関屋和雄さんのテーブルや椅子
座卓の上で映える佐藤千盡と幸子さんの作品
表題の展示会に出かけた。この日、関西では台風21号が暴れ回っていたが、宮崎では少しの雨と風だけで済んだ。それも未明までのことだった。しかし台風21号は、1993年(平成5)の台風を思い起こさせた。今とは違う場所に住んでいたが、台風の最中、北隣の隣人から「瓦が浮いて波打っている!」と、急を告げる電話。だが、外は横なぐりの激しい風雨。その上波打っているという瓦は2階の屋根、そして夜だ。手だてができるはずもなく、ただ風雨がおさまるのを待つだけだった。そのうち、屋根の上でゴロゴロと瓦が落ちる音が数回・・・。
夜があけて、「ウフォー・・!」。カーポートの波板もどこかに飛んでいた。その波板は、飛ぶかもしれないと思い、あらかじめはずして菜園の中に重ね、その上にブロックを置いていた。しかし、ブロックごと無くなっていた。それ以上だったのは、前隣の屋根。下地の木材がむき出しなのだ。どこに飛んでいったかも分からなかった。私の車も悲惨だった。自宅裏に回ってみた。「オーッ!」、そこはまるで戦場。落ちてきた瓦で愛車のフロントガラスもリヤガラスも粉々で、後ろ座席に棟瓦が鎮座していた。
この年、宮崎では長い間ブルーシートが目についていた。
ところで、「千幸祐和 家具とアート展」だ。台風一過の青空とまではいかないが、まずまずの天気。ドライブを兼ねて20分程の距離。片側1車線の道路は少し曲がったり直線になったり。緩やかな上りにかかる手前から田舎道に入れば、すぐに会場の「ギャラリー二輪車」だ。孟宗竹が家屋の裏にいっぱいの古民家風家具製作工房だ。
ずっと以前からお互い知っていたという4人の展示会だ。この4人、40年の月日を経て、ビビビッと触れ合ったようだ。何だろうと思った「千幸祐和」は、それぞれの名前からとられていた。
彫刻と絵:ギャラリーバード・佐藤千盡
焼き物と絵: 同 ・幸子
寄木と絵:リトルクラフト・池田祐子
家具:ギャラリー二輪車・関屋和雄
焼き物と絵: 同 ・幸子
寄木と絵:リトルクラフト・池田祐子
家具:ギャラリー二輪車・関屋和雄
敷地入口にはたくさんの素材が積まれ、乾燥され、時を経てテーブルやイスになっていくのだろう。積まれた木口の様子がおもしろかったので写真におさめた。
家屋内は黒い梁や天井が印象的で、その中に自然素材を生かした家具が展示してあった。テーブル、椅子、座り机等々。技術に裏打ちされた作品は、きれいな上に丈夫そうだった。どれも肌触りが良く、自然の風合い100%の家具に関屋さんのこだわりを見た気がした。そのテーブルの上には、池田さんの寄木作品。母親が子どもに愛情を注ぐような、やさしさに溢れた作品だ。最終的な形になるために、多分何度も何度もデッサンがくり返された末の作品のように見えた。佐藤千盡さんの彫刻は、なめらか曲線が多く、なでてみたくなるような作品群だ。これもいい、あれもいいと思いたくなるような作品がいっぱいで、どれも緊張感溢れる作品だったが、どこか都会的でもあった。いつの日か、作者にひとつひとつ制作意図を聞いてみたい気もした。
力を感じたのは、佐藤幸子さんの作品。赤い花の絵を目にした時は、頭の中で思わず「オーッ!・・・」。赤い花は、スイートピーなのだそうだ。この人の作品は本当に力がある。すぐそばに展示してあった焼き物もすごい。角張った花器は、白地を背景に力強い青い線。そして、丸くて黒っぽい花器はどっしりと上部へと伸び、カボチャのようでもあり、釉薬もいい流れで小さな火山とでも表現できそうな作品だった。聞けば、この2つの作品は、故・池田満寿夫氏に賞をいただいたそうだ。何かの展示会に出品されたのだろうと思うが、一見の価値有りだ。
その後、少し歓談のあと工房を後にしたが、その帰り際工房の作業場を覗いてみた。仕上げ前の椅子が気になったからだ。向こうを向いて並んでいる椅子は、どこかアモイ像を思わせた。
池田祐子さんの寄木
佐藤千盡の彫刻
佐藤幸子さんの絵画
佐藤幸子さんの焼き物
やがてテーブルや椅子に出番を待つ
モアイ像のように並んだ仕上げ前の椅子