片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

パナソニック、事業部制の復活について考える

2013-02-19 21:09:20 | 今日の気になる記事

パナソニックが4月1日付けで事業部制を復活させる
という記事が、今日の日経新聞の一面に掲載されていました。

事業部制は、1933年、創業者の松下幸之助が制定して以来、
製品分野別の自主責任体制の象徴とされてきました。
しかし、90年代に入って、松下は経営不振に陥りました。
2000年6月に社長に就任した中村邦夫さんは、
「幸之助の経営理念以外、すべてを見直す」
といって、徹底した改革路線を打ち出し、このとき、
事業部制も解体されました。
その事業部制を今回、復活させるわけです。

「社長に就任して以来、意思決定のスピードの
遅さについて考えてきました」
昨年秋にインタビューしたとき、社長の津賀一宏さんは
そう答えました。
「どうして、そんなに意思決定が遅いのか。
パナソニックは、中小企業の集合体であると同時に、
大きな会社だからなんです。
決めるべきことは、各々の事業に対する投資判断、
売却判断など山のようにある。
中小企業の集合体ですから、もう山のような案件が
あがってくるわけです。
とても社長一人では決められない。
だれかが見ていないといけないんですが、
それができるのは、ラインの人以外にはいないはず。
そうであるならば、ラインの人が意思決定したらいい」
と津賀さんはいいました。

パナソニックは、現在、約90あるビジネスユニットを
50程度に減らしたうえで、それを事業部と名称変更し、
各事業部に生産部門と営業部門を取り込む計画です。
そして、すべての事業部にBSやPLをもたせて、
自主責任経営の最小単位にするといいます。
「中期経営計画のなかで、売上高営業利益率5%以上の
基準を満たせない場合は、転地なり、最悪、売却あるいは
終息ということもありえます」
そのとき、津賀さんはそういっていました。
つまり、収益性の高い事業部を積み上げて、
パナソニック総体の業績をあげる狙いです。

インタビュー当時は、まだ、事業部制の復活とまでは
いっていませんでしたが、津賀さんの改革に対する
思いの強さが伝わってきたのを覚えています。
津賀さんが事業部制を復活させる意図は、
ズバリ、スピード経営です。
私は、日本の企業の最大の欠点は、
スピードの遅さにあると思います。
実際、製品開発やマーケティングなど、
スピードが問われる場面が増えています。

それから、事業部制の復活の狙いには、
社員の危機感をあおることがあります。
「サムスンのように、“火の玉”になれといっても、
なかなかむずかしいでしょうが」と問いかけたところ、
「事業部単位では、つぶれるということもあるし、
つぶすぞということになれば、自らに直接、火の粉が
ふりかかるわけですから、それこそ、火の玉になれる」
と、津賀さんはいっていました。

パナソニックは、事業部制をやめたり、復活させたり……。
いったい、何をしているのだという意見もあるかもしれません。
しかし、私はそうは思いません。
制度というものは、時代の変化とともに、変わっていい。
いや、変えなければいけないでしょう。

事業部制の復活によって、パナソニックの社員が
どこまで危機感をもって、改革にあたることができるか。
それが経営の立て直しのカギを握るのは間違いありませんね。