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同一労働・同一賃金その1

2016年01月29日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 このところ安倍首相が打ち出した一億総活躍社会の実現に向けてその具体的施策の一つとされている。女性の管理職を増やす施策とともに、方向性はだれしも異論はないところであるが、総論賛成、各論反対の様相を呈している。人件費は、企業活動において、必要経費に位置付けられ、景気の動向等により、企業収益が高まれば、その配分を巡った交渉が実施される。毎年春闘の場で決まることが多いが、企業側も利益のすべてを人件費に回すことはなく、設備投資等の経営規模の拡大や、負債部門の補填等の使途に使われる。

 

 同一労働・同一賃金は、雇用形態と密接にかかわる問題で、勤務時間によって、正規と非正規とに分かれているのは承知のとおりである。正規社員の雇用期間は、我が国の特徴ともいえる、定年に至るまでの期間としているところが多い。賃金の上昇は、職責によって格付けされ、かつては年功による勤続年数によって加算する方式によっていたが、成果主義・実績主義による人事評価に切り替わってきている。

 

 非正規社員においては、雇用期間や、勤務時間が短いのであるが、人件費の総額が一定であるならば、非正規労働者が増えると相対的に正規社員を減らすことによる調整が図られる。すぐには正規社員の首切りが始まるのではなく、定年退職した者の補充を行わなれれば、正規社員は減っていく。企業収益が増えていれば、正規、非正規とも底上げが行われる可能性は高くなる。企業収益が一定ならば、正規社員を中心に結成された労働組合が反対するであろう。

 

 欧米社会では、同一労働・同一賃金の問題は、さほどシリアスな問題となっていないのは、何か原因があるのだろうか、従来から、企業に採用された労働者の雇用形態は、労働組合に採用されたのちに、企業へ派遣する形態をとっているようで、この際、企業による賃金格差は、多少あったとしても、職種別の労働組合の規定が優先されるため、顕著な開きは発生しない。学歴による違いは顕著な場合が多く、管理者層へ一般の労働者が昇格することはない。年功が考慮されなければ、同一労働・同一賃金が可能となる。

 

 我が国では、企業が採用し、企業の経験が考慮されるため、管理職の昇進も可能であり、他方、同種の企業へ転籍すると新規採用に近い形で採用されるため、横断的な転職は不利となっている。未だに個別の企業別労働組合は、雇用の主たる採用者とはなっていない。同一労働はあくまでも単独または関連グループ企業内における問題であり、他の企業との共通性はないのである。我が国の雇用慣行はさほど変化していないといえる。



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