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宮崎県央の巨樹・巨木探訪


7月25日の自然観察会は、今年は、新型コロナの拡大もあり、近場の県央の巨樹・巨木の「再観察」とになった。11年経過後の再観察だ。7月初めには、隣の熊本県で球磨川が氾濫し、人吉市、球磨村、芦北町などが洪水の被害を被った。知人夫妻も被災し、ヘリで救助されたと連絡が入った。手伝いに行きたいのだが、コロナの感染拡大防止のためボランティアは熊本県民に限られ、気持ちは少しモヤモヤ・・・。
前日は時折激しい雨。しかし、夜が明けてみれば薄日のさす空模様で、観察会にはもってこいの日となった。11年も経つと、樹木にも変化がある。雷や台風で傷んでいるかもしれない。そんなことを思いながら、集合場所をあとにした。
まず最初は、佐土原町の阿佐加利神社のクスノキ。前回は観察していなかった樹木だ。
巨樹と巨木の違いなどについては、以下を参考にして欲しいが、個別の幹高、幹周などは、「みやざき新巨樹100選」に選定されているものはそれから、それ以外は1988年環境庁調査などを元に記載している。

◎巨樹・巨木の定義
◇1988年に環境庁が全国の巨樹・巨木林調査を行うに当たり、巨樹・巨木について以下の様な統一した基準を設けた。
巨木の定義:
*地上約130cmの位置での幹周が300cm以上の樹木。
*地上約130cmの位置において幹が複数に分かれている場合には、それぞれの幹周りの合計が300cm以上あり、主幹の幹周が200cm以上の樹木。
◇一般に幹周3m以上を巨木と呼び、幹周5m以上を巨樹と呼ぶ慣習がある。
(注:一般に木の大きさを測る基準として、幹周、樹高、重量、樹齢などが考えれるが、幹周のみに巨樹・巨木の統一した基準が定められている。)
◇環境省では、原則として、地上130㎝の幹周りが300㎝以上の木を巨樹と定義
◇宮崎県は1991年に「みやざきの巨樹100選」を選定していたが、倒木や枯死した18本に替わり、2016年に佐土原島津のヤマモモなどの新たな樹木を選定し、「みやざき新巨樹100選」としてリニュアル。

◎阿佐加利神社のクスノキ
市指定郷土の名木で、旧佐土原城下から東1kmにある佐賀利集落にある。神社境内に「元阿佐加利也、上古神武天皇の麻を刈り給ふ」との石碑が立っている。近くには、はぜ馬場のはぜ並木や、大光禅寺中興の祖古月禅師の生誕地がある。
1991環境庁「日本の巨樹・巨木林 九州・沖縄版」では以下のデータだ。


阿佐加利神社のクスノキ
樹高   25m
幹周   5.4m
推定樹齢 100~199年

1991年の調査時からは約30年も経過している。ということで参加者で計測してみた。結果は幹周約6.1m。70cmも大きく成長していたが、環境丁調査時の推定樹齢には疑問が残った。

◎佐土原島津のヤマモモ
テクノリサーチパークにあるヤマモモは、新たに「みやざき新巨樹100選」に選定されたものだ。山岳信仰が盛んな頃に、信者たちによって植えられたと伝えられている。根元には小さな祠があり、干ばつの時には雨乞いの神事が行われたという。


佐土原島津のヤマモモ
みやざき新巨樹100選
樹高  10m
幹周  6.91m
伝承樹齢  360年

テクノリサーチパークを開発する時、地元の意向で伐採されず移植されたと聞くが、根元には小さな祠があり、お参りもされているようだ。これも計測してみた。結果は幹周6.75m。なんとデータより小さい。根元近くから枝分かれしているため、計測によって違うのだろうとの結論に達したが、計測の難しさもわかった。まだまだ元気なので、周りにある数本のヤマモモとともに成長が楽しみだ。

◎瓜生野八幡のクスノキ群
皆さんにも、ぜひ訪ねてほしいところだ。みやざき新巨樹100選には、「八幡神社は古くから瓜生野八幡宮と呼ばれ、地元の人は今でもそう呼んでいます。この境内にあるクスノキ群は大小16本からなっていて、このようなクスノキ群落は県内でも珍しく貴重な巨樹・巨木群です。」とある。






瓜生野八幡のクスノキ群
国指定天然記念物
みやざき新巨樹100選
樹高  28m
幹周  10.3m
伝承樹齢  720年

駐車場に着くと、階段脇に根に大きな石碑を抱いたオオクスが迎えてくれた。この1本だけでも圧巻だが、境内には案内の通りオオクスが群落をなしている。最も大きいのは、本殿右後方のものとされているが、柵内なので計測不可。それでも本殿脇から眺めるその姿は勇壮そのもの。また、本殿を背にして左前方のクスノキは、樹姿が伸びやかで、樹下のオオタニワタリとの組み合わせが絶妙だった。時折樹間を抜けて吹く風は、肌に気持ちよく、訪れる人をやさしく迎えてくれる。

◎去川のイチョウ
誰もが知るイチョウだが、みやざき新巨樹100選には、「去川のイチョウは島津氏初代の島津忠久が1179年(治承3)ごろに植樹したと伝えられています。現在では県内最大のイチョウの巨樹で、太い枝が少ないのが特徴です。秋には見事な黄葉を見せ黄葉狩りの観光客で賑わいます。近くには、かつて薩摩に出入りするための要所であった去川の関所跡や旧家があり、薩摩街道の歴史を今に伝えています。」とある。


去川のイチョウ
国指定天然記念物
みやざき新巨樹100選
幹高  30m
幹周  9.81m
伝承樹齢  840年

計測は保護柵があるためできなかったが、夏を迎え緑葉があふれ、今秋の姿を想像できた。台風さえなければ、秋には絶景となるはずだ。ここでちょっと遅い昼食となったが、普通ならみんなで輪になって食べるところだが、コロナ感染リスクを考え、間隔をあけ並列での食事となった。

◎生目のイチョウ

既存データは下記のとおりだ。「生目神社の森にはイチョウのほかにもイチイガシやクスノキ、オガタマノキなどの巨樹群を見ることができます。クスノキは1792年(明治3)に伐採命令が出されたとき、神社や氏子たちが米3石8斗を出し合いこれと引き替えに伐採をまぬかれたという石碑が残されています。
オガタマノキは古くから神木として境内に植栽され、2~4月には芳香のある花を咲かせます。」


生目のイチョウ
(宮崎市生目神社)
市指定郷土の名木
みやざき新巨樹100選
樹高  25m
幹周  6.55m
伝承樹齢  420年



クスノキ
(生目神社 社殿右手)
市指定郷土の名木
樹高  25m
幹周  8.65m
推定樹齢  300年



オガタマノキ
(生目神社 社殿左手)
市指定郷土の名木
樹高  18m 
幹周  3.20m
推定樹齢  300年


ここで計測できたのは、最後のオガタマノキで幹周3.81mだった。過去のデータを環境庁が調査した1988年とすれば、32年で約60cm大きくなったことになる。この樹はまっすぐ伸びているので、誰が計測してもあまり誤差はないはずだ。今後もすくすく伸びて欲しい。

◎神宮のラクウショウとオオシラフジ
ラクウショウは、北アメリカ原産のスギ科の落葉針葉樹で、湿地でよく育つことから和名はヌマスギとも言われ、世界で最も寿命が長い木と言われている。4千年以上も年輪を重ねているものがあると言われているから驚きだ。わが国には明治の初期に輸入され、宮崎神宮に植樹されたのは明治31年頃に宮崎神宮の拡張事業を記念し、市民が寄付したと言われる。現在、わが国最大のラクウショウと見られている。
オオシラフジは、1907年(明治40)当時の宮崎町長が奉納したもので、当時からかなりの大きさであったと言われる。正式な学名はなく、大きく真っ白な花をつけることからこの名があり、4月半ばには藤祭りで多くの花見客で賑わう。

神宮のラクウショウ
市指定郷土の名木
みやざき新巨樹100選
樹高  22m
幹周  5.4m
伝承樹齢  130年

神宮のオオシラフジ
国指定天然記念物
みやざき新巨樹100選
樹高  3m
幹周  1.87m
伝承樹齢  200年






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ツユクサの受粉戦略




少し油断していると、畑や庭にツユクサがはびこる。時々取り除けばいいのだが、放っておくととんでもないことになる。茎を伸ばし、節々からも根を出してはびこってしまうのだ。それはそれとして、ツユクサの受粉戦略はとても興味深い。植物は昆虫や風の手助けで受粉するが、ツユクサは昆虫をおびき寄せ、それができなかった時は自分で受粉する。
昆虫をおびき寄せる手段は、花びらと雄しべの色。花びらは3枚だが、2枚はミッキーマウスの耳のように大きくそばだっていて色は青。残り1枚は、2枚を支えるように目立つことなく小さく、色も白だ。雄しべは5本だが、これがくせ者。小さな黄色い花のように見える3本は、花びらの青と補色の関係の真黄色で際立ち、虫たちを呼び寄せる。だがこの3本に花粉はなく、花粉があるのは舌を伸ばしたような山吹色の真ん中の1本。昆虫はこの花粉を食べるのだそうだが、少ししかないため食べ終えるとすぐに他の花へ飛んでいく。これでは受粉が成功せずと思いきや、さにあらず。花粉がいっぱい付いた雄しべの本体は、グーッと釣り針のように伸び、黄土色の花粉がいっぱい付いている2本だ。虫たちが山吹色の雄しべの花粉を食べている時に、虫たちには本体の花粉がいっぱい付き、他の花へ飛んで行ってめでたく受粉となるのだ。
なんとも複雑な仕組みだが、ツユクサは「露草」と言われるごとく、花が咲いているのは早朝からほぼ午前中までだ。この間に虫たちが来なければ受粉できないところだが、それでも次の仕掛けで受粉する。花が閉じる時に、黄土色の雄しべと真ん中の雌しべはクルクルと丸まって閉じていき、自分で受粉するのだ。「露草」という文字や柔らかそうな花びらからは、はかないイメージを受けるがなかなかの強者だ。植物の受粉戦略は、なんとも奥が深い。
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