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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

いろんな映画ア・ラ・カルト

2015-06-14 09:57:54 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.835~841



○エドワード・ズウィック監督の「きのうの夜は」をみて

 夫婦喧嘩は犬も食わないというは、若い恋人たちの好いた惚れた別れたは猫だって喰わないはずだ。
 
 恋の誕生と変遷と死滅、そしてその再生を描く映画はこれまで腐るほど作られてきたが、本作のように、そのような映画が自動的に多くの観客に歓迎されるとアプリオリに信じ込んでいる無邪気な映画はそれほど多くはないだろう。


○バリー・ソネンフェルド監督の「ワイルド・ワイルド・ウエスト」をみて

 ウィル・スミスとケヴィン・クラインが南北戦争直後のアメリカで大活躍するズッコケ西部劇。巨大メカや特撮なども登場してはしゃぐが最初から最後まで詰らない映画。ケネス・ブラナーもよくもこんなくだらない映画に出たもんだ。


○アイヴァン・ライトマン監督の「Gガール破壊的な彼女」をみて

 スーパーマンならぬスーパーウーマン(ユマ・サーマン)が大活躍。超能力を持ちながらも普通の男を愛してしまったGガールが恋敵に猛烈な嫉妬を燃やして対抗するのが面白い。セックスなんかももちろん女性上位でファックするたんびにベッドが上へ上へと動いて部屋の壁を突き破って隣の家に突入したりするから恐ろしい。戯れにGガールと恋はすまじという教訓が得られる変態的ハリウッド映画なり。

○マイケル・アプテッド監督の「アガサ 愛の失踪事件」をみて

1926年12月に探偵小説の名人アガサ・クリスティが11日間の謎の失踪を遂げた事件を素材に、おおいに虚実皮膜の空想を膨らませたミステリー映画で、主役のヴァネッサ・レッドグレーヴとダスティン・ホフマンの芸達者な演技を楽しむことができる。

美術、衣装、景色が美しく、悠揚せまらぬ物語の進行も好ましいが、2人がダンスを踊ったり、キスをするシーンでは、あまりに背の高さが違い過ぎるのが気になるのである。


○ジェフ・マーフィー監督の「暴走特急」をみて

「沈黙の戦艦」の続編として1995年に製作されたハリウッド映画で、はじめは大人しいスティーヴン・セガールがだんだん良く鳴る法華の太鼓で後半は戦艦ならぬ大陸横断鉄道を舞台に大活躍する。

 前作同様敵の正体と敵対の必然性が不当要領で大いに興味を削がれるが、まあこれが大活劇映画の常なので仕方ないだろう。ジャンジャン。


○ガイ・ハミルトン監督の「007ダイアモンドは永遠に」をみて

 ショーン・コネリーのボンドも、ジル・セント・ジョンのボンドガールもなんだか全体的に年を喰っていて、でもそれなりにぐあんばって大活躍をするのだが、、えらく疲れているようで、画面も暗い影がかかているようだし、そもそもいったいぜんたいこれがどういう事件なのかもよく分からないのは、私がひどく人世に疲れているからなんだろう。


○キャメロン・クロウ監督の「幸せのキセキ」をみて

 どうして「我われは動物園を買った」という原題にしないでこんな白痴的邦題にするのか訳が分からない。しかしここで愛妻に突然死なれて2人の子供ともども茫然自失する主人公マット・デイモンはこれまでの作品のなかで一番良かった。ラストで愛妻都の最初の出会いが再現されるのも「映画的」で好ましい。



   台湾リスの仔を滑川に蹴飛ばせば得足りや応と青大将が呑みこむ 蝶人


鎌倉時代のテロルの現場を歩く その2 畠山重忠・重保追討事件

2015-06-13 09:52:35 | Weblog



茫洋物見遊山記第180 回&鎌倉ちょっと不思議な物語第342回

 畠山重忠は、源頼朝の挙兵に際してはじめは敵対するが、のちに臣従して武勇の誉れ高く、その清廉潔白な人柄は「東国武士の鑑」と称された。

 政略結婚させられた木曽義仲の息子を暗殺されたときに大病を患った頼朝と政子の長女大姫を、自宅に引き取って療養させたのも畠山重忠で、そのことは大倉幕府の南御門、現在鶴岡八幡宮の東側の守衛口の前に建つ石碑にも記されている。

 重忠はかねてから北条時政の後妻牧の方の女婿平賀朝雅と軍事支配権をめぐって対立していたが、元久元年1204年、重忠の嫡男重保は、たまたま酒席で朝雅と口論になり、これを根に持った朝雅と牧の方が時政に「畠山親子に謀反の疑いあり」と讒言した。

 年下の後妻を溺愛する時政がこれを真に受けて、北条義時を総大将とする討伐軍が重忠を武蔵国二俣川、重保を鎌倉で謀殺した。畠山親子にすれば文字通り寝耳に水で、北条一族は安倍内閣と同様こういう卑劣な暴挙を行ったのである。

 この合戦では、鎌倉十橋のひとつ琵琶橋付近で激しい市街戦が展開されたが、明治二十五年、江ノ電和田塚駅の傍らにこの合戦のときのものと思われる大量の人骨が出て来たので、この地に「和田一族戦没地」の碑が建てられた。

 また現在鎌倉第一小学校の前には立派な宝篋印塔が立っているが、これはアホバカ北条のいいなりになっておっとり刀で馳せ参じた三浦義村によって武運つたなく討ち取られた畠山重保の墓と伝えられる。

 畠山一族の若武者たちは北条・三浦軍と戦いながら由比ヶ浜辺までじりじりと南下し、その多くがこの海岸で恨みを呑んで戦死したが、わが敬愛する歴史学者故小丸俊雄氏の名著「鎌倉物語」を紐解くと、氏が砂浜を散策中に、彼らの大臼歯と思われる美しい歯が陽光にキラリと輝く挿話が紹介されていて涙と感動を誘う。

 若く妖艶な後妻の色香に溺れて、何の罪科もない立派な御家人を文字通りだまし討ちにした時政は、これによって年来の野望であった武蔵国と侍所司の最高権力者である別当の地位を略奪したのであったが、その後政子と義時から三大将軍実朝に謀反を企てたとして謀られ失脚するのである。

 以上はNPO法人鎌倉ガイド協会の資料をもとに一部小生が改変しつつ記述いたしました。


   由比ヶ浜の砂の下に昏々と眠り続ける若武者の歯よ 蝶人

鎌倉時代のテロルの現場を歩く その1 比企能員謀殺事件

2015-06-12 11:24:47 | Weblog



茫洋物見遊山記第179 回&鎌倉ちょっと不思議な物語第341回



 比企能員(よしかず)は源頼朝の乳母比企尼の養子で、その縁で頼朝の信任が厚かった。
頼朝の嫡男頼家が生まれると、彼の妻がその乳母、能員も乳母父となり、あまつさえ能員の娘若狭局は、頼家の側室となって嫡男一幡を産んだので、大きな権力をもつようになった。

 これに大きな危機感を懐いたのは頼家の母北条政子とその父時政である。時政は、建仁3年1203年9月2日、能員を彼の名越の邸宅に仏事にことよせて招き、いきなり謀殺してしまった。

 時政と示し合わせた尼将軍政子は、これは謀反であると称して比企氏討伐の命を下し、北条義時、泰時以下多くの軍勢が比企氏の館を取り囲んで日火を放ったので、頼家の妻若狭局はとその子一幡も死んでしまった。

 その後頼家は時政を討とうとしたのだが、和田義盛の裏切りによって成功せず、母政子によって出家させられて伊豆の修善寺に送られ、時政の刺客によって暗殺されてしまった。

 比企氏を滅ぼした北条氏は頼朝の次男実朝を3代将軍に就け、時政がその執権となったが、これら一連のクーデターほど北条一族の悪辣非道を雄弁に物語るものはないだろう。

 比企一族の屋敷跡には能員の末子比企能本によってここ比企が谷に日蓮宗長興山妙本寺が建てられ、祖師堂の右手にある四基の五輪塔は一族の供養塔であり、手水舎の脇の五輪塔は6歳で死んだ一幡の袖を祀る「一幡の袖塚」である。

 乱の最中、若狭局は家宝を抱えて井戸に飛び込み自害したと伝えられるが、比企が谷の一角には、その57年後の文応元年1260年、恨みを遺して死んだ若狭局の霊が執権北条政村の娘にとり憑き、娘が蛇のような狂態をみせるようになったので、若狭局を蛇苦止明神として祀る政村が建てた蛇苦止堂がある。

 若狭局はこの御堂の近くにある井戸に飛び込んだのではないだろうか?

 以上はNPO法人鎌倉ガイド協会の資料をもとに一部小生が改変しつつ記述いたしました。


   鎌倉の御成通りに太鼓屋できたドデスカデンドデスカデンデン 蝶人

ソニーの「合唱曲ボックス」GROSSE CHORMUSIK30枚組CDを聴いて

2015-06-11 11:38:44 | Weblog


音楽千夜一夜第341 回


 最近安倍内閣の素晴らしい経済政策によって異常なまでのドル高円安が続いており、輸入CDの価格はまたしても急騰しているので、私のような貧乏人はともかく超廉価盤の中からいいものを厳選するほかありません。

 さてこの組物ですが、「バロックから現代に至る声楽作品から規模の大きな傑作を中心に選曲し、高水準な演奏&録音でまとめた便利なお買得ボックス。モンテヴェルディの『聖母マリアの夕べの祈り』からアルヴォ・ペルトの『スターバト・マーテル』まで、約400年のスパンから選ばれた聴きごたえある作品群を、優れた演奏によって楽しむことができる」という宣伝文句通りの30枚でした。

 内容的には、私の嫌いなアーノンクールの「ブラームス:ドイツ・レクィエム(2007年)」、「バッハ:クリスマス・オラトリオ(2006年)」、「ヘンデル:メサイア(2004年)」なども含まれていましたが、なんせ1枚159円という値段ですから、あんまり文句を言うとバチが当たります。

 ウィルソンの「フックス:皇帝レクィエム(2010年)」などを初めて耳にしたのも収穫のひとつでありました。

 アバド&ベルリンフィルの「モーツアルトのハ短調ミサ曲」、ヴァイル&ターフェルムジークの「同レクイエム」、ヘンゲルブロック&フライブルグの「バッハロ短調ミサ曲」などは演奏も録音も優れていますが、もっとも印象に残ったのはバーンスタイン&NYフィルによるプーランクの「グロリア」やストラビンスキーの「詩篇交響曲」などの合唱曲を入れた29枚目のアルバムでした。


    安倍晋三マツコ・デラックス伊集院光猪八戒豚豚男は皆嫌い 蝶人

長田 弘著「奇跡」を読んで

2015-06-10 14:28:53 | Weblog


照る日曇る日第793回


 先日亡くなった詩人の最後の詩集を謹んで拝読いたしました。

「奇跡」というタイトルについて、著者は「日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたしにとっての、取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ」と「あとがき」の中で書いています。

「深い緒観をもって、日々を丁寧に生きること。
 小さな神々が宿っているのだ、
人の記憶や習慣やことばのなかには。」(『ときどきハイネのことばを思いだす』)


 私たちは、深い緒観をもって、日々を丁寧に生きなければなるまい。


 また「書くとはじぶんに呼びかける声、じぶんを呼びとめる声を書き留めて、言葉にするということである」とも書かれていますが、誠実に日々を抱きしめながら生き続けてきた詩人ならではの発言であると感じ入りました。

 「私たちは、多くの嘘いつわりを、
 真実のように話すことができます。
 けれども、私たちは、その気になれば、
 真実を語ることもできるのです。」(『夏の午後、言葉について』)

 私たちは、真実を語らなければなるまい。




  ぼんやりとテレビ見てれば次々に吐き気催す奴らが出てくる 蝶人

井上ひさし著「井上ひさし短編中編小説集成第8巻」を読んで

2015-06-09 11:10:58 | Weblog


照る日曇る日第792回


 本巻では「月なきみそらの天坊一座」「黄色い鼠」「喜劇役者たち」の3冊を収めているが、なかでは真ん中の「黄色い鼠」が面白い。

 1976年に半年ほど豪州に滞在していた著者の体験と取材から生まれた作品で、そこには第2次大戦中の日本人捕虜収容所における脱走事件を伏線に、白人支配者と黄色人捕虜の奇妙な関係、現地先住民アポリジナルの古い歴史と奥深い文明史的知恵、豪州の砂漠の驚異的な大自然などが、考え抜かれた巧みなプロットとともに整然と展開され、読む者の心をとらえて離さない。

 とりわけ印象的なのはアポリジナルの老人で、彼が脱走中の日本人に夏眠中の「水持蛙」の水を飲んだり、甘い蜜を持つ蟻を食べて砂漠の飢えを癒すすべを伝授してくれるのである。

 しかも灼熱の大砂漠を突如集中豪雨が襲い、1週間後には緑の大地が誕生すると聞けば、一度そんな夢のような光景を眺めてみたいと思わずにはいられない。





この程度のブラームスを聴いてブラボーと叫んでるかのチェリビダッケ読響の4番を知らずに 蝶人

されど、なかなか見ごたえのある映画もあったずら。

2015-06-08 13:52:42 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.827~834



○トラン・アン・ユン監督の「青いパパイアの香り」をみて

 内憂外患、嫌なことばかりの毎日であるがたまにこういう映画に出会うと心が洗われるような思いがする。1950年代フランスの植民地であったベトナムのサイゴンを舞台にしたいわゆるひとつのシンデレラ物語で、最後に少女は王子様に出会って仕合わせになる。

男尊女卑があからさまであるとか、当時の植民地の過酷さ、貧富の差が対象化されていないとかいくらでも揚げ足取りをする連中がいるだろうけれど、この映画は自然と人世が一体になった小さな懐かしい世界を描いて、なにものにも替えがたい清らかな浄福を与えてくれるのである。

 ヒロインの女性、特にその少女時代の役者の笑顔が素晴らしい。


○アレクサンダー・ペイン監督の「ファミリー・ツリー」をみて

 原題は「子孫」。珍しくも現代のハワイを舞台に繰り広げられる家族ドラマであるが、この映画の主人公はなんとかつての王様ハメハメハの末裔であって遺産としてのこされた大自然をどのように処理するかで頭を痛めている。

冒頭でモーターボートで颯爽と登場する婦人が突然の事故で死亡する悲劇からはじまるこの映画だが、115分間にわたって繰り広げられるさまざま深刻な葛藤を見せつけられた観客はラストで夫のジョージ・クルーニーとその2人の娘がソファーにならんで座り、アイスクリームを舐めながらテレビで放映されている南極のペンギンのドキュメンタリー番組を眺めいるショットがいつまでも続いてほしいと願わずにはいられないだろう。

ハワイの陰影に富む自然を見事にとらえたいまはなき富士フィルの映像が美しい。


○リドリー・スコット監督の「ブラックホーク・ダウン」をみて


 泥沼のソマリア紛争に介入して10名の海兵隊員を喪ったアメリカ軍の内情を史実に基づいてリアルに描く。独裁者アイディード将軍の側近を誘拐するための急襲作戦が失敗し、最新鋭武装ヘリのブラックホークが2台も撃墜されてしまう市街戦をリドリー・スコットは迫真的に描きだし、戦争の空しさを克明にあぶりだしていく。

 米国の大義に殉じる安倍政権が目指しているのは、集団的自衛権を発動してアフリカの僻地にまで自衛隊を派遣し、神聖なる同盟軍の訳のわからぬ誓いと絆のために邦人の夥しい血を流さしめることだ。


○バズ・クリーク監督の「戦うパンチョ・ビラ」をみて

 題名からしてなんとなくつまらん映画だろうと思っていたのだが、案に相違してヒジョウに面白かったのは恐らくスタンリー・キューブリックが脚本を書いているからだろう。

 アメリカの武器商人がどうとち狂ったのか反米独立闘争の指導者ユルブリンナー(パンチョ・ビラ)とチャールズ・ブロンソンの策動に巻き込まれてゆき、引退してアメリカにひきあげてからも彼らの窮地をみかねてそこはそれ男の侠気というやつで飛行機に乗り込んでいうのだったあ。


○スティーヴン・スピルバーグ監督の「E.T.」をみて

 1982年に公開されたものを20年後に改定された新バージョンで楽しむ。まあディズニーの世界といえばそうなのだが、宇宙人との楽しい交流、大空を自転車で駈けるシーンには思わず心が躍ってしまう。たまにはこういう映画もみたいものである。


○ゲイリー・ウィニック監督の「ジュリエットからの手紙」をみて

 原題は「ジュリエットへの手紙」なのに勝手に変えていることやヒロインの顔がはじめ気に喰わなかったので、見るのをよそうかと迷ったが、舞台がNYからイタリアのヴェローナに移ってから急に面白くなり、ヴァネッサ・レッドグレーヴが登場するに及んで最高の盛り上がりとなった。

 ロミオとジュリエットのご当地を舞台に老いらくの恋と若者の恋を同時並行して描くなどの演出も見事。2011年に49歳で亡くなったゲイリー・ウイニックがこの世に遺した素敵な贈りものです。


○エリク・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督の「最強のふたり」をみて

 原題は「アンタッチャブル」。インドの不可触選民を思わせる最貧困層の人々の存在を意識さえようとするのが製作者の狙いだろう。

 車椅子の上の身動きできない富豪の白人障がい者とそのケアをする貧乏な黒人との強い絆を称える人世賛歌の話で、これは実話らしいが、貧富の格差を超えた友愛が存在する、といいたいのであろうか。

 白人の障がい者が社会福祉のケアの専門家ではなく、障がいと障がい者のことなど全然知らないで「障がい者を普通に扱おうとする」能天気な男を選んだことが結果的にはぴったしかんかんであった。というのだが、これは現場的には必ずしも正解とはいえまい。

 しかし映画では主役の2人が見事にマッチしていて、ラストは大いに泣かせます。


○オーソン・ウエルズ監督・主演の「市民ケーン」をみて

 薔薇のつぼみの謎ときをめぐって市民ケーンの生涯が時系列で語られ、最後に彼の不幸な生い立ちとそのこよなき遊び道具に収斂させる話法は見事。トップカットとラストカットをあえて同一にして、その古典的な様式を強調している。


   遥々と鎌倉にまでやって来て紫陽花を見物する人人人 蝶人

残念だった映画いろいろ

2015-06-07 10:21:17 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.820~826



○河野寿一監督「独眼竜正宗」をみて

 1959年製作の東映映画でおなじみ中村錦之助が汗臭く熱演。目に矢を射られて血だらけになるシーンが痛ましいが、史実から完全に浮き上がった動画紙芝居を見せられているようだ。

○F.ゲイリー・グレイ監督の「ミニミニ大作戦」をみて

 原題は「Italian Job」なのだが、なんだこのタイトルは。呆れ果ててものもいえない。

 この映画のゆいいつの取り柄はドナルド・サザーランドが出演していることだが、かつて「カサノバ」や「普通の人々」などの名作を彩った子の名優も科ののためとはいえ落ちたものだ。


○パーシー・アドラン監督の「バクダッド・カフェ」をみて

 1987年の西ドイツ映画を2008年製作のディレクターズ・カット版で再見したが、初見ほどの驚きはまるでなかった。もしかするとまるで編集が変えられてしまったのかもしれない。

 主人公のヤスミンおばさん(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)がマジックをマスターして、砂漠の中のバクダッド・カフェで女主人(CCH・パウンダー)と歌って踊るミュージカルを繰り広げるシーンでは、あまりのくだらなさで見るのをやめようかと思ったほどだった。

 結局相変わらずいいなと思えたのは、ジャック・パランスの笑顔だけだった。


○ダグ・リーマン監督の「Mr.&Mrs.スミス」をみて

 殺しのプロフェッショナルのブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジェリーナ夫婦が、敵対する組織に属して殺し合ったり和解したりする2005年製作の史上最低のあほばか映画。

 こういう映画をいっちょまえの喜劇のつもりで企画するやつも、脚本を書くやつも、監督するやつも、金儲けのために出演するやつもどうしようもない阿呆だとおもう。観客を舐めるな。


○アン・リー監督の「グリーン・デスティニー」をみて

「臥虎藏龍」( Crouching Tiger, Hidden Dragon )というなにやらもっともらしい原題がついた2000年製作の米中香港台湾合作カンフーゲバルト映画なり。有名なチョウ・ユンファ、チャン・ツィイーなどが出演してチャンチャンバラバラを繰り広げるが、これほど愚劣な映画も珍しいだろう。こんなアホバカ映画がアカデミー賞をもらったそうだが、この一事をもっても米アカデミー賞の愚かさがうかがいしれる。


○アンソニー・ミンゲラ監督の「イングリッシュ・ペイシェント」をみて

 灼熱の砂漠で男と女の絶対的愛を絶叫して果てる1996年の米映画なり。

 「ロミオとジュリエット」なんかもそうだが、その絶対性の内部は、狂気か病気そのものだから、たとえ文学にはなっても映画にはならないし、なったとしてもいわゆるひとつの「ああそうですか映画」にしかならない。

 この映画のような。


○トニー・スコット監督の「サブウェイ123激突」をみて

 NYの地下鉄を乗っ取り、乗客を人質にして身代金を要求するジョン・トラボルタを、地下鉄司令部のデンゼル・ワシントンが何度も窮地に追い詰められながらめでたくやっつけてしまうサスペンス物なり。

 悪玉のトラボルタが身代金よりもこの事件でパニックを起こして株を暴落させ、反騰するであろう金相場での大儲けを企んでいたり、善玉ワシントンが賄賂を貰った経歴の持主であったりちょっと捻りをきかせているが、見せ所は地下鉄大爆走ということか。

 タイトルの出し方に妙にこだわっているが、あれがかっこいいとでも思っているのだろうか。CM出の映画監督はそういう細部で馬脚を現すことが多い。


 いちどみていいとおもってまたみればあんまりおもしろくもないのはどうして 蝶人




車谷長吉著「赤目四十八滝心中未遂」を読んで

2015-06-06 09:40:17 | Weblog


照る日曇る日第791回


 私と歳の近いこの人がコンビニから帰ってすぐに誤嚥で急死したという報道はショックだった。私も最近誤嚥することが多くなっていたからである。

 そこで故人の冥福を祈りつつ代表作を再読したのだが、命を削り心臓から流れ出す血を原稿用紙に擦り付けるようにして書かれた物語に胸打たれずにはいられなかった。

 尼崎の安下宿につどうヤクザ、刺青師、元売春婦の遣り手婆、正体不明のいかがわしい男と女たちと孤独な子供の黒い影が点滅する陰画を舞台に、明けても暮れても腐肉に串を刺して日を送る迎える主人公だが、世捨て人のくせにハードボイルドのヒーローみたいでなんかかっこいい。

 その濃密な空間を支配する異様な緊張と不安が、読む者をぐんぐん遠い世界に連れていくのだが、そのままで浮沈すればよいのにあろうことか主人公はそれが「わたくし小説」の主人公であることを忘れたかのように、かの“宿命の女”とのいきずりの情事に巻き込まれ、それが近松の曽根崎心中さながらの赤目四十八滝情死行へともつれてゆく。

 このあたりは著者本来の小説世界からの思いがけない大きな逸脱であるが、物語はぐんぐん膨張して凄まじい勢いで驀進し、突然のカタストロフを迎え撃つようにして終わる。

 これは恐らく著者にとっても想定外の展開ではなかったかと思うのだが、私たちの心の奥底では、消え去ったアルベルチーヌ、イームンヒョンの赤い唇がいつまでも闇に揺曳しているのである。


  失せ物いずこ早田雄二さんが撮ってくれたわが20代の肖像写真 蝶人

内田樹・白井聡対談「日本戦後史論」を読んで

2015-06-05 09:28:38 | Weblog


照る日曇る日第790回 



 敗戦の落とし前をきちんとつけられなかったのは我が国だけかと思っていたが、そうでもないらしい。

 内田氏によれば、意外なことにフランスは第二次大戦の敗戦国らしい。パリを解放したのは正当なフランス政府軍ではなく、ヴィシー政権から死刑宣告を受けていたドゴールの一交戦団体で、第4共和政の継承者であるヴィシー政権は、インドシナで日本軍と植民地共同統治協定を結び、国内のユダヤ人をアウシュビッツに送り込んでいたそうだ。

 またイタリアは、ムッソリーニ亡きあと密かに連合国と講和条約を結び、ドイツの傀儡政権であるイタリア社会共和国を武力で打倒したから、なんと戦勝国として戦後を迎えたそうだ。

 ドイツはファシズムをほぼ全国民が熱烈に支持したにもかかわらず、ヒトラーなどの指導者がみな死刑になったので、罪科はみな彼らになすりつけてしまった。今は戦後民主主義の優等生風だが、頼みの経済が左前になれば、右翼がうようよ輩出するのではないだろうか。

 日本は幸か不幸か、占領軍の手で一握りの戦争責任者のみが断罪されたが、「大元帥」の大天皇は無罪放免されたし、旧指導層の生き残りはもとより、肝心の民草だって本気で自分たちが悪いとは思っていない。ようだ。

 民草の多くは、被害者意識はあっても外地での加害者意識はほとんどないか、都合よく忘れてしまったらしいので、現政府の平成新富国強兵政策が完熟したら、中国なんかとの戦争ごっこに突入して、またしても泣きっ面にハチをみるだろうよ。



「白川以北一山百文」東北の反薩長のルサンチマン大東亜戦争を勃発させたあ 蝶人

西暦2015年五月の歌~「これでも詩かよ」第148番

2015-06-04 14:15:26 | Weblog


ある晴れた日に 第312回

うちの耕君が笑ってる。
『風のガーデン』の黒木メイサを見ながら、笑ってる。
赤ちゃんみたいな顔して、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー

うちの奥さんが、笑ってる。
『踊る!さんま御殿!!』を見ながら、笑ってる。
少女のような顔して、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー

おやおや、死んだはずのムクちゃんが、笑ってる。
冥途の木陰で、笑ってる。
WANG WANGと、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー

某国の悪賢い宰相も、笑ってる。
オラッチは、なんでも出来るぞと、笑ってる。
爺チャンより、偉くなるぞと、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー

見渡せば、日本全国オオイヌフグリが、笑ってる。 
庭のスナップエンドウが、笑ってる。  
縁の下ではSTAP細胞も、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー

見上げれば、コイの親子が、笑ってる。
ツバメの親子が、笑ってる。
みどりのそよ風が、笑ってる。
あ、ラッタラッタラー


  シンゾウが「どこでもドア」を開いたらどこまでも切れ目のない戦場だった 蝶人


三十年はひと昔~蝶人五風十雨録第2回「五月三十日」の巻

2015-06-03 13:03:57 | Weblog


バガテル-そんな私のここだけの話op.200



1981年5月30日
宮澤清六氏より頂いた賢治の「貝の火」を読む。

1982年5月30日
藤沢にて「第9回神奈川県県域自閉症連続講演会」を開催。聴衆約200名。講師は東大の太田昌孝先生。併せて県域親の会総会も開催。

1983年5月30日 快晴
サミット閉幕。次男が燕の巣を壊す。壊された人が怒り狂って妻、但任の先生平謝り。友人に軽々に同調してしまう弱さが問題なり。

1984年5月30日 曇
婦人服アデンダのテレビCM「建設会社編」を、六本木スタジオAbiにて撮影。帰宅して深夜まで「宣伝会議」の生徒の課題添削をする。

1985年5月30日 晴
池袋サンシャインで「チェーンストアフェア85」をみる。この頃、三半規管がおかしい。地軸がずれる。

1986年5月30日 雨
新橋TCC試写室にて「モロン」みる。SFお笑いカルトの怪作。半蔵門ぴあにて「インディアン・キャバレー」をみる。インドの女流監督によるドキュメンタリー映画なり。

1987年5月30日 曇
会社を休んで、次男の授業参観。国語の時間で高見順の「われは草なり」の詩鑑賞。意欲的な教師だが、子供には退屈だろう。

1988年5月30日 晴
ユミリオ・エステベスの「WISHDOM」、エリック・ロメールの「友だちの恋人」をみる。後者はありそうな話をありそうに描き出す才人ロメールの気取りのない佳作なり。

1989年5月30日 にわか雨
3日続けてにわか雨。早くも夏か。デパートは消費税のあおりで売上落ち込む。博報堂の営業担当がはじめて来社。

1990年5月30日
「フンクイの少年」をみる。侯孝賢の初期の自伝的映画なり。夜、池田ノブオ氏に御馳走になる。

1991年5月30日木曜 晴
会社休む。長崎雲仙岳で溶岩流出の大災害。ソクラテス最期の日の言動を「弁明」「クリトーン」などで読む。

1992年5月30日土曜 曇時々雨
会社を休む。長男に付き添い、彼が材木座の散髪屋で髪を切られるのを見守る。

1993年5月30日日曜 降ったり曇ったり
「杜詩」とシューベルトのCD2枚を買う。雨上がりにムクと太刀洗まで散歩。妻の父母来たりて、共に「鎌倉古寺地図」をみる。

1994年5月30日月曜 雨後晴
久しぶりに会社へ行く。部下の女性はみな年収が上がっているのに、俺は去年と同じだ。妻は長男を高尾山の麓の本屋まで連れて行ったそうだ。

1995年5月30日火曜 曇
大阪出張の足を伸ばして奈良国立博物館の「日本仏教美術名宝展」をみる。空海、最澄、聖徳太子の真筆、平家写経など素晴らしき眼福なりき。されど大仏、三月堂には失望す。

1996年5月30日木曜 曇
会社休みて静養す。長男は今日から「ゆりの木ホーム」に短期入所。ムクと太刀洗を散歩する。

1997年5月30日金曜 晴
会社に電話ありて、次男のカメラがマニュアルにできるか問い合わせあり。次男、夜帰宅す。

1998年5月30日土曜 陰
失業率4.1%と過去最高。米国並みなり。パキスタンが再度核実験を行う。夜妹より夫婦間のことで電話あり。

1999年5月30日日曜 快晴
素晴らしき5月の好天なり。妻と長男は炎天下知的障がい者のスポーツ大会「ゆうあいピック」に出席したので、赤く日焼けして帰宅。ムクのダニを50匹ほど取って罎に入れたり。

2000年5月30日 火曜 晴暑し
午前、六本木篠山事務所の隣にあるエース社渡辺氏を訪ねる。webサイトの仕事をしているらし。午後集英社「メンズノンノ」編集長石井さんを訪問。「ロードショー」の田中洋子編集長を紹介してもらった。

2001年5月30日 水曜 雨時々曇
ムクと散歩。ジャコウアゲハ、エノキにテングチョウ見ゆ。昨日飛んでいた4匹のアオスジアゲハはもういない。講談社、小学館、文芸社より連絡あり。

2002年5月30日 木曜 晴
駅前の早見美術学園でメンズモードの講義。妻と海岸近くのレストランで仏蘭西料理を食す。気の早い人がもう海で泳いでいた。

2003年5月30日 金曜 晴
文化学院で講義、第8回。商業施設論の途中まで。新橋森第一ビルに鴨澤さんを訪ねる。「夕映えの道」をみる。

2004年5月30日 日曜 晴暑し
3人で熊野神社へ行く。夏日で蒸し暑い。文芸社リライトやる。

2005年5月30日 月曜 雨
文化学院講義。EU加盟国25なのに23しか列挙しなかったと学生に指摘され、焦る。ルーマニアとブルガリアが抜けていた。元貴乃花の二子山親方死す。55歳なり。

2006年5月30日 火曜 晴れたり曇ったり
夕方工芸大で映像科の女子学生が就活相談で駈けこんできたが、責任者の橋本氏にバトンタッチして帰宅。今村昌平死す。79歳。

2007年5月30日 水曜 雨
南長崎の画廊に次男のグループ展をみにゆく。作品は1枚8万5千円なので、買ってやってもいいのだが。

2008年5月30日 金曜 曇
中野坂上工芸大、若干名。疲れる。

2009年5月30日 土曜 曇時々雨
妻と一緒にNHK共同アンテナの積立金払い戻しについてのチラシを各戸に配り歩く。なんでも1軒あたり3万円還ってくるとか。

2010年5月30日 日曜 曇
民主党連立内閣から社民党が離脱。普天間基地移転問題の署名を拒否した福島大臣を罷免した結果なり。

2011年5月30日 月曜 雨後曇
文化講義、専門学校と女子大で授業2連発。

2012年5月30日 水曜 曇後晴
3年ぶりの箱根。午前中に湿性花園をみて午後4時に帰宅す。

2013年5月30日 木曜 曇時々小雨
妻と大和へ行きニトリで長男のベッド、無印良品で机と椅子を買い、6月9日に彼が入居するホームに納品してもらうことにした。

2014年5月30日 金曜 晴
文芸社リライトの依頼あれど、その料金異常に安し。

2015年5月30日 土曜 快晴
太刀洗にて無数のルリシジミをみる。この蝶は毎年特定の日に大量に発生するのである。例年より早くサラシナショウマの白い花がたくさん咲いていた。小笠原沖でM8.5。 この頃地震多し。遠からず列島マグマ大爆発するらむ。夜、妻と森戸橋に行きてホタルみる。

       戯れに死者の名で呼ぶ蛍かな 蝶人

すべての言葉は通り過ぎてゆく 第23回

2015-06-02 10:17:13 | Weblog


西暦2015年皐月蝶人狂言畸語輯&バガテル-そんな私のここだけの話op.200



繰り返しましょう。「国際的対決主義」にもとづく積極的戦争主義」こそは、日本の将来を導く旗印となります。

私たちの同盟を「戦争の同盟」と呼びましょう。「戦争の同盟」一緒でならきっとできます。ありがとうございました。

憲法が現実から乖離したのではなく、現実が憲法から乖離していったのだ。憲法前文と第9条の思想がいまもなお正しいとするならば、乖離していった現実を70年前に引き戻すほかはない。5/3

題名と書き出しと最後の文章が出来ていれば、その短編は完成したも同然である。菊池寛
5/4

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書かれている憲法前文が信頼せよという「諸国民の公正と信義」にはもはや全く期待できないという人もいるが、だからといって中国や北朝鮮、韓国、ロシアには「公正と信義」を重んずる精神が皆無であるとは誰にも断言できないだろう。5/6

憲法前文と9条には、全人類がめざすべき夢と希望と理想が語られているので、人世に夢と希望と理想の持ち合わせのない人々は、それを「非現実的なユートピア論」などと言って忌避する。ユートピアを志向して何が悪いのか。5/6

朝大江健三郎が起きてくると次男桜麻の書いた作文らしいものがテーブルにあった。大江はいつも自分の文章を直しているので、それを添削して感想まで書いた。あとで妻が怒っていて、オーチャンが泣きながら湯川秀樹の文をもう一遍描き直していたという。小谷野敦「江藤淳と大江健三郎」5/6

小谷野敦「江藤淳と大江健三郎」によれば、1983年4月頃、江藤淳は「市職員が午前11時半には昼食を取っている」という噂を確かめるために鎌倉市役所を訪れ、各課に店屋物がいつ届けられているかを調べ、その観察結果を日経に書いたそうだ。5/6

相撲の実況放送が「前褌を早く取りたい出羽の花」と言った。大江光は「アナウンサーが俳句を申しました」と言ったところ、父健三郎が「それは季語がないから川柳だよ」と教えたので、光は少し考えて「出羽の花の花はいかがでしょうか」と言った。小谷野敦「江藤淳と大江健三郎」5/6

新宿の東郷青児美術館にあるゴッホの「ひまわり」はいつ見ても詰らない絵なので、もしかすると偽物ではないかとすら密かに疑っていたのだが、これはどうも完成品の模写らしい。どうりで輝かしい生命力が欠如しているわけだ。5/8

ドミンゴはアンナ・ネトレプコを「カラスの再来」と絶賛しているようだが、そうは思えない。確かに高音の伸びは透明だが、誰のどの歌を歌っても同じ声、同じ歌い方。まるで金太郎飴のようで7色の喉を持つカラスやひばりには到底及ばない。5/9

ネトレプコは言葉と一体のものである音符を垂直方向にがっつり抑えることなく、前へ前へと上滑りに水平移動する。同じマリアでも、カラスはこういう歌い方は間違ってもしなかった。5/9

ジェームズ・レヴァインが棒を振ると、どうしてこんなにヴェルディの音楽が生き生きと輝くのだろう。まるで大船に乗って世界中を遊覧しているようだ。5/9

「積極的平和主義」とは「積極的戦争主義」、「平和法案」は「戦争法案」。この男が「平和」といったら「戦争」ということだ。どうして切れ目のない安保法制シームレス・ストッキングごときで民草の生命と安全を守ることができようか。5/17

沖縄然り、満洲然り、樺太然り、先の大戦から学んだ最大の教訓とは、「国は国民の生命と安全を微塵も守らない」ということだった。安倍は祖父と同じ過ちをおかそうとしている。5/17

「僕が今朝ね、今朝僕がね、僕が今朝ね」、何か所も何か所もそういう風な繰り返しを重ねながら、モーツアルトのピアノソナタ第15番は進んでいく。吉田秀和

「クラリネット五重奏曲」の第2楽章なんかのゆっくりしたところ。これはもうこのまま音がずっと鳴っていて、しかもなににも動かなくていいんじゃないかしらっていう気さえします。吉田秀和

本当にありふれた言葉で、僕は使うのがちょっと嫌だけど、「珠玉のような名品」といったらまさにこのアヴェ・ヴェルム・コルプスのようなものをいうのではないでしょうか。その音楽の純粋な美しさをこんなに出した曲は少ない。吉田秀和

作者は俳優に「世界」を与え、俳優はその「世界」を生きる。演じるのではなく、生きる。それに観客が立ち会う。これが演劇のイロハでありⅩYZである。井上ひさし「代役」

俳優と演出家のもっとも仕合わせな関係は、演出家のもろもろの指示を俳優が充分に吸収し尽くして、ついには演出家の存在がまったく俳優の肉体の中に溶けて消えてしまうことにある。井上ひさし「代役」

劇場的きまぐれと痙攣的出鱈目を笑って許してきた難波の観客が、彼のたった一つの青臭い正論を黙って退けた。さらば稀代のトリックスター!

工事中に日帝による朝鮮人の強制徴用のあった7つの産業革命遺産については、そうした歴史的事実があったことを明記するという条件で、日本と韓国と北朝鮮が共同でユネスコ世界遺産登録を申請すべきだろう。5/23

人世とは、今日何をするかだ。5/23

全国の学友諸君、中東唯一の核保持国イスラエルの既得権を守るために中東の非核化構想をぶッ潰すアメリカの自分勝手をとくと見物しましたか。広島長崎訪問なんぞはほんの刺身のつまだったのさ。5/24

西暦2015年5月24日午後7時半。今年もヘイケボタルが乱舞する。このようなささやかな自然の恵みこそ人世最大の喜びである。

モーツァルトの音楽のような詩を書きたいな。5/25

ベルリン・フィルの次期首席指揮者選びが混迷しているようだ。私が楽員ならベルナルド・ハイティンクかマリク・ヤンソンス、若い人ではアントニオ・パッパーノがいいな。パッパーノとロンドンのロイヤルオペラはいまや世界最高級の演奏をしていると思う。5/26

でぶで無能なドダメルでもベルリンフィルのシェフが務まるのなら、わが大野和士、広上淳一、沼尻竜典のほうが遥かにましな音楽を聴かせられるのではないかしら。5/26

そもそも憲法に違反する戦争法案を審議すること自体が憲法違反なのである。5/29



 われもまた一匹の獣であるMGM映画のライオンとなりて吠えておれば 蝶人

なにゆえに 第15回~西暦2015年皐月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2015-06-01 10:14:23 | Weblog


ある晴れた日に 第311回


なにゆえにドローンドローンと騒いでるアランドロンならまだ生きている

なにゆえにコジュケイの家族が庭にいる彼らの連休第一日だから

なにゆえに平和憲法を改悪しようとする70年の平和の有難さを知らない

なにゆえに「オレの生徒にクズなんかいねえ」担当教師が勇み肌なの

なにゆえに昔の映画のほうが面白い新人は旧人の遺産を継承できない

なにゆえに人の上に人が立つ人間は生まれながらに平等なのに

なにゆえに五月の光が輝かぬ年に一度の子供の日なのに

なにゆえに昔の映画のほうが面白い新人は旧人の遺産を継承できない 

なにゆえに二人の息子には連れ合いがないあのムカデさえ伴侶があるのに

なにゆえに戦争大好き内閣を支持するかあんたが戦争を知らないから

なにゆえに安倍晋三は3.11の教訓を無視したかアンゲラ・メルケルが脱原発を決意したのに

なにゆえにネプトレコが「第2のカラス」ご冗談でしょうあんな女金太郎飴

なにゆえにまたしても常連の歌を採るさして優れた作品ではないに

なにゆえに店主は釣銭を間違えるだんだん小学生に戻っているのだ

なにゆえに安保法制をいじくり回す戦争ごっこが大好きだから

なにゆえに戦争を平和と言い換えるトルストイを読んだことがないので

なにゆえにトリックスターは自滅する世界を自分の劇場と勘違いしている

なにゆえに政治を自己実現の舞台と夢想する物言わぬ民草を虚仮にして

なにゆえにカワセミを見た日に良くないことが起こるのかいつも仕合わせをもたらす鳥なのに

なにゆえにチョウは楽しく空を舞うわずかな日々しか生きられないのに

なにゆえに老ゆれば醜くく太りグチャグチャ太る顔になってしまうあれほど綺麗だったのに

なにゆえにあれほどの名歌を忘れ去る自分史上最高傑作だったのに

なにゆえに老ゆれば醜く太るあれほど容姿端麗だったのに

なにゆえに総理大臣は偉いのか自分が偉いと思っているから?

なにゆえにウラナミアカシジミが庭を飛ぶそろそろ夏だよと告げるため

なにゆえに今見ているドラマを早送りできないかそんなに長くは生きられないので

なにゆえに中国と同盟しないのそんなに日米同盟が嫌いなのなら

なにゆえに断固中立を貫かないの日米同盟も日中同盟も嫌いなら

なにゆえにみな鎌倉にやってくる殺し屋北条の死都とは知らずに

なにゆえにカラバイヨがカバライキンカバライキンと叫んでいるのバイキンだらけのバイキングどもが

なにゆえにホルムズ海峡の機雷にかくもこだわる行きてお前が番人となれ

なにゆえにうちの息子はカレー大好き前世はインドの藩主のせがれか



なにゆえになにゆえシリーズは続いてるなにぬねごっこが楽しいからさ 蝶人