金は1口当たり300円と
分割による影響もあるが大きく減少する。その大きな理由は今期中に負ののれん代を活用し
てポートフォリオを整理、財務状況の改善を行うためである。合併と1年決算により売上げ
は54億円と大きく上昇する見込みだが、経常利益は合併前の半期決算よりも少なくなる。
当法人は2010年に入り、2月12日(13件)、3月1日(3件)、3月23日(3件)、3月26日(25件)、
3月30日(2件)の合計で46件の売却を発表。合計の売却簿価・譲渡価格に関しては以下の
総括表を参照。
まずはこの売却行為の評価だが、当然のことながら借入金の返済が主たる目的である
ことは明らかで、その意味においては高く評価することは難しい。REITの成長は物件取得
によりなされるものであるから、売却行為は入れ替えでなく、純減ということならば成長
というよりも縮小であり、投資家の目が厳しくなることは当然であろう。では売却の中身
についてもう少し見てみると売却総額は273億円、一方で簿価が397億円であること
から、売却損が123億円でる計算となる。対象物件の賃料が合計で24億41百万円
(一部推定)、売却利回りは8.9%となる。ここには細かい内容を載せてはいないが物件
ごとの売却利回りを計算してみた。興味深いのはまず時期的に先に契約した物件価格は渋く、
後に契約した物件は比較的条件が良くなっている。これは経済の回復過程をなぞる形で後
になればなるほど条件が好転していたことを指す。また地方と都心物件ではやはり都心物件
の条件は良く、加えて後になるほど市場価格と考えられる水準で売却が成立している。
一番条件が悪かった物件はPEIT福島陣場町第一で売却利回りが18.1%、一番良かったのが、
レキシントン・スクウェア白金高輪で5.2%で売却が成立している。計算したリストは長いの
で売却水準別で見た分布表が以下の通りである。
簿価ベースだが、10%以上で売却したものが34%、平均より低い8%以下が46%、8-10%が
19%となっている。売却時期別に見ても後半に売却が集中しており、市況の回復に伴い
一気に売却したことがわかる。これによる手取り資金は273億円となるわけだが、どこから
の借入金を返済するのかというのは、実はディスクロ資料から推測することが可能である。
上記の表は単純合計ベースでの1年以内返済予定の借入金であるが、日本GEからの借入れとは別に
新生信託銀行、農中信託銀行からの借入れ金利率が低いことが読み取れる。これは実は証券化によって
投資家に売却された分で実質、社債と同じ性格のものだ。銀行からの極度ローンと異なり、証券化商品
は相対による借入れ条件の変更や、借換えは簡単にするとこはできない。特に金融情勢が厳しいときに
は償還できないと企業が倒産の憂き目にあう可能性もあり、この部分の借入れはなんとしてでも返済(償還)
しなくてはならない性格のものである。農中信託分は旧リーマンブラザーズが証券化して投資家に売却
したもので、新生信託の分に関してはUBSセキュリティーズとの間に結ばれた金銭貸借契約に基づく貸付
債権が新生信託に信託譲渡された形になっている。
このうち、農中信託分に関しては4月1日に期限前弁済により128億円59百万を完済している。新生
信託分256億円に関しては88億円を一部返済した上で、返済期限を延長して168億円の残高となって
いる。期限は9月末に変更されたが、借入れ利率は3.23385%と200bp上昇した。当法人にとって今後
の課題はこの168億円の早期の返済となろう。ところで売却による手取り資金273億円だが、実は
既に銀行への返済に回されている。
資金の流れを追ってみて気がついたことは、農中信託、新生信託への返済を最も優先しなくては
いけなったはずだが、結果的に新生信託の残高が残り、通常の銀行融資の一部返済に回された
ことが銀行団がREITに対するビジネスモデルの不理解がよくわかる。本来であれば証券化部分
の返済を優先させてREITのキャッシュフローを安定させれば残高を維持することで銀行は利益
を得るはずだが、既存部分の期限前返済を優先するあたり、いかに銀行がREITのキャッシュ
フローでなくスポンサーのクレジットしかみていないという証拠だと考えられる。借り渋りと
いわれる状況でこのような合理的ではない行動にでる日本の金融機関はレベルがやはり低い。
(続く)
スポンサーの信用力で株価が動いている状況はあまり変化がないようだ。当法人の株価
動向を見てみると11月に合併がアナウンスされてからの株価は期待を織り込むとすぐ
に反落するという形になっており、現在の株価は低迷している。
株価が低迷している理由はいくつかあると考えられるが、①強力なスポンサー体制
に変更された訳ではないので信用力に不安が残る。②決算期が12ヶ月決算に変更(一時的
であるが)上、配当予想が300円と大幅に減額され市場平均利回りはおろか国債利回り
も下回ったこと、③不動産売却により収益低下圧力が予想されること。などが主たるもの
であると考えられる。合併法人の分析はきわめてややこしくアナリストレポートもほとん
どでていない。
まして業績予想は皆無だ。世の中の野アナリストのレベルがこれでわかると思うが、ここは
アクティブ投資家としてチャレンジしてみよう。最終的に株価判断までつなげていきたいが、
まずは今回、グロース投資法人とLCP投資法人との合併によって何がどう変わったのかを
分析を試みる。なお、分析に当たっては正確性を心がけたが保証はできないので参考程度に
読んでいただくことを望む。
今期予想を見ると売上、営業利益、経常利益は増加するが、当期利益が減益になる予想
となっており、決算期変更により、365日決算になった。分配金は1口当たり300円と
分割による影響もあるが大きく減少する。その大きな理由は今期中に負ののれん代を活用し
てポートフォリオを整理、財務状況の改善を行うためである。合併と1年決算により売上げ
は54億円と大きく上昇する見込みだが、経常利益は合併前の半期決算よりも少なくなる。
当法人は2010年に入り、2月12日(13件)、3月1日(3件)、3月23日(3件)、3月26日(25件)、
3月30日(2件)の合計で46件の売却を発表。合計の売却簿価・譲渡価格に関しては以下の
総括表を参照。
まずはこの売却行為の評価だが、当然のことながら借入金の返済が主たる目的である
ことは明らかで、その意味においては高く評価することは難しい。REITの成長は物件取得
によりなされるものであるから、売却行為は入れ替えでなく、純減ということならば成長
というよりも縮小であり、投資家の目が厳しくなることは当然であろう。では売却の中身
についてもう少し見てみると売却総額は273億円、一方で簿価が397億円であること
から、売却損が123億円でる計算となる。対象物件の賃料が合計で24億41百万円
(一部推定)、売却利回りは8.9%となる。ここには細かい内容を載せてはいないが物件
ごとの売却利回りを計算してみた。興味深いのはまず時期的に先に契約した物件価格は渋く、
後に契約した物件は比較的条件が良くなっている。これは経済の回復過程をなぞる形で後
になればなるほど条件が好転していたことを指す。また地方と都心物件ではやはり都心物件
の条件は良く、加えて後になるほど市場価格と考えられる水準で売却が成立している。
一番条件が悪かった物件はPEIT福島陣場町第一で売却利回りが18.1%、一番良かったのが、
レキシントン・スクウェア白金高輪で5.2%で売却が成立している。計算したリストは長いの
で売却水準別で見た分布表が以下の通りである。
簿価ベースだが、10%以上で売却したものが34%、平均より低い8%以下が46%、8-10%が
19%となっている。売却時期別に見ても後半に売却が集中しており、市況の回復に伴い
一気に売却したことがわかる。これによる手取り資金は273億円となるわけだが、どこから
の借入金を返済するのかというのは、実はディスクロ資料から推測することが可能である。
上記の表は単純合計ベースでの1年以内返済予定の借入金であるが、日本GEからの借入れとは別に
新生信託銀行、農中信託銀行からの借入れ金利率が低いことが読み取れる。これは実は証券化によって
投資家に売却された分で実質、社債と同じ性格のものだ。銀行からの極度ローンと異なり、証券化商品
は相対による借入れ条件の変更や、借換えは簡単にするとこはできない。特に金融情勢が厳しいときに
は償還できないと企業が倒産の憂き目にあう可能性もあり、この部分の借入れはなんとしてでも返済(償還)
しなくてはならない性格のものである。農中信託分は旧リーマンブラザーズが証券化して投資家に売却
したもので、新生信託の分に関してはUBSセキュリティーズとの間に結ばれた金銭貸借契約に基づく貸付
債権が新生信託に信託譲渡された形になっている。
このうち、農中信託分に関しては4月1日に期限前弁済により128億円59百万を完済している。新生
信託分256億円に関しては88億円を一部返済した上で、返済期限を延長して168億円の残高となって
いる。期限は9月末に変更されたが、借入れ利率は3.23385%と200bp上昇した。当法人にとって今後
の課題はこの168億円の早期の返済となろう。ところで売却による手取り資金273億円だが、実は
既に銀行への返済に回されている。
資金の流れを追ってみて気がついたことは、農中信託、新生信託への返済を最も優先しなくては
いけなったはずだが、結果的に新生信託の残高が残り、通常の銀行融資の一部返済に回された
ことが銀行団がREITに対するビジネスモデルの不理解がよくわかる。本来であれば証券化部分
の返済を優先させてREITのキャッシュフローを安定させれば残高を維持することで銀行は利益
を得るはずだが、既存部分の期限前返済を優先するあたり、いかに銀行がREITのキャッシュ
フローでなくスポンサーのクレジットしかみていないという証拠だと考えられる。借り渋りと
いわれる状況でこのような合理的ではない行動にでる日本の金融機関はレベルがやはり低い。
(続く)