片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

現代自動車、ここからが勝負どころ

2013-02-20 22:21:03 | トヨタ

韓国の現代自動車について、興味深い記事が出ていたので、
今日はそれを紹介したいと思います。

「現代自動車から何を学ぶか」というテーマで

日本自動車会議所が会員研修会を開催した
と、今日の『日刊自動車新聞』に紹介されていました。
会員研修会の講師は、長年、現代自動車の研究を続けている、
京都大学の塩地洋教授です。

あらためて紹介すると、現代自動車は、1967年に設立されました。
75年には、初の国産車「ポニー」の生産を開始します。
97年には、通貨危機後に経営破綻した起亜自動車を買収し、
国内市場占有率を一気に拡大して、今日の基礎を築きます。
記事には、「現代自はどこで稼いでいるのか。
それは韓国国内だ」とあります。
現代自動車は国内でライバルとなる輸入車がなく、
強い市場支配力をもっています。
実質的に、市場を独占しているわけです。
結果として、韓国のユーザーは、高い車を買わされているわけです。
「8割に迫るシェアを武器に圧倒的な収益率を確保」
と、記事には書かれています。
「韓国国内で稼いだ資金で海外戦略を強化できる」
と、塩地洋さんはいっています。
韓国のユーザーの不満は、かねてから指摘されています。

国内販売であげた利益を使って、現代はこれまで、
果敢に海外市場を攻めてきました。
リーマンショック後、世界の自動車メーカーが軒並み、
生産台数を減少させるなか、現代だけが生産台数を伸ばし、
09年、フォードにつぐ世界第5位の自動車メーカーに
躍り出たのは、記憶に新しいところです。
現代は、01年の約10万台から、09年には189万台
まで海外生産台数を伸ばしています。
ただ、これほど急激に海外生産台数を伸ばすと、
世界の拠点の末端まで、目が行き届くのだろうかという
問題が出てきます。

思いだされるのは、トヨタ自動車の会長だった
奥田碩さんが、同社の海外の生産拠点の急拡大に対して、
04年11月、「兵站が伸び過ぎた」と指摘したことです。
実際、80年に9か国11拠点だったトヨタの海外生産拠点は、
そのとき、26カ国51拠点に増えていました。
その歪みは、国内の生産現場に過剰な負担となってのしかかりました。
それが積もり積もって、品質問題へと発展したのは間違いありません。

現代もいま、かつてのトヨタと同じ問題に突き当たっているといえます。
米国での燃費課題表示は、急拡大による結果であって、
塩地氏も指摘するように、まさしく、「起こるべくして起こったといえる」のです。

会長の
鄭夢九氏は、「量から質」への転換を宣言していますが、
果たして、急成長の弊害を抑えることができるかどうか。
加えて、このところのウォン高によって、
現代は、従来通りの海外展開を進めるのがむずかしくなっています。
拡大路線にはブレーキがかかるでしょう。
しばらくの間、現代は苦しい戦いを強いられそうです。

しかし、経営に苦難はつきものです。
現代が苦難を乗り越え、より強くならないとは限りません。
そうなったとき、現代は本物のグローバル企業になることが
できるのではないかと思いますね。