照る日曇る日 第1172回
恐らく著者がナルコレプシーを病んで入院したおりの体験がベースになっているのだろうが、精神を病むとこういう具合になるのかと思って大変怖くなる小説だ。
けれども病んでも主人公の精神はあくまで健康で、健康でいながら病んでいるというのはじつに難儀なものだろうと思うのであるが、絶望的な暗さの中で点滅している明るさという在りようは、どこか太宰治の小説を思わせたりもする。
そして女のことなんかは太宰よりもはっきり急所を捉まえるようにして書いてあるのだが、ラストは暗くて怖い。怖い怖い。そもそも暗くて怖いのが人世だから当たり前か。
このせつはのど自慢の鐘は二つ以上NHK流の優しさなるか 蝶人