鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

・画像生成AIのHolara、DALL-E3と合作しています。

・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

AIによる名場面集 ワールトーア編から「ハルスの邂逅」編へ


こ、これは……。連載小説『アルフェリオン』各話の名場面をAIのオボロさん(*)に画像化してもらう企画、好評継続中です。ワールトーア編が堂々の(いや、超展開の?)完結を迎え、続く「ハルスの邂逅」編にて、いよいよ本作のメインヒロインであるエレオノーアが登場します。ここまで本当に長かった……。「もう大丈夫なのです、わたしのおにいさん!」(by エレオノーア)

(*)オボロさんとは「Editorial Oboro」(GPTsの機能を通じて小説広報支援用にカスタマイズされたChatGPT)のことです。多彩な機能のひとつとして、小説を読んでその内容を画像化することができます。

 

それでは、ワールトーア編の最終回・第52話「師と真実」から。

「いらない子」のルキアンがシーマー家に預けられた過去、その実態。これまでにルキアンの辿ってきた18年の人生が、すべて「月闇の僧院」の掌の上で、予め定められた通りに操られていたことが暴露されます。

僕は《ルキアン・ディ・シーマー》、この家の子です。さようなら、師父様(マスター)。

自身がこんなカルト教団みたいな連中(!?)の操り人形だったと知り、ルキアンの衝撃はどれほどのものだったか。

でも、オボロさん、白ずくめの僧侶たち……ちょっと、多すぎません?(笑)

小説本編において、実際にシーマー家にルキアンを連れてきたのは、マスター・ネリウスとヌーラス・ゼロワンとあと一人、計3名でした。万一、この画像の場合のようにゾロゾロと押しかけてきたら、それは引きます(苦笑)。

でもマスター・ネリウス個人は、幼かったルキアンのことを大切に想っていたのですよね?

 

そして明かされる、ワールトーア村の惨劇、「聖体降喚(ロード)」の真実。

アリーオとエメレーアの姉弟は、「聖体」がこの世に顕現し「真の闇の御子」が生まれるための生贄とされます。

たとえネリウスが、時折、人間らしい一面を垣間見せても……同時に彼は、何の罪もない幼い姉弟が「聖体降喚」の犠牲となって散ってゆくおぞましい場面を見守り、術式の完成を粛々と進行させていたのです。この落差、矛盾が……。

胸が詰まります。なぜ彼らが犠牲にならなければいけなかったのでしょうか。もし二人が「適合者」でさえなかったなら……。

発動された「聖体降喚」、初めてにして最後の成功例。血溜まりの中から生まれた、決して歓迎されない救世主、真の闇の御子ルキアン。

オボロさんが描いた「聖体降喚」とその犠牲となるワールトーア村のイメージ。

現在のルキアンの魔法の師であったカルバ先生、すなわちその正体である「月闇の僧院」のマスター・カルバと、そして幼年時代のルキアンを育てたマスター・ネリウスと対面して、ルキアンの記憶の封印が一時的に解けてゆきます。


 幼年時代の幸せなひとときの記憶。
 傷つき、濁ったレンズの向こう側を垣間見るように、ぼんやりと、緑の中に溶け込んだ三つの人影が、ルキアンの心の目に映った。
 荒削りの木材でできた粗末な野外用の食卓につき、黒い衣をまとった体格の良い僧が、おそらくは礼拝時よりも省略されているのであろう、簡易な作法で祈りを捧げている。
「いただきます、神様、師父様!」
 そう言った幼子の頭を、大きな手が撫でた。

「すごい、大きいの釣れたね、師父様!!」
 苔むした岩壁と木々に囲まれた谷川で、竿を握り、丸々とした立派な渓魚を釣り上げたネリウスに、目を輝かせて銀髪の幼子が駆け寄った。その後ろから、同じく銀色の髪の少女が、彼が足を滑らせないかと心配そうに見ている。

 男の子が無邪気に笑う。
「師父様! えへへ。一回だけ、その・・・今だけ、《パパ》って呼んでも、いい?」
 隣で微笑んでいるのは、彼よりも背の高い、おそらく姉のような女の子。

 流行り病か何かにかかったのか、顔を赤く染めてベッドに横たわっている銀髪の幼い少年。苦しそうな吐息。そのか細い手をしっかりと握るネリウス。例の女の子が、水を入れた桶と手拭いを運んでくる。

だが、幼年時代の眩いばかりの記憶に、次第に濃い霧がかかる。大切な思い出を暗闇が呑み込んでいく。そして最後に残されたひとこまは、《あの日》の夜のことだった。

 青みを帯びた墨を平板に広げただけのような、月の無い夜のもと、茫漠とした空と枯れ野。あちらこちらに、黒く点々と、寒村のみすぼらしい家々の影が見え、その真ん中に、ただ規模は大きいにせよ古ぼけて荒れた館が、置き去りにされている。
 門の前に立つ二人は、この館の主人とその妻であろう。彼らと向き合っているのは、頭巾から長衣を経て足首まで、すべて白ずくめの、闇夜に漂う亡霊のごとき、あるいはどこか邪教の神官を想起させる、異様な装いの三人である。
 真ん中の一人が、僧衣には似つかぬ逞しい腕を伸ばして言った。
「《ルキアン》、ここが君の家で、こちらが君のお父さんとお母さんだ」
 その手の先をぼんやり見上げながら、幼い銀髪の少年が、何か別のものに憑かれ、言葉を口にさせられているかのように、遠く虚ろな目でつぶやいた。
「はい。僕は《ルキアン・ディ・シーマー》、この家の子です。さようなら、師父様(マスター)」
 およそ意志の力を感じられない、抑揚を伴わない声で。

 ネリウスが起動させた旧世界の遺産「絶界のエテアーニア」の力によって、ワールトーアで起こったことの記憶をすべて奪われ、さらに、幼い頃のネリウスとの幸せな日々の記憶をも再び封印されるルキアン。

 

「見ひらけ、針を戻せ……《絶界のエテアーニア》」

 彼が口にしたのは、旧世界のある種の至宝を起動させるときに一様に似たような語調で唱えられる、例の力の言葉だ。同時に心の中では、このように自分に言い聞かせながら。
 ――これで良い。あの日々を再び失うのは辛いであろう。だが、私のことなど……《あの子たち》のことも……そして、お前の《姉》のことも、元のように記憶の海に、深い深い海に沈む。

 ――ただ、再び我が名を、そしてまた師と呼んでくれたことは……。

 ネリウスの銀の杖が、床を鋭く突いた。その清冽な響きとともに、得体の知れない力が、それも途方もない魔力のうねりが、聖堂を飲み込み、さらにはワールトーアの失われた村を覆って、寄せる波のごとく、一面の緑濃い木々の間をも騒がせ、流れ去った。この聖堂の地下に何かがある、あるいは何か巨大なものがいる。
「さらばだ、ルキアン。かつて幼かった弟子(わが子)よ」
 ほんのわずか、瞬く間のみ、遠き想いに浸る言葉。
 それだけを残すと、《転送陣》を描いたネリウスの姿も虚空に消えた。

深い森の中に、ひとり、取り残されるルキアン。

「どうしたのかな? 本当に、僕、ここで何を」
 何の前触れもなく、激しい感情が体の奥底から湧き上がってくる。ルキアンは呆然と天を仰いだ。
「分からない。けど、どうして……。どうして、こんなに」
 ルキアンは震える声で言った、いや、むしろ、咽び泣いた。
「こんなに、涙が……止まらないのかな!?」
 自分でも理解できないまま、ルキアンは空っぽの胸を、両手で抱きしめた。膝立ちのまま、彼は独りで涙を流し続けた。

ここで第52話の冒頭と同じような場面までループして、再度、ルキアンがブレンネルと出会って似たようなやり取りを繰り返すところが、地味に泣けてきます。

ただただ辛く、哀しい、伝説の廃村ワールトーアでのルキアンの経験でしたが……。この後、ブレンネルと共にハルス山地に向かったルキアンを、待ち続ける者がいました。

川辺で洗濯物干しのシーンから登場する、銀髪の少年……のような少女。

 

「はい。今日は、きっと何かが起こります」

 

「分かります。感じます。やっと会える……。私の大切な」

 ――おにぃ、さん。

 心の奥にしまっておくようにそう付け加え、《彼女》は振り返ると、両の掌を胸元で握り合わせた。自らに花の色の漂うことをまだ知らない、男の子のような横顔から、しかし伸びる柔らかな輪郭線は、この子がいずれひとりの女性になることを告げていた。

「ずっと、待ってたのです」

「おにい、さん」

 

ナッソス家との決戦の場面から、悲痛のどん底にあったルキアン。このタイミングでエレオノーアが登場するのは、さすがメインヒロインというところです。彼女が全てを変え、『アルフェリオン』という物語すらも変えてゆくことになるのは、その後の展開の通りです。

本日も鏡海亭にお越しいただき、ありがとうございました。
引き続き、「ハルスの邂逅」編の名場面を、AIさんと一緒に、皆さんと共に想い起して参ります。ご期待ください。

ではまた!

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( )