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意志決定と知事職

2016年06月18日 00時00分01秒 | 提言

 知事職に限ったことではないが、我が国のトップの意思決定は、通常、トップダウンではない。トップダウンが行われる場面はそう多いものではなく、めったにないといった方が良いと思われる。組織の意思決定はボトムアップであり、最下位の担当者が起案者となり、所属課、関係部局を調整のうえ、所属部、所属局の長の決裁を仰いだ後に関係部局、副知事、知事へと決済が回る。ご存知のように稟議制である。案件が発生するたびに、先ず、担当課で大方の方針を出し、関係部局が決まる。これからが根回しといわれる。それぞれの役職に応じた関係部局間の相当職との打ち合わせが始まる。

 

 打ち合わせは会議形式だけではなく、早朝のミーティングや、食事時といえども機会があればその案件についての概要が伝えられる。別の会議の遡上に上ることもあり、緊急の場合以外はその案件について組織内の誰しもが知ることになる。このルートに乗るのは人事関係以外のほとんどの案件であるが、ルーチンワークは所属部局だけで済ませることもあり、担当者が起案書(原議書・稟議書)を書く段階ではすでに根回しが済んだ後である。

 

 したがって、組織の全員があらかじめ知ったのちに文書が回るため、トップの決裁がスムースに運ぶこととなる。途中段階でのクレームが発生すれば、担当者と同格の部課長が同席し、調整に入る。したがって、新規案件であっても、部課長が起案することはなく、また、局長、審議官、次官 知事等が自ら起案することはない。また、稟議書は関係部局やその上の役職に至るまで、担当者が決裁を受けに回り、担当者自らが起案の内容を説明する。つまり、担当者は最終決裁者の立場で稟議書を作成するのであって、決済後は最終決済日付で、文書番号を総務で取ることになり、対外的な文書として発出される。

 

 案件の発生の多くは、対外的な受信文書である。予め、総務で受信番号が付けられ、関係部局へ回付される。つまり、口頭で、案件が発生することはめったにないことで、新規案件は予算が伴うため、実施時期や、担当部局が年度途中で発生することはない。そこで、新規案件については前年度に予算化することになる。

 

 知事の交代があったとしても、知事単独の方針や、考え方が行政に反映されるのは、早くても1年後であり、たとえ、斬新なアイディアであったとしても就任直後から実行できるわけではなく、影響するわけではない。知事が先頭に立って采配を振るえると考えるのは早計である。

 

 この意思決定方法はトップダウンに比べ、調整に時間がかかるが、トップの決裁が済めば即実行に入ることができる。また、組織全員へ責任が及ぶため、例えば、知事が単独で責任追及されることはない。別な言葉でいえば、責任分散システムといえる。知事が単独に責任追及されるのは、知事個人が私的に行った賄賂やシステムを無視した行為があったときだけである。



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