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時代に取り残された武侠映画 『紅粉動江湖』

2006年01月26日 | 武侠映画
60年代後半~70年代前半にその輝かしい黄金時代を築き上げ《武侠世紀》とまで言われた武侠映画だが、テレビなどの普及などで、90年代初頭にツイ・ハークが『スウォーズマン』(笑傲江湖)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』(黄飛鴻)などの作品で再び映画界に武侠映画ブームを起こすまで、武侠劇はブラウン管のものだった時代があった。もちろんその間にも武侠映画は製作され続けられてはいたが、ブームを起こすまでの「これだ!」という決定打がなかった。今回紹介する作品の『紅粉動江湖』(81)もテレビの武侠ものが人気を得ていたそんな時代に香港映画界の老舗、ショウ・ブラザースが放った可でも不可でもないきわめて平凡な作品である。

名家の一人娘である主人公は、剣客たちの世界である武林に憧れを持つ女の子。今日も侍女に江湖の英雄たちの話を聞き、一目会いたいと思いを馳せる。ある日屋敷での不自由にイヤ気がさし、憧れの剣侠に会いに行こうと侍女を連れて町に出て行ってしまう。翌日娘がいないのに気付きあわてた父親は娘の捜査に彼女の家庭教師の息子で武芸に秀でた青年を江湖に向かわせると同時に多額の懸賞金を掛けたが、これが江湖の連中たちに一攫千金の野望を与えてしまう。果たして彼女の運命は如何に…?
      
クレジットには《原著:古龍》と書かれていたが、多分こういう作品はなく、元となる話があってそこから膨らませていったんだと思う。粗筋だけ書くと、なんだか現代的で毛色の変わった面白そうな武侠映画なのだが、現物は「ちょっと…」な仕上がりである。別にアクション等に問題があるわけでなく、大掛かりなセットも組んであり「いつものショウ・ブラザース製武侠映画」なのだが、その辺が逆に進歩のなさを感じたのかもしれない。劇場用作品ならではの大セットや高ギャラの俳優、血しぶき上がる暴力描写さえなければテレビでやれない題材ではないからだ。実際テレビで武侠もの(そのほとんどが原作あり)が人気があった理由も、元々の長いストーリーを長期間にわたって続けて楽しむ事ができるからである。約90分の尺しかない映画ではすべてのエピソードを映像化するのは不可能というもの。だからこそ他のプロダクションではこの時代、あまりにも保守的なショウ・ブラザース製武侠映画のアンチテーゼとして、現在香港映画界において第一線で活躍している当時の新人監督たちが自らの映像表現の実験の場として、きわめて特異な武侠映画を発表していく。それと同時に香港アクション映画のトレンドもクンフー時代劇から欧米式の洗練されたモダンアクションものに移行し始め、ますます"わざわざ劇場に足を運ばなくても茶の間で楽しめる"武侠ものはその商品価値を下げていく事となる。この作品は特にこれといった特徴はないが、観賞していて時代の移り変わりを読み切れなかったショウ・ブラザースの《驕り》みたいなものを感じた。
    
  …と好き勝手に書いちゃったけど、たかだか程剛監督作『十四女英豪』(72)のVCDを注文する際についでに購入しただけなのに、ムチャクチャな言われ方だなぁ。でも、つまらない作品ではないので、もし観る機会があったら主人公のじゃじゃ馬ぶりに惚れてあげて下さい。


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