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壱岐・対馬行/その6(和多都美神社・烏帽子岳展望台)

海に立つ鳥居と陸に立つ鳥居


珍しい3本柱の鳥居


外削ぎの男千木(右)と内削ぎの女千木(左)

万関橋の次に目指すのは、和多都美神社だ。382号線の両側は照葉樹の森が続き、まもなく豊玉町に入った。対馬のちょうど真ん中に位置する町だ。「豊玉」で思い浮かぶのは、豊玉姫だが、この地に来てびっくり。「海幸山幸」の伝承地なのだ。宮崎の青島神社も「海幸山幸」の伝承地だ。日向神話に出て来るから宮崎の専売特許と思っていた。宮崎駅から南郷駅間には、JRが特急「海幸山幸」を走らせてもいる。青島神社は、彦火火出見命(山幸)が豊玉姫命とともに海積宮(わだつみのみや)から帰ってきたあとの宮居跡とされている。尚、「海幸山幸」は、隼人族の一部が大和朝廷に服従したことを意味する神話との説や、黒潮系の南方族との交流を意味する神話であるとする説もあるようだ。奥は深い。また、日南市には全国でも唯一の火闌降命(海幸彦)を主祭神とする潮嶽神社がある。

対馬の和多都美神社は古くは「渡海宮(わたつみのみや)」と呼ばれたようだ。祭神は、豊玉彦尊の娘・豊玉姫命と彦火火出見尊だ。神社に着くとすぐに鳥居が目に入った。海に2つ、陸側に3つ、まっすぐに神社本殿に向って立っている。が、海の中の1本は倒れていた。聞けば、先の台風で倒れたのだという。早いうちに建て直しになりそうだが、元号も改まったので、さらに1本建て増そうとの案もあるそうだ。
私の目を引いたのは、これらの鳥居ではなく、参道脇の池のような所に立っていた小さな鳥居。そこには潮が引き込まれるようになっていて、潮が満ちてくれば、そこも海中の鳥居になるのだ。見慣れている2本柱の鳥居でなく、3本柱の鳥居だ。よく見ると、鳥居の真ん中には「磯良恵比須」という鱗状の岩が祀られていた。阿曇磯良(海神)のご神体という。
本殿にお参り後、脇に立つ松に注目。見る角度によって龍に見えるのだというので、本殿横に行くと確かにそのように見えた。龍の頭部と胴は松の幹で、尾の方は本殿にそって長く伸びる根だった。そして珍しかったのは本殿の千木。削ぎ方が違うのだ。右側が「外削ぎ」で男千木、左側が「内削ぎ」で女千木という。初めてみる削ぎ方だった。そこから少し森の中を歩くと大木と大岩の前に豊玉姫の墓が祀られていた。ここで印象に残ったのは、墓の後ろの大岩。まるで太刀でまっぷたつに切られてたようになっていた。


烏帽子岳展望台からの浅茅湾の眺め


さて、次の目的地は烏帽子岳展望台だ。同じ豊玉町内にある。バスは曲がりくねった狭い道をぐんぐん登っていく。眼下に浅茅湾が見え始め、入り組む湾には大小の島が浮かんでいる。やがて頂上近くの駐車場へ行き着いたが、既に大型バスが2台駐車していてどうなるかと心配したが、そこは地元の運転手、先に停まっていた大型バスの前に何なく止めた。そこから展望台までは急な階段を歩いて登らなければならない。添乗員が大変そうに言ったが、万松院でのこともあるため、ここはどうあろうと登ることにした。だが何のことはない、展望台はすぐだった。眼下には浅茅湾や大小の起伏で連なる照葉樹の森が美しかった。西北の一角には連なる森の向こうにうす〜く横に広がる白い海が見えた。晴れてはいたが、もやがかかっているのだ。地平線も定かでなかったが、ずっと見ていると海と空の境が分かり始めた。近くにいたガイドは、天気に恵まれれば朝鮮半島が見えると言う。その言葉を聞きながらさらに見つめていると、海の上に小さな白いものが見え始めた。動いていたから船だ。多分、大きな貨物船だったのだろう。さらに目が慣れてくると地平線の上に何やら小さな白いものが確認できた。こちらは動いていない。朝鮮半島の南に浮かぶ島だ。方角からすると釜山南西部の巨済島だったのか、あるいはそれより南の小さな小島だったのか定かではないが、確かに韓国側の島であった。
今回の対馬はここまでだったが、最北端の鰐浦や佐須奈まで行くともっとはっきり見えるのかもしれない。鰐浦や佐須奈は、朝鮮通信使が最初に着いた港だ。その北端の人たちにとっては、かつては厳原に行くには1泊を必要としたが、釜山には日帰りだったという。釜山で映画を見て日帰りで帰るということがあったそうだ。
烏帽子岳展望台からの階段を足早に降りると、登らなかった何人かが逆光に輝く浅茅湾を見ながら談笑していた。その後バスは一路厳原へ。厳原に着く頃は、もう日暮れがせまっていたため、予定に入っていた武家屋敷通りの散策は説明だけでお宿へ。ここでは食事が出ないことになっていたので、しばし休憩の後、近くの食事処へ。ご飯と一緒に野菜サラダを注文した。出てきたサラダをみてびっくり。直径30cmほどもある大皿にレタスなど健康野菜が山盛り。黙々と全ておいしくいただいたが、この大盛りサラダのおかげで、ご飯がどういうものだったか全く思い出さない。

(注)青島神社の彦火火出見命/海積宮と、和多都美神社の彦火火出見尊/渡海宮はそれぞれで使われている漢字を使用しました。
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