東京 DOWNTOWN STREET 1980's

東京ダウンタウンストリート1980's
1980年代初頭に撮影した東京の町並み、そして消え去った過去へと思いを馳せる。

東海道品川宿を歩く~その十:法禅寺

2014-10-31 19:28:03 | 品川区
さて、東海道品川宿を歩く、今回は本宿の裏手にある法禅寺というお寺である。品川宿の特徴として、江戸四宿の他の宿場と比べてみても、お寺の数が非常に多いことに驚かされる。その上、規模の大きなお寺もあるし、しかも震災と戦災をくぐり抜けてきているので、東京の周辺ではあまり他に見られないような、見応えのあるお寺がいくつもある。今回はそんな中の一つである、法禅寺を取り上げてみる。

旧東海道から山側へ折れた参道を行くと山門がある。その前には、品川小学校発祥の地という石柱が立てられ、レンガ塀が迎えてくれる。品川小学校は、幕末の寺子屋に始まり、明治7年に品川で最初の小学校として開校した由緒ある学校。大正13年に北品川の権現山に新校舎が落成して移転した。今は小中一貫校の品川区立品川学園になっている。


法禅寺は、至徳元年(1384)の開創で、芝増上寺の末寺である。山号は臨海山光照院といい浄土宗のお寺である。入って直ぐの左手には、小さなレンガ積みの堂宇がある。
「法禅寺板碑  付 法禅寺遺墳碑 品川区指定有形文化財 所在・北品川二丁目二番十四号 法禅寺 指定・昭和五十八年三月十二日(考古資料一号)
 板碑は、鎌倉時代から戦国時代にかけて作られた石造の供養塔で、関東を中心に広く分布している。石材は、関東では主として秩父産の緑泥片岩(青石)が使われている。当寺の板碑は、品川御殿山から出土したものの一部で、破片を含めて総数百二十一基がある。最も古いものは徳治三年(一三〇八)、最も新しいものは延徳二年(一四九〇)の銘が確認される。これらは、幕末の品川台場の築造の折に、御殿山の土取場から宝篋印塔・五輪塔とともに出土したもので、遺墳碑はその時の由来を記している。一ヶ所からこれほど大量に出土して保管されている例は、大田区の鵜ノ木光明寺とともに珍しく、大変貴重である。法禅寺板碑のうち、宝徳四年(一四五二)銘の阿弥陀三尊種子を刻んだ板碑を品川区立品川歴史館で常設展示しています。
 平成十年三月三十一日 品川区教育委員会」


その隣には、お地蔵様が並んでいる。
「流民叢塚碑  品川区指定史跡  所在・北品川二丁目二番十四号 法禅寺  指定・昭和六十一年三月十四日(第二十一号)
 この碑は、天保の大飢饉で亡くなった人たちを祀る供養塔である。天保四年(一八三三)に始まった天候不良は、その後数年におよび、多数の餓死者を出した。品川宿には、農村などから流浪してくる者が多く、この付近で病や飢餓でたおれる人が八百九十一人を数えるに至った。これらの死者は、法禅寺と海蔵寺に葬られた。本寺には五百余人が埋葬されたという。初めは円墳状の塚で、この塚の上に、明治四年(一八七一)に造立の流民叢塚碑が立てられていた。昭和九年(一九三四)に境内が整備された折、同じ場所にコンクリート製の納骨堂が建てられ、上にこの碑が置かれた。碑の正面には、当時の惨状が刻まれており、天保の飢饉の悲惨さを伝えるとともに、名もない庶民の存在を伝えている。
 平成二十三年三月三十一日 品川区教育委員会」


堂々たる本堂。歴史のあるお寺らしく、本堂も立派なものだ。


本堂の前には石塔がおかれている。


重厚な本堂。屋根の細工も細やかなもの。


文化七年の銘がある石塔。1810年のもの。明治元年が1868年なので、その58年前ということになる。


境内にはイチョウの大木が聳えている。
「法禅寺のイチョウ  品川区指定天然記念物 指定・昭和五十三年二月十四日(第七号)
 イチョウはイチョウ科に属する洛陽の高木で、高さ三十メートルにもなり、葉は扇形で秋に黄葉する。雌雄(めすとおす)それぞれ別の木となる。本樹は雌樹で、幹の囲りは三・四メートル、高さは二十五メートルで、推定の樹齢は約四百年である。木の勢いも盛んで、姿も整い、周囲にひときわ目立つ大木である。本樹は古くから知られ、昭和十年(一九三五)の「東京市史跡名勝天然記念物概要」にも紹介されている名木である。
 平成六年三月三十一日 品川区教育委員会」


そして、本堂の側面にふと目をやると、レンガ積みが使われている。全体に日本建築のお寺の本堂で、こんな風にレンガ積みが使われているのは珍しいのではないだろうか。


そう思って、反対側に回ってみると、右側は全面がレンガ積みになっている。土蔵造りの様な形になっている。一部は改修されたりしているようだけど、こういうスタイルはあまり見たことがない。維新後の早い時期からレンガの製造も品川では行われていたようだし、文化的にも新しいものを取り入れる気風があったということなのだろう。


土蔵風の銅板を貼った防火扉の付いた窓。


レンガの壁と、和風の屋根の組み合わせが面白い。このレンガのお寺は見る価値がある。


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