「チョット休憩」
新型コロナのため県境を越える事もままならなかったが、解除されたため、久しぶりに遠出した。目的地は鹿児島霧島アートの森。我が家からは、高速を使わずに約2時間半だ。幾度となく通った道とはいえ、やはり街並は時折変化する。あるはずの家屋がなくなっていたり、新しくなっていたりだ。あるいは新しい発見があったりもする。我が家周辺の田んぼは、もう稲の穂が出始めているのに、30分も走れば、まだこれから田植えというようなところさえあった。
「黒蕨壮 彫刻展」は、期待に違わずいい作品展だった。「チョット休憩」という作品が頭の片隅にあったため、一度しっかり観たかった。「マイハウスⅡ」や「帰らなくては」などの大作の他、「肉食女子(スズメバチ)」や「草食男子(カブト)」などの暗示的小品も。私的には1986年前後頃の「マイハウス」シリーズ辺りの方がリアリティーを感じる。脱ぎ捨てられた作業服は、木彫なのにまるでそこに脱ぎ捨てられた衣服のような存在感があり、脱ぎ捨てた人の仕事や性格まで連想させる。「マイハウスⅡ」のダンボールの中から出ている足は、はいているズボンや靴そのままの圧倒的存在感であり、「これは木彫?」と思わせるほどの技巧だ。もちろんダンボールも木彫だ。2009年〜10年に制作されたという「あの手・この手」は、手をつなぐ縄まで木彫だ。中には指の先から縄が出ていたりする。発想そのものと裏打ちされた技巧が、この人の作品を支えているように感じたが、近年は、圧倒的質感が放つリアリティーより思惟的暗示感の方が出始めているのだろうか・・・。