片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

日本女子柔道に思う。人を育てるのはむずかしい

2013-02-01 22:21:46 | スポーツ

柔道全日本女子の園田隆二監督が
代表監督を辞任する意向を示しました。

すでに、報道されているように、
柔道の女子選手15人が、園田監督の暴力行為を
日本オリンピック委員会(JOC)に告発後、
暴力行為をともなう指導の是非が
大々的に語られてきましたが、
JOCの意向もあり、世界選手権代表選考に
大きな意味をもつ欧州遠征直前に、
園田監督が辞意を表明したほか、
上村春樹JOC選手強化本部長も
本部長職を辞任する事態になりました。

ここでは、告発内容の事実関係や
暴力や体罰の是非については触れません。
論じたいのは、柔道が日本のお家芸とされ、
五輪では、勝ってあたり前という風潮が
強かっただけに、指導する側は、
とてつもない重圧を受けていただろうし、
だからこそ、厳しい指導をすることも
あったのではないかということです。

それに、柔道に限らず、剣道でも相撲でもそうですが、
日本の武道は、礼節を重んじます。
道場では、まず、姿勢を正して、挨拶をすることから教えるといいます。
暴力はいけませんが、若年者に礼節を指導するにあたっては、
ときには、上からモノをいうような場面があることは
容易に想像できます。

年長者から年少者への厳しい指導は、武道だけでなく、
歌舞伎などの伝統芸能の世界でも
日常的に行われていることだと思います。
あるいは、料理人の世界でも、そういう話は
しばしば耳にします。
しかし、残念なことですが、現代においては、
そういう指導はもう通用しないということなんでしょうね。
だいいち、若い人たちがついてきません。
おそらく、師弟関係のもとに、若い人たちを育てよう
と考えることが間違っているのかもしれませんね。
私は、少し釈然としないところがありますが、
まあ、そういうことなんでしょうな。

では、どうすれば、スポーツ選手を育てられるのか。
私は、選手がプロになり、自身の責任で活動する
ことでしか道は開けないのではないかと思います。
何々スポーツ協会など、団体組織にどっぷりつかる限り、
日本的師弟関係や日本的風土からは逃れられません。
この際、欧米のスポーツ界のように、
アマチュアといえども、企業などのスポンサーを見つけ、
自らコーチや営業管理士、メンタルトレーナーなどを雇い、
独立してスポーツ活動をすることです。
実際、水泳やテニス、フィギュアスケートの分野では、
そうなりつつあります。
そして、世界的選手が出てきています。

また、チームで活動するスポーツであれば、
チームが滞在費を確保してくれる場合もありますが、
個人スポーツでは、自力で旅費、滞在費を
確保しなければなりません。
自らスポンサーを探して活動資金を集め、
世界各地の大会を転戦するといったように、
自らの責任で選手活動を続ける必要があります。
これからは、そうした自己責任のなかでしか、
世界的なスポーツ選手は育たないのではないかと
思うんですね。

日本の女子柔道の問題を機に、
スポーツの指導現場に厳しい目が注がれていますが、
これは、スポーツだけの話ではないように思います。
どうしたら、人を育てることができるのか。
女子柔道の問題は、広く人材育成に対して、
問題を突き付けているような気がします。