泥水の中からスーと伸びるハスは何故か神々しさを感じます。仏像の台座に使われるイメージは古人の純真さでしょうか。
寝苦しい夜が続き、漸く熱帯夜も峠にさしかかったようである。早めに就寝したが、寝付かれず、TVチャンネルを回すとNHKBSでETV特集を放映していた。「よみがえる超絶技巧 輪島塗・貝桶プロジェクトの2年」という標題であった。1時間の番組で、2年間の漆製品制作にまつわる番組であった。
石川県輪島市在住の漆芸家北村辰夫氏率いる50名の漆職人が繰り広げる、毛利家ゆかりの嫁入り道具を複製するというプロジェクトを撮影した内容であった。漆芸の世界は伝統工芸として生き残りをかけ、他の伝統産業同様、暗中模索の状態にある。今回取り上げられたテーマでは、一つの方向を示唆するものであったが、コンセプトとしては理解出来ても、継続性や、業界全体に影響を与えるわけではない。しかし、何らかの糸口となるであろうし、特異な分野とされるかも知れない。受注対象が限定され、莫大な費用を背景とする工芸は存続出来る可能性も否定出来ない。
制作対象は八角形の桶(現代風にいえば一種のキャリーバッグで、輿入れ時に使用されたと思われる小型タンスのようなものである)複製品として2台を海外の富豪である方の注文品である。北村氏によれば、江戸時代に絶頂を期した漆芸技法が、途絶え、その復興を試みること、制作集団は現在でも健在であるが、製作工程毎に分業化されている。漆工では木地師、塗り師、蒔絵師、沈金師等がいるが、分業化のため、自分の専門以外のそれぞれの作業についてはよく知らないとのことであった。
制作に当たって、古くは棟梁のもとで各職人が一堂に会し、仕事をしていたとのことであり、今回のプロジェクトではその形を踏襲する。現代の進歩した技術を取り入れることで、ただ単に、複製品を古くからの技法をそのまま再現するのではなく、新たな視点に立った技法にしていく。特に、伝統技法では蒔絵と沈金とは別の仕上げ方法であり、一つになることはなかったが、今回、合体させた新たな挑戦を行う等のことであった。
北村氏の工房での職人集団が、仕事を通じて、双方向の技術を開示することで、今まで見えなかった世界が繰り広げられたこと、蒔絵後に沈金刀で、仕上げ面に刃を入れる沈金師の挑戦等よく表現されたTV内容であった。完成後の引き渡し時の感動的な場面もあり、漆芸世界の奥深さは十分に視聴者に伝わったことであろう。
再放映が8月29日NHKBSで午前0時~1時まで予定されている。