大宰府で出会った佐賀大学一年生 藤野君だ。佐賀から一人で走ってきていた。
私と違って綺麗なものだ。見るからにおとなしそうに見えるだろう。果たしてそうなのであった。記念撮影をし、できた写真を送ることを約し、互いの無事と励ましの言葉を交わして別れた。
都府楼跡で出会った辻氏。この時既に御年72歳 自宅のある香椎から実用自転車でここまで来ていた。遠くから見ているとなにやらチビリチビリとやっている。 飲酒運転じゃないか、そんなことでいいのかと思いながらも、写真を撮るためにどうしても傍に寄らねばならなかった。すると向うから声を掛けてきたのである。
私が来たときから見ていたそうで声を掛けるきっかけを待っていたそうだ。
飲めと言う。そう言う訳にはいかんと丁重に断った。そこから二時間かけて私の九州一周の話に耳を傾けてくれたのである。別れる前、辻氏に二人の写真を撮ってくれ、出来たら送ってくれと頼まれたのである。これがその時の写真である。
私は写真を送った。丁寧な返事が来た。私と会えたことを喜んでくれていた。
翌年、写真を送ったのと同時期に残暑見舞いを出した。返書が返ってきた。差出人の名が違うのだ。読んでみると辻氏は数ヶ月前に亡くなられたという内容なのであった。また、父(辻氏)が大層喜んでいた。父になり代わりお礼を述べると言う言葉で結ばれていた。私は手を合わせることしか出来なかった。