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HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

『2 SINGH 2 DEAN DIN』を観る

2009年10月03日 | タイ映画
 古いタイ映画(主に70年代の)はいつ観ても新鮮な驚きがある。著名な香港俳優が招かれて出演した作品なんかを発見すると特にそうだ。人件費の安いタイで(ついでに出資なんかしてもらったりして)アクション映画を撮ると、南国特有のエキゾチズムを醸し出す一風変わった作品に仕立てられるので香港の映画製作者にはもってこいの土地である。ついでにリゾート気分も満喫できるしね。

 今回紹介する『2 SINGH  2 DEAN DIN』(中国語題:大地雙英、73)はまさにそんな感じ。あらすじは大陸(香港?)からタイにやって来た主人公(演ずるは高遠という香港の俳優さん)が異母兄弟のタイ人青年(何と大スター、ソムバット・メータニー!)と共に、対立する資産家一味と対決するというもの。映画の所々に観光名所やタイの民族舞踊などが収められていて、ちょっとした観光気分を味わえる(っていうか、この頃のタイ・香港合作映画は殆どそう)。

           

 実はこの作品、タイ映画ルートで購入したのだが実は完全なる香港映画のようである。
 というのも、タイで製作された映画でこうも長々と観光案内なんかするわけがないっ!香港主導で製作された証拠である。それに我等がヒーロー(タイ人の目からら見て)、ソムバットの扱いが悪すぎるのもそう。仮にもタイ側の主演俳優であるソムバットがとんでもない手違いで自分の父親を殺してしまうといった間抜けな行動をとらせるなんて、これがタイ映画であれば絶対させないと思う。

                   

 香港製作の本作のポスターを見ればどちらに主導権があるかは一目瞭然。主人公の高遠がトップなのは理解できるが、隣に表記されるべきソムバットの名前など全然ない(一応蹴り足を出しているのがソムバット)。その代わり、ゲスト扱いの陳星が大きく名前が出ていてあたかもラスボスのような錯覚を覚える(ちなみに大ボスは田豊)。

           

 まぁ、香港の人(と香港クンフー映画ファン)からしてみればこの人誰?てなもんでしょうけど、タイ映画好きの私とすれば、「スターとしてどっちが格が上なんじゃい!」と怒らずにはいられないのでした(涙)。…だって実際そうなんだもん。

           

トムヤム酔拳登場! 『Thao Huay Lai Liew』

2009年01月28日 | タイ映画

 以前よりそのジャケット画の奇妙さで一度観たいと思っていた、タイ製『酔拳』パロディ映画(別名・トムヤム酔拳)こと『Thao Huay Lai Liew』をついに紹介できる日が来ようとは…う~ん非ハリウッド娯楽映画収集を諦めないでよかった。

 話は、悪道場の師範代に父を殺された主人公が、復讐のため伝説の老武芸者の下に弟子入り、酔拳を会得し敵討ちを見事果たすという典型的なクンフー映画のフォーマットに則っているが、ここでカン違いをしてはいけないのはこの映画はコメディであるという事だ。えっ、『酔拳』だってコメディじゃないかって?あれはアクションがメインでコメディは味付け程度でしょ。このタイ版酔拳は基本がコメディでクンフー・アクションが味付けなんです。

 とにかく主人公たち低所得層に住む中華系住民の描写が汚らしい。映画の開巻、いきなりバキュームカーを持ち出しての汚物ネタから始まったり、主人公が好意を持つヒロインがとにかくやかましく、観ていて感情移入しづらく生理的に受け付けないのはどういう事か?バンコクの人は地方出身者を馬鹿にするが(映画の中では)、この映画を観るかぎりでは中華系住民もかなりキライなのかも。

 こういった苦行のようなギャグ場面を耐えれば、あとは夢のような楽しいクンフー・アクションの数々が待っている。観て驚いたのは、結構本格的なアクションが演じられているという事。香港映画が時差なしで数多く入ってくる国ゆえ、こういったアクションを真似るのもお手の物ってか。

 トムヤム酔拳、っていうくらいだから『酔拳』のパロディシーンもちゃんとあります。お約束の蘇化子じいさんはちゃんと登場するし、山中のあばら家で身の回りのものを使用しての特訓シーンはちゃんと常備されていて文句は言わせない。ただ、やってる事はムチャクチャだけど。そして憎き仇には会得した酔拳でBANG!だ。ちゃんと酔拳映画ではお約束の「将軍令」がバックで流れるというこの徹底ぶり。思い出したけど主人公たちが使う拳法って猴拳なんですね。南方系出身者が多いのかな?タイ華僑って。

 とまぁ、『マッハ!』以前のタイ式マーシャル・アーツ映画捜索は始まったばかりで(タイ式西部劇は3~4本観たけど)、圧倒的に鑑賞できる作品が少ないし、マーシャル・アーツ映画かどうかが判別不可なのが現状だ。ついこの間も女の子が蹴り足上げているジャケットのVCDを注文したのだが、こいつがビンゴだったら言うことないんだけどな…。

          

          

          

          

 ※補足 この映画の悪拳士役で、香港クンフー映画好きには名が通っている唐偉成(ウィルソン・タン)が出演しているとの情報を「超級龍熱」の龍熱さまよりいただきました。ご教示どうもありがとうございました。
 という事は本作の武術指導も兼ねている可能性もありですね。


えっ、あの人が出てるって?! 『 In The Name of The Tiger』

2008年11月05日 | タイ映画

 今回は「贋物に注意!」というお話

 ここ最近、中国の動画共有サイトyouku.comというのにハマッていてそいつを利用して昔のクンフー・武侠映画や韓国映画等を観まくっているのだが、最近「?」な映画を発見した。

               

 中国題は『籠中獣』といい、監督・主演は成龍、共演は托尼・賈と書かれていた。私は思わず

「えっ、酔拳3(製作予定)の前に共演作あるの?」
「ジャッキー、タイ映画いつ撮ったの?」
と叫んだ。(いや、実際に声に出したわけじゃないんだけど…)

 そんな作品があるのならもっと話題に上ってもいいのではないか!そしてどこかに詳細は載ってないかインターネットで検索したが…

 な~し。あっても中華サイトのみでVCDやDVDの紹介のみだった。肝心のジャケット写真はジャッキーやトニーの切り貼り写真で構成された代物でこちらからもどんな映画なのか読み取ることは不可能だ。しょうがない、実物を観てみるか。DLした作品を再生してみる事にする。

  冒頭にはジャッキーが中国クンフーの優秀性を述べサンドバックを叩くシーン、続いてトニーが象と戯れるシーンがあり、いきなり本編が始まる。

                

 映画は別世界からやってきた腕の立つ主人公が、血なまぐさい部族抗争の間を潜り抜け、世話になった村の少女を助け出し、悪魔のような追っ手を倒すというファンタジー・アクションもので、画面のスケール感はそれなりにあり劇中ドラゴン型の怪物が登場したりとそれなりによく出来た作品だった。しかし肝心のジャッキー&トニーはず~っと目を凝らして観ていたが二人が出ている気配はどこにもない。

                

 え~っ、ジャッキーとトニーが出てるのそこだけぇ?!
あいや~、騙されたネ。
ムチャクチャやりよるな、中国人。

 じゃあこの作品はいったい何?

 実はこの作品、れっきとした純正タイ映画で『In The Name of The Tiger(タイ題Suea Phuu Khao)』(06)という映画だったのだ。
 さっきはチョイ褒めていたけど、あれは作品全体であってアクションに関してはホント酷かった。動作自体はまぁよく出来ていたのだが、わざとブレを作ったりカットの切り返しが速すぎたりして全体の動きがよくわかんない。騎馬シーンはよく撮れていただけに残念。よくあれで成龍導演で売ろうとしたな(怒)。 
             

 おい、販売者!一般中国人は騙せても、世界中の功夫迷は騙せないぜ!!

“半”変身ヒーロー参上! 『HANUMAN : THE WHITE MONKEY WARRIOR』

2008年10月29日 | タイ映画

 今回はちょいとインド映画から離れて、久々にタイ映画などを紹介してみようかなと思う。とはいうものの当ブログの更新自体が不定期なもので何を書くにしても“久々”になっちゃうんだよなぁ…(哀)

 てなわけで、今回は今年8月に(タイで)公開されたばかりのホヤホヤの新作アクション映画『HANUMAN : THE WHITE MONKEY WARRIOR』(08)を紹介。



 主人公は古より超人的な力を発動させる護符を人体に彫る事を許された魔術師の息子で、自身も神猿ハヌマーンの護符を父の手により身体に彫られている。しかし、敵対する悪の魔術師の配下によって父は胸に彫られた護符を剥ぎ取られ殺されてしまう。彼は父の仇を討つために配下たちと闘い、悪の魔術師と対決し勝利する事ができたが、同時に配下たちの怒りに火をつけてしまい、主人公の隠れている村を襲いたった一人の肉親である妹を奪われてしまった。果たして主人公はこの危機をどう切り抜けていくのであろうか…?

           

 魔力を持つ護符を身体に着けていると霊的なパワーを使う事ができるというギミックはタイ映画では結構使われていて、日本でもDVDで発売された『マハウット!』(03)でも見受けられる。香港クンフー映画でいうところの“神打”に近いか。でもあれは別の術者がいてこそ力が発揮されるので、最初から身体に彫ってあるこちらの登場人物のほうが使い勝手がいいかも。

 肝心のアクション面はといえば「普通」の部類に入るだろう。タイ・アクション映画お得意のムエタイ的動きも無ければ、目を見張る危険度の高いスタントも無い、本作の特異な題材がなければスルーしてしまうような内容だ。

 だが、逆にこのスピリチュアルなイメージを得た事によって、ガチなアクション映画では不要と思われるワイヤーワークやVFXは効果的に映り、ハヌマーンの力を持つ主人公は仮面ライダーに、それぞれ虎・鰐・豹の力を持つ悪役たちはショッカーの改造人間に見えてくるのだ。まぁ、護符を彫っている時点で改造人間と言えなくも無いか。

           

 ただ、残念な点が一つ。それぞれの力を発揮している時、劇中にイメージで1カットだけその動物の姿で登場しているのだが、出来れば霊的パワーを発動してる時はずーっとその姿でいてほしかった。せっかく主人公がハヌマーンの力を発動させてもチラリチラリとしか見せてくれないんだもん、もったいないっ!そうすれば完璧なヒーロー映画になったのに…

           

パンナー印ムエタイ・アクションの完成形?『SOMTUM』

2008年09月14日 | タイ映画

 あの『チョコレート』以来になる(人によっては『アルティメット・エージェント』以来の)パンナー・リットクライ師匠のアクション(指導)映画『SOMTUM』(08)が一月前にタイでDVD/VCD化されたので購入して鑑賞したのだが、これが中々の個人的傑作でした。

 主役は『トム・ヤム・クン!』(05)トニー・ジャーと闘い、強いインパクトを残した元プロレスラーのネイサン・ジョーンズ。その彼が図体だけはデカイが、気は小さいアメリカからタイに来た旅行者で、偶然食べたソムタム(パパイヤの皮の入ったパタヤ名物の激辛サラダ)の力により馬鹿力を発揮し周りの敵をぶっ飛ばすというマンガちっくな役を結構繊細に演じている。へぇ~思ったより演技力あるんですね、彼。

             

 彼は劇中、女の子コンビと友人になるのだが、ひとりは友人思いのコソ泥で英語が話す事が出来るため常にネイサンとコミュニケーションを取っていたナワラット・テーチャラタナプラスートという少女。もうひとりは自らが会得したムエタイを武器に家族に楽な暮らしをさせたいと考えているサリッサー・チンターマニーという少女で、特に今作ではネイサンのド迫力アクションと共にこのサリッサーのムエタイ・アクションが売りになっている。
 彼女を見るのは今回が初めてではなく『七人のマッハ!』で老人からムエタイを習っていた村の少女役ですでにお目にかかっている。その彼女が身長も伸びて大人顔負けの切れ味鋭いムエタイ・アクションを披露してくれているのでまるで親戚の叔父さんが「大きくなったなぁ」と思うがごとくだ。

              
 
               

 この作品のムエタイ・アクションを観て思ったことは(もちろん前作の『チョコレート』も観て)、パンナー印のムエタイ・アクションは完成されてしまったのではないか?と言う事。
 『マッハ!』で初めて披露された時には格闘アクションと言えばクンフー型マーシャルアーツ型しか知らなかったので凄く斬新で危険に思えたものだった。特に膝や肘など人体で一番硬い部分を殺陣とはいえ叩きつけるのでその衝撃は計り知れない。次に続く『トム・ヤム・クン!』では蹴りや肘・膝に立ち関節技を加えてますます古武道的な動きになり、より実践的な感じとなった。
 そして今回の『SOMTUM』では今まではトニー・ジャーやダン・チューボンといったスタントマン畑しか出来ないと思われていた(『チョコレート』ジージャも四年間の訓練を受けていたし)ムエタイ・アクションを中学生くらいの女の子が披露しているのだ。
 
これは演出方法(見せ方)を含めパンナー印のムエタイ・アクション、つまりパンナー式アクションのノウハウが完成した証拠ではないか?

 見た目にはトニーやジージャが披露したアクションと大差はないが、受け手のスタントマンの技術向上や撮影テクニックやワイヤー、CGといった補助技術も使いこなし「このレベルであれば高度のアクション・スキルをもつ者でなくても見せる事が出来る」というパンナー師匠のアクション監督としての自信の表れのように感じる。
 また劇中には他に小道具を使用したジャッキー式のアクションも披露されていてパンナー師匠は今作では冴えまくっている。ネイサンもトム・ハワードプレデターといった《ZERO-ONE》OBとプロレスチックなアクションを見せてくれ、ギロチンドロップやフランケンシュタイナー等のハードコアなプロレス技の応酬はその筋の人でも納得できる仕上がりになっている。
             

 この『SOMTUM』、『チョコレート』同様日本公開を強く希望する!とはいってもDVDリリースされるんだろうな、きっと。

              


彼女の新たな物語 タイ・アニメ 『Nak』

2008年07月07日 | タイ映画

 中古ビデオ紹介もあと少しとなりましたが、ちょっと変更。久々の作品紹介となります。


 今回はタイ初の本格的劇場CGアニメーション映画『Nak』(08)です。なんだ、また日本アニメのパクリか、と思われるかもしれませんが、ところがどっこい!オリジナリティあふれる作画と世界公開も十分に狙えるほどのクオリティの高さをもっているのだ、これが!

 お化け(ピー)と人間がなんとなく共存しているタイの農村。年に一度の村祭りの夜に母親に内緒で遊びに来た姉弟が人間界を征服しようと企む悪霊に襲われ、生贄として弟を誘拐されてしまう。助けを求めお化けの居住区へ迷い込んだ姉は心優しい女性の幽霊であるナークの協力を得ると、彼女の導きによって悪霊たちの本拠地であるバンコックへと向かう。生贄の儀式の時である皆既日食までに彼女たちは弟を救う事が出来るのであろうか…?

               

 タイ人の間では知らぬもののいない妖怪メーナーク・プラカノンを主人公にして、今までの定番ストーリーではなく(産死したナークが幽霊となりながらも愛する夫の帰りを待つ、というもの)全く新しい物語を作り出した。それが成功してるかどうかは最終的な興収が分からないので何ともいえないが、少なくとも元の話を知っている私には十分に楽しめた。
 ま、ファミリー向けなので夫に言い寄ってくる女性たちを驚かしたり、幽霊と分かった夫がナークから逃れようとするといったメーナーク映画では基本中の基本のエピソードはキツイか。悪霊たちと戦う正義の妖怪という『ゲゲゲの鬼太郎』のようなキャラクターには変化したが、強い母性愛の持ち主といった面はそのまま生かされているのでまったくの改悪ではないと思う。

  なぜ世界標準的レベルを持った作品になり得たのだろう?その答えともいえる人物がプロデューサー(共同)として名を連ねていた。『マッハ!』、『トム・ヤム・クン!』そして最近では『チョコレート』の監督として世界のアクション映画ファンにその名は知られているプラチャヤー・ピンケーオが参加していたのだ。なるほど世界レベルというものを知ってるわ、こりゃ。最近の作品では一場面CGアニメーションが挿入されていたが、きっと本格的劇場アニメ映画がやりたかったに違いない。

            

 ともあれ、ナークの八面六臂の大活躍も素敵だが、静かなタイの農村や騒がしいバンコックをマンガ的ではあるが忠実に描いた背景画、ノスタルジーあふれる農村での生活描写など“動”以外の場面も注目なので是非観てもらいたいと思う。

 でも、これ日本公開されるのかな?してほしいな…

            

衝撃ふたたび! 『チョコレート』

2008年05月26日 | タイ映画
 最近マンネリ気味だったタイ製格闘アクション映画だが、やっぱりというか流石世界中にムエタイ・アクションを流行させた張本人の作る作品は別格だな、というのが素直な感想である。
 あの『マッハ!』『トム・ヤム・クン!』において、その独特のアクションスタイルで世界中のファンを魅了したプラチャヤー・ピンケーオとアクション指導のパンナー・リットクライの黄金コンビが4年の歳月をかけて製作した待望の最新作『チョコレート』(08)をついに観る事が出来たのだ。

 タイ・アクション=ムエタイ風格闘+難易度の高いアクション、のイメージを決定付けたのがこの両氏であるが、彼らの関わった作品は非常に少なく、特に日本で紹介されているタイ・アクション映画はタイトルに『マッハ!』と付くものの、内容的には『マッハ!』の亜流、もしくは全然関係の無いものばかりで、アクション面でもワイヤーやVFXに頼りっきりで『マッハ!』『トム・ヤム・クン!』には遠く及ばない。つまりアクションに独創性が無いのだ。
 この『チョコレート』はさすが“本家の余裕”が感じられる内容となっており、悲劇的なストーリーにデンジャラス・アクションを掛け合わせるという離れ業を行っている。前作『トム・ヤム・クン!』が世界配給を意識しすぎたせいかハリウッド調な内容だったのを反省してか、今回はちゃんとアジアらしいドロドロとしたテイストも残っており、“あぁアジアの映画を観たんだなぁ”という感じだ。

 主演のヤーニン・“ジージャ”・ウィサミタナンはこの作品のために4年間もアクション指導のパンナー師匠の要求に応えられるように彼のアクションチームとトレーニングを積んだという。その甲斐あってか観てるこちらが「うへぇ~」と思うような難易度が高いアクションを見事にこなしている。とはいうもののラストのNG集では痛々しい彼女の姿が収められており、大変な撮影だったのだなというのが伝わってくる。
 ドラマやアクション面においては何も文句は無い。しかし、ちょっと目に付いた所が合ったのでここに書いておく。劇中ジージャが格闘術を覚えた方法は幼い頃に近くにあったムエタイ道場の練習風景とアクション映画のビデオなのだが、このアクション映画というのがピンケーオ監督の『マッハ!』と『トム・ヤム・クン!』なのだ。予告編ではブルース・リーの『死亡遊戯』が使われていて、その“学習”の成果として彼女が製氷工場でのファイトシーン(これまたブルース・リー・テイスト?)において怪鳥音を発しながら敵を倒していくのだが、本編ではリーの映像が全く使われてなくて(音声のみ)、その代わりに『マッハ!』『トム・ヤム・クン!』におけるトニー・ジャーの格闘シーンが長々と挿入されているのだ。
 まぁ、リーについては許してあげるとして(権利の問題とかありそうだしね)、トニーの映像はハッキリ言って長すぎ。期待度MAXだったのがこいつのせいで萎えてしまった。こちらは新ヒロインのジージャを観たいのであって、トニーなんかあっち行け、である。監督が興行的に弱いと判断したのかな?
  何はともあれジージャのアクションとアクションの間に見せる“溜め”の演技と憂いをおびた表情はこの映画の“萌え”ポイントだ。
日本公開まで待っててもいい、輸入DVDを入手してもいい、さぁ、この作品を鑑賞して驚け!そして萌えろっ!!

              
               
               

タイ版『300』か?! 『SUEK BANGRAJUN』

2008年01月02日 | タイ映画

 さすがに正月だけあって家の外は静かですねぇ。こういうときはTVでも観て…って駅伝や演芸番組しかやってねぇ!つまらん。
 というわけで映画でも観ようという事になって棚をゴソゴソやっていたのですが、去年末近くに頂いたDVD‐Rがあったのを思い出し早速観てみたワケです。

 その作品は『SUEK BANGRAJUN』というタイ映画で、画質からして多分70年代初頭のものだろうか?内容は時代劇で隣国(カンボジア?)の侵略を防ぐ為に戦う屈強な男&女たちの話で、最初は奇襲攻撃などで華々しい戦果をあげていたのだが、次第に敵国も大砲やロケット花火などのブロックバスターな攻撃を行うようになり一人、また一人と大事な仲間を失っていき砦が陥落しそうになった時、中央から派遣された軍隊が登場、それにより敵国は退却し国の平和は守られたが、結局生き残ったのは主役の二人(男女ペア)という、スターありきの歴史スペクタクル大作でした。

         
 

 主役をはじめ、多くの男性兵士が腰に布を巻いただけという姿なのでまるで『300』みたいな感じで、内容も《栄光と挫折》を描いた男性的な作風でとても好感が持てる。何と言っても敵国からの視点が無いのが清々しくて良い(プロパガンダな感じもするが)。アクションは香港武侠映画みたいに華麗ではなく、なんか鉄を全身の力で相手にぶつけているというヘビーな感じがとてもいい。

          


 私個人、人や馬がうわぁ~って画面に出てくる映画にとても興奮を覚えるんでこういった映画が大好きなのだ。日本映画もこの頃やちょっと前にはスペクタクルな映画を撮ってたんですがね…

           

パンナー師匠のスーパーヒーロー映画『マーキュリーマン』

2007年05月24日 | タイ映画

 トニー・ジャー主演作『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、そして自身の監督作である『7人のマッハ!』で新しいアクション映画の“才能”として高い評価を受けている(私たちのようなボンクラ限定)パンナー・リットクライ。しかし、ここ最近のパンナー師匠関連作品はどうも「イマイチ」というか「一味足りない」というか何だか分からないけどそんな印象を受ける。パンナー師匠、一体どうしちゃったのよ?!(前回と同じ出だしでゴメンね)

 今回は本格的タイ製スーパーヒーロー映画として一部でその名を知られている『マーキュリーマン』(06)を紹介。『マッハ!』『トム・ヤム・クン!』の監督であるプラッチャヤー・ピンゲーオがプロデューサーで「主人公がムエタイを使うアクション映画シリーズ」の一環として製作された(このシリーズで女性がムエタイを駆使して悪と戦うという『チョコレート』はタイで今夏公開予定)もので、熱血漢の消防隊員が火災現場でテロリストに殺されたときに偶然犯人が使っていた謎の物質・レックライの力により鋼鉄の身体と磁力を操る力を得て、タイを守るマーキュリーマンとして憎きテロ組織と戦うという内容だ。この作品にはアクション指導としてパンナー師匠が参加しており、そのニュースと予告編を観てものすごく興奮していた。自分の脳内では早くも大傑作だったワケですな。しかし、VCDで完成された作品を観てみると…

 ガ~ン、何んじゃこりゃ?!

 メインの俳優さん・女優さんがアクション専門ではないので肝心の格闘シーンはダブルは使いまくり、細かいカットで編集されているので、スピード感あふれるといえば聞こえは良いが実際問題、目がチカチカするという有様。あれ?パンナー師匠こんなにアクション演出ヘタでしたっけ??

 トニー・ジャーといい、ダン・チューポンといった世界的評価の高い作品の主演俳優は元々はパンナー師匠の作品のスタントや絡み役で認められてきたアクションの達人で、彼らのポテンシャルの高い身体能力を撮る際、変に編集なんかで加工せずに固定(フィックス)で撮ったほうが観る側は素直に「凄い!」と感動できるのだが、実際アクション映画を製作する際、そんな都合のいい俳優さんばかりが集められるわけではない。だからこそ彼らを“動けるように見せる”ことの出来る“アクション監督”という役職があるのだが、今まで仲間内の俳優・スタントマンでアクション映画ばかり撮ってきたせいか、イマイチ上手くない。やはりこういった技術は長年の経験がある香港映画のほうが一枚上手のようだ。

                            

 あと、振付けるアクションの質の違いにも影響があるようで、思うに彼の作り出すアクションは危険度が高く、それでいて現実味がある(痛みが伝わる)アクションが真骨頂。この作品はスーパーヒーローが登場するという非現実的な内容で、マーキュリーマンの特殊能力はCGIで描かれており、あとすることといえば「どれだけヒーローをカッコよく振付けられるか?」なのだ。しかしパンナー師匠、こういった題材はあまり経験したことがなく(初挑戦だっだかも)全身タイツのヒーローに『マッハ!』ばりのムエタイアクションを振付けても、素顔と違ってキャラクターの感情が表現しづらいので、観ているこっちも感情移入しにくく何となく「一味足りない」と感じてしまったのかもしれない。これがチン・シウトン監督だったら文句なしにカッコいい画が撮れただろうに…

              

 それでもちゃんと各キャラクターごとに違う型のアクション(主人公:ムエタイ、女テロリスト:マーシャルアーツ、寺でレックライを護っている巫女?:中国武術風、等々)を振付けてあるのは見事だし、パンナー師匠の“名前”さえ意識しなければ十分に満足できるだけのレベルのアクションを楽しむ事が出来る。何よりもアジア発の(アメコミ風)スーパーヒーロー映画というだけで私なんかは興味がそそられて点数が甘くなってしまうのだ、これだけ不満点を挙げておきながら。

 もし、日本で劇場公開もしくはDVD販売されたときは、このタイテイストあふれたスーパーヒーロー・マーキュリーマンの活躍に声援の一つでもかけてやってください。ただし、『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、それに『7人のマッハ!』を先に観てはダメだよ。それがボクとキミとの約束だ!(こればっか…)

              

検証:果たして『コン・ファイ・ビン』は本当に駄作だったのか…?

2007年05月21日 | タイ映画

 トニー・ジャー主演作『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、そして自身の監督作である『7人のマッハ!』で新しいアクション映画の“才能”として高い評価を受けている(私たちのようなボンクラ限定)パンナー・リットクライ。しかし、ここ最近のパンナー師匠関連作品はどうも「イマイチ」というか「一味足りない」というか何だか分からないけどそんな印象を受ける。パンナー師匠、一体どうしちゃったのよ?!

 今回紹介するのは2006年末にタイで公開された(2007年中にはアメリカ公開の予定あり)『コン・ファイ・ビン』。主演は『7人のマッハ!』で注目されたパンナー師匠の秘蔵っ子であるダン・チューポン。内容はというと、幼い頃に胸に刺青のある男に両親を殺された主人公・チューポンが、推進力抜群の竹筒花火とムエタイを武器に両親の仇を探すというもの。そして何と言っても私のようなタイ・アクション映画ファン最大の売りはパンナー師匠がチューポンの仇である魔導拳士を演じていて、久々にアクションを見せてくれている事だ。

 これだけの面白そうな要素が盛り込まれていながら、実際に完成された作品を鑑賞してみると「う~ん…」と思ってしまい、決してつまらない訳ではないのだが、胸を張って「面白かった、最高っ!」とも言えないのだ。

 何故っ?!

 最初に考えたのはパンナー師匠のアクションでのワイヤー使用の多さが幻滅した原因なのかな?なんて思っていたのだが、魔術を使う役であり、超自然的な動きを表現するにはやはりワイヤー使用は不可欠だろうという事でその考えはあっさりと×。90年代に低予算で同じようなアクション映画を撮っていたときは人間の動きだけで表現していたことを思うと、多少残念ではあるが。

 敵のバリエーションを悪くないし(パンナー魔人を含め、凶悪な巨人などが登場して主人公をいろんな形で苦戦させる)、肝心のチューポンの変幻自在なアクションも決して劣っているわけでもない。どうして?ドウシテ?何故?なぜ?いろいろ考え、作品を何回も見直した結果「多分こうだからだろう」という答えが発生した。

              

 作品中におけるアクションの見せ方がヘタなのだ。

 開巻早々にチューポンが盗賊相手に立ち廻りをみせてくれるのだが、これが非常に長い!チューポンの見せれる動作をすべてこの場面で観客に見せてしまっているのだ。もうちょっと出し惜しみしてもバチは当たんねぇぞ!これじゃぁ後に控えているアクション場面も何となく「同じことの繰り返し」にしか感じられない。
 派手な動作ももちろん大事だが、推理小説が最初から手の内を明かさないのと同じで、小出しで少しずつ見せていくのがベストの方法だと思う。

 それに継続しているアクションの途中でカットが切り替わっちゃうのでとっても観辛い。普通にサラッと流す程度のアクションシーンならいいが結構な見せ場だったりするのでなおさらだ。こういう場面は1ショットで見たいのが普通でしょ?!

 結局の所この作品、パンナー師匠はあくまでも出演しただけであってアクション演出には絡んでいないので(多少は口出ししてると思うが)、こういう事になってしまったようだ。アクション映画の見せ方の知らない者が、「見せ場繋げばいい画になるだろう」と、気張って撮ったアクション映画はこういう事が起こるのだ。せっかくのチューポンのアクロバチックな動きが台無しである。

 まぁ、これはあくまでも個人的感想なので、今後この作品を目にされる方は尻込みをせず、タイ・アクション映画の現在進行形を堪能していただきたい。あれだけ不満点をつらつらと書いておきながら言うのもなんだけど、面白いっスよ、コレ。

 ただし、『マッハ!』や『トム・ヤム・クン!』、それに『7人のマッハ!』を先に観てはダメだよ。それがボクとキミとの約束だ!