機械式時計の業界はコロナ禍もあって、経営が大変だと思います。そうなると新商品を開発する余力もあまりなさそうですが、今年の新作時計でちょっと面白いと思った時計がありました。
振動数という指標が従来の10倍の28万8000回/時という時計です。振動数というのは振り子時計で例えると振り子が振れる数です。腕時計は振り子の代わりに渦巻き状のゼンマイが伸び縮みする動きを往復の円運動に変換してリズムを刻みます。平均的な時計は1秒間に4往復8振動して、2万8800回/時です。
動画を見てみると、リズムが10倍の速さなので、秒針の動きが流れるようで、とてもスムーズです。平均的な時計の秒針はアナログストップウォッチのようにガタガタした動きなので、ちょっと驚きました。因みにこのようなスムーズな針の動きをスイープ運針といい、クォーツ時計の飛ぶような針の動きをステップ運針といいます。
ただリズムを刻む機構が文字盤で見えるようになっているのですが、これは何というか鳴いている時のコオロギやセミの羽のようにせわしない動きなので裏側に配置して、裏側からシースルーで見えるようにした方が良かったかな、と思いました。
フレデリック・コンスタントという会社は私が今まで見聞きする限り、ありふれたスペックの時計を機械式時計としては手ごろな価格で販売する会社で、新しい機構を「コンスタント」に開発するイメージはあまりなかったのですが(汗)、今回このような変わった機構を開発していました。新機構が搭載された時計を手ごろな価格で、しかもコロナ禍で販売するのはなかなかスゴいことではないかと思います。これからもまた、変わった機構の腕時計の発表を楽しみにしています。
因みに1秒間に500往復1000振動する機構を持った機械式時計をタグホイヤーという会社が過去に製造しています。動画を見ると結構面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=LOve0pdQZJQ