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ゴッホの「星月夜」と重なる瑛九の「田園 B」


美術館、もしくは展覧会にはカメラを持っていきたい。たまに撮影OKの作品があるからだ。これも撮影OKだった。「田園 B」/pastoral Bと題したこの絵は、宮崎が生んだ前衛画家・瑛九の代表作のひとつだ。宮崎県立美術館蔵だからコレクション展で度々目にしてきた。この作品は、亡くなる前年の作品だ。60歳ぐらいで亡くなったと思っていたが、亡くなったのは48歳と若い。絶筆は、大作「つばさ」だ。
瑛九の作品を初めて知ったのはいつだったか・・・。私と同じ姓を持つ画廊の主からだったように思う。もう、ずっと前のことだ。画廊ではフォトデッサンを集めていた。それらを目にした時、カメラを使わずともこんな作品ができるのかと、すぐに引き込まれた。その後、シュール的な版画など記憶に焼き付けたきた。だが、点描で描かれた晩年の作品は、今まで自分の内に入ってくることはなかった。だが、今回カメラに納めた「田園 B」を眺めていて初めて、それに引き込まれている自分に気づいた。ひとつひとつの点は、輝く星々のようでもあり、生命がほとばしる宇宙のようでもあった。
「田園 B」は、月、星、太陽が、ふるさと宮崎の田園に映じて輝いている心象風景を描き出したものと言われる。だすれば、ひとつひとつの点は、生命ひとつひとつ、あるいはそれを構成している原子そのものかもしれない。ずっと見ているうちに、ゴッホの「星月夜(糸杉と村)」と重なってきた。ただ、田園・pastoralという言葉からは、田んぼの風景とは違う牧場的な風景を感じる。それが、田んぼに育った私の中に、今まで入ってこなかった理由かもしれない。
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「金原寿浩展 海の声」

少し気になる絵が、7月31日の宮崎日日新聞文化欄に掲載されていた。国会議事堂前に、黒いフレコンバッグがいっぱい並び、空にも浮かんでいるのだ。大きな記事ではなかったから目に止めた人は少ないかもしれない。国会前というのが強いメッセージ性を感じさせた。空に浮かんでいるというのも、福島第一原発事故後人々の上に降り注いだ放射能を思わせた。
ということで、行き着いたのが「原爆の図 丸木美術館」のHPに掲載されている動画。そこには絵画から受ける感じとは、真逆にも見える女装姿の作者がいた。ピンクっぽい金髪、そしてネイルリングにカラフルなパーカーという出立。よく見ると、ピンクの髪留めや左肩から斜めに伸びた細い紐の先にはバックだろうか・・・。想像していた作者の姿とはまるで違ったが、私が気に止めた作品というのは、「ちょっと置かせてね」というシリーズ中の一枚だった。大量のフレコンバッグを首都圏に持ってくるというシリーズだ。大きな絵と思っていたが、そうでもなかった。実際の絵は、動画から感じるものとは違うかもしれないが、もう少し描き込みがあってもいいかなと感じた。そのシリーズとは別なのだろうが、「雨を見たかい」という絵があった。空にたくさんのフレコンバッグが浮かんでいる絵なのだが、「フレコンバッグの中に入っているのは、単なる汚染物ではなく福島の人たちの財産であり故郷なんです。」という説明は、心に刺さった。
これらは、「3.11」がもたらしたものだが、「沖縄」を描いたものもあった。墜落したオスプレイをガジュマルが呑み込んでいく絵では、人間の手の形をした太い根がオスプレイをつかみ込んでいた。発想力・想像力には感服だ。

◎2021年丸木美術館「金原寿浩展 海の声」紹介
https://www.youtube.com/watch?v=7EKTHkqoQt8
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