知人が指導する能面工房の展示会に出かけた。その能面会場の一角に、一風変わったというか、能面とは全く違う木彫りの面が展示されていた。当初、「何これ?」という感じが頭の中をよぎったが、さっと一通り見て、もう一回キャプションも見ながら、見直してみた。
その様子を見ていたのか、知人がすぐに作者を紹介してくれた。自分で創作木彫りをされているのだという。その工房の名は、『木力 MOKURIKI』。説明には「木材を、切ったり削ったり 創造を楽しんでいます。」とあった。
展示されている木面のタイトルは「百歳ばんざい」。それぞれモデルがあるようで、各キャプションには、県名と名前が書かれていた。最近は百歳を超える人も多くなったが、やはり百歳という年月は重く、その生き様は顔に最も良く現れるのだろうか。それぞれの生き様が木力さんの中で再解釈され、デフォルメされて木面に刻まれている。どの顔も生き生きとして“生”を楽しんでいるのがうれしい。この木面、あれこれ言うより見て楽しんだ方がよさそうだ。
私の第一印象は、宮崎県高鍋町の丘の上に立つ石像群「高鍋大師」と同じ印象を受けた。それは今も変わらない。多分、木力さんは、それぞれの生き様を表現しながら、刻むこと自体も楽しんでいるのだと思う。