東芝の次期社長に就任予定の田中久雄氏が今日、
東芝本社で記者会見を行いました。
“スピードの人”という印象を受けましたね。
佐々木則夫社長のあとを引き継ぐことになった、
田中氏は、1973年に東芝に入社し、
イギリス、アメリカ、フィリピンなど、
海外経験は、延べ14年にのぼるといいます。
赤字の英国のテレビ工場を1年で黒字化しろという命を受け、
なんと10ヶ月で黒字化した、実績もあります。
また、96年からの3年8か月におよぶ、
東芝情報機器フィリピンでの経験は、
海外のインフラ輸出事業に力を入れる東芝にとって、
大きなアドバンテージとなるでしょう。
「社会インフラが整備されていないなかでのビジネス体験は、
貴重なものだったと思います」
会長の西田厚聡氏は、記者会見場でいっていました。
田中氏は、調達、ロジスティックス、生産統括を担当する副社長です。
調達の担当者が社長に就任するのは、
東芝始まって以来のことだといいます。
私は、その経歴を聞いて時代を感じましたね。
現代は、サプライチェーンの時代ですよ。
調達は、コスト競争力を大きく左右するなど、
モノづくりのカギを握るといえます。
東芝は、年間3兆円を調達しているということですから、
調達力があるかないかは、極めて大きな問題といえるでしょう。
10年ほど前でしたか、ソニーの調達が1兆円と聞いたことがありますが、
3兆円という数字がいかに大きいかがわかります。
以前、東芝の調達の話を聞いたとき、
とにかく、その徹底ぶりに驚かされた記憶があります。
バラバラに仕入れていた部品を一括購入する「統合調達」をはじめ、
部位品の原料や素材を共同仕入れする「協調調達」や、
入札などを活用した「競合調達」にまで踏み込んでいるのです。
09年3月期の決算で、ソニーやパナソニック、シャープなどの
テレビ事業が軒並み赤字を計上したのに対して、
東芝だけが、日本のメーカーで唯一黒字でした。
それは、東芝の調達改革を抜きにしては考えられません。
その調達出身の田中氏が、次期社長に就くことにより、
自ずと今後の東芝の経営路線が見えてくるように思います。
「グローバル事業の拡大と収益体質の強化が使命です」
田中氏は、今日の会見でそう語りました。
その意味で、海外駐在14年、そして調達担当責任者の田中氏は、
うってつけの新社長といえるわけですな。