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のれんに関するルール変更

2018-09-19 12:00:00 | 18期生のブログリレー
皆さま こんにちは。
稼プロ18期の舌歯 昌洋です。

【主題】
本日は、のれんについて書いてみます。
ウィキペディア日本語版によると、店先あるいは部屋の境界に日よけや目隠しなどのために吊り下げる布のことである、とされています。

この本来の「のれん」も興味深いのですが、ここでは派生概念とされる「会計上ののれん」について述べます。


【主題の定義】
「会計上ののれん」とは何でしょうか(以下、本稿ののれんはすべて会計上ののれんを指します)?
我が国の会計基準によると、
「取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、 その超過額はのれんとして次項に従い会計処理」するものとされています
(企業結合会計基準第31項)。
意欲的に意訳しますと、「会社を買収するときに、買収される会社の帳簿価格よりも多く支払った場合の、その多い部分」となります。

それでも分かりにくいですね。

これならどうでしょうか。
A社はB社の株式100%を現金1万円で取得することにしました。
B社の貸借対照表はA社の取得時点でこのようになっていました。

B社貸借対照表(単位:円)
諸資産5,000
諸負債4,000
純資産1,000

さあ、のれんはいくらになるでしょうか。
答えは9,000円です(取得対価10,000-純資産1,000)。


【執筆動機】
この記事を書こうと思ったのは、2018年9月14日付日経新聞に国際会計基準審議会(注)がのれんの会計処理の見直しを「検討する」という記事があったためです。
(注)国際会計基準(IFRS)を設定している団体

もしこの会計処理の変更が行われると、企業会計に、さらには株式市場にどのような影響が見込まれるのでしょうか。
こういったことに言及したいと思いました。


【説明】
日本人目線では、現在主要な会計基準は3つあります。
日本会計基準
国際会計基準
米国会計基準

では恒例(?)のクイズです。
各会計基準における、のれんの会計処理はどうなっているでしょうか。























日本会計基準:20年以内に定額法などで償却+必要があれば減損
国際会計基準:定時償却なし+必要があれば減損
米国会計基準:定時償却なし+必要があれば減損

そうです。日本だけ違います。
この違いは非常に大きく、我が国上場企業の会計基準選択に重要な影響を与えています。
処理の相違となる会計理論上の考え方は、神学論争的な様相を呈しているので、こちらでは紹介しません。私個人は、日本会計基準の考え方のほうがより理解できます。

仮に、国際会計基準においてのれんが現行の日本会計基準のように定期的な償却を行うルールに変更されたらどんな影響が見込まれるのでしょうか。
そこをレビューして本稿を締めたいと思います。

サンプルとして、ソフトバンクグループの平成30年3月期決算を取り上げます。
ソフトバンクグループ平成30年3月期決算短信
を見ますと以下のことが分かります。

適用する会計基準:国際会計基準(1/72ページ)
総資産額:31兆円(1/72ページ)
純資産額:6兆円(1/72ページ)
のれん総額:4兆円(28/72ページ)

仮にのれんを20年定額法で償却する場合、毎期2,000億円ののれん償却費が生じることになります。もちろんキャッシュの出入りは伴いませんが、会計基準次第で2,000億円も会計上の固定費が生じてしまうのは恐ろしいことだと思います(会計上のというところがキモで、企業の稼ぐ力には影響ありません)。

また会計基準に関する知識が不足していると、他の条件が全て一定ならば、突如利益がのれんの償却費分減少することに驚いて、意図せざる対象株式の売買を行ってしまうことも考えられます(なので、株式投資する人は会計基準の知識が少しは必要になると思います。)。

【まとめ】
報道によると国際会計基準審議会は、これから議論を本格化させ、2021年には結論を出す意向のようです。
ルール改正が行われるのかどうか、時期が2021年になるのかどうかを含め、職業会計人として状況のウォッチをしていきます。

長文最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント (3)
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