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イカタケ




これはいったい何者? まるで映画に出てくるほかの星からのインベーダー? ちょうど10年前の今頃のことだ。雨が数日降り続いた後、垣根の脇の籾殻がたまった場所に、イソギンチャクみたいな白い物体が6、7個。その脇にはウズラの卵みたい白いものもあった。ひょっとするとヘビの卵・・・? だがこれから寒くなる季節、ヘビが生まれるはずはない。そんなことを思いながら、卵状のものに長靴の底でそっと触れてみた。ツルッと薄皮がむける。見なければよかったと思うほど気持ちが悪かった。まるで、映画『エイリアン』のサナギのごとしなのだ。
ひょとするとこれは毒キノコ? ということでネット検索してみた。その結果、これに間違いなしと行き着いたのが「イカタケ」。触手のような物の真ん中には、どろっとした黒っぽい部分がある。まるで腐ったチョコレートみたいで、きつい臭いもある。だが、人にはひどい臭いでも、これこそイカタケの生存戦略。この臭いでハエ等を引きつけ、胞子を運ばせるようだ。どこで身につけたか、イカタケの生存戦略侮るなかれだ。だが、それ以降、見たことない。
このイカタケ、調べてみると京都府レッドデータブックでは、「絶滅寸前種」である。籾殻などに発生するようだ。そういえば、その年は福島第一原発事故が起きた年だった。情報収集や集会などに追われ、籾乾燥後、排塵籾殻をそのままにしておいたのだ。そこに生えたのだった。正体が分かってしまえば、気持ち悪さはなくなり、その希少性ゆえ、愛おしさへと変化した。
その後、地元紙記者が県博物館のキノコ博士を連れて取材。宮崎県では約30年ぶりの発見だということで、博士は自分用と国への報告用ということで2体持ち帰った。このイカタケについては、小さな記事だったが、新聞にも写真付きで掲載された。それを見た東京の某局関係者がカメラ持参で取材。有名人が食べる企画もあったが、その時期には、もう萎れてこの企画はオジャンとなった。だが、黒木秀一著『宮崎のきのこ』(鉱脈社)には、写真と文が掲載されている。
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