鏡海亭 Kagami-Tei  ウェブ小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

生成AIのHolara、ChatGPTと画像を合作しています。

第59話「北方の王者」(その1)更新! 2024/08/29

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第59)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

【設定解説】アスタロンとパンタシア

連載小説『アルフェリオン』に登場するMT兵器に関して、先日、解説記事をアップしました。今回はその続き、設定の根幹にいっそう深く関わる「アスタロン」と「パンタシア」についてです。

※注 なお、あくまでフィクションとしての似非超魔法科学であるため、まともに理解しようとするとバカになります(^^;)。そんなもんかと雰囲気で流してください。

 ◇

この物語の舞台となる異世界イリュシオーネには、実際に魔法が存在する。魔法という超自然的な現象を、イリュシオーネの魔法学者たちは「アスタロン」と「パンタシア」という仮説を使って説明しようとしている。概要は以下の通り。

まず、イリュシオーネの魔法学においては、この世界は、物理的な法則に服する現実界(人間に知覚可能な世界)と霊的な法則に服する仮想の世界(把握不可能。観念することしかできない)とが対になっており、両者が統合的に作用することによってあらゆる事象が生起すると考えられている。つまり、人間に知覚される世界で起こる現象というのは、実はその世界の裏にあって知覚不能なもうひとつの世界の働きも合わさって生じている、というわけである。この裏側の仮想世界は「アストラル・プレーン」というモデルを使って表現される。実際にアストラル・プレーンが存在するか否かは証明不可能だが、このモデルを使えば魔法の作用は一応整合的に説明できる、とヴィエリオも本編で述べていた(第35話)。

仮説によれば、アストラル・プレーンは、魔法力を伝達する架空の媒質「アスタロン」で満たされている。このアスタロンの仮説を用い、現実世界での魔法の効果の発生は次のように説明される。まず魔法力は、術者の働きかけによって、裏側の世界すなわちアストラル・プレーン側でアスタロンを介して発生・伝達される。しかし、このままでは魔法の力は現実世界では決して発動しない。そこで術者の「パンタシア」の力によって生じた特異点(二つの世界を結ぶ、説明のためのモデルとしての結節点。実際にそういう点があるとは考えられていない)を介し、アストラル・プレーン側に魔法力として存在する霊的な力が、物理世界の側に現実の結果(魔法の効果)となって現れるのだとされている。

いわば、表裏一体であるにもかかわらず、直接に重なったり交ったりしないすることが永久にない「観念できるにすぎない世界(霊的世界)」と「現に存在し知覚しうる世界(物理世界)」とが、「人間」の精神の働きによって同じ次元において相互に影響し合うことが可能となる、というのである。つまり「Aが観念される」(平たく言えばAというものを思い浮かべることができる)ということと「現にAが(物理的に)存在する」こととの間にある深淵をつなぐ、何らかの力が人間の精神活動に秘められている…。そう考えない限り、魔法の効果発生は説明できないと、イリュシオーネでは主張されているのだった。

パンタシアという言葉は、元々は「夢」を意味する旧世界の古典語に由来する。その語源通り、パンタシアとは人間のもつ「夢の力」(第6話)あるいは「夢想する力」(第35話)だとされている。すなわち、第35話のルキアンのセリフによれば、パンタシアとは「《心の中に何かを思い描いて、それを現実にもたらそうとするほど強い想像――創造――の力》です。それが魔力をこの世の力に変える」のであると。人間の精神の深みに宿るという、「観念」と「存在」との間の跳躍をもたらす架空の働きを、「夢」や「想い」というキーワードを用いて感覚的にうまく言い換えているといえよう。

それゆえパンタシアの力を操ることのできる人間のみが、魔道士になれる。第31話からの引用によれば「人は誰でも魔法の源となる《パンタシア》の力を持っている、というのが通説である。そのくせ、己の内に潜むパンタシアの力を実感し、自在に制御できる者の数となれば、急激に限られてしまうことになる。パンタシアを意のままに操るために必要な、天賦の感性を備えた人間だけが、魔道士になれる」のである。

【アルマ・ヴィオとパンタシア】

アルマ・ヴィオは、エクターが乗っていなければ、自然界に漂う魔力を動力に変えることができない。つまり魔力から物理的な力を取り出すためには、エクターのパンタシアという媒介が必要なのである。それゆえエクターはパイロットであると同時に、アルマヴィオにとっては一瞬の生体パーツでもある、という説明を過去にどこかで書いたような気がする。パンタシアの力がなければ魔法の力は現実界で発動できないという上記の話から考えて、当然のことである。なお、この場合の自然界とは、現実界とアストラル・プレーンの双方を合わせた意味での世界全体のことをさしているのだろう。

また、パンタシアの力が強ければ強いほど、アルマ・ヴィオはいっそう大きい力を自然界から引き出すことができる。いかに巨大な出力の動力機関や兵器を備えたアルマ・ヴィオであっても、それらを動かすために必要なエネルギーがなければ、どうしようもない。アルマ・ヴィオの性能という場合、機体自体の最大出力は理論上のリミットを示すものにすぎず、現実にはエクターのパンタシアの力の上限が、機体が実際に出しうる最大出力を決定するのだった。

【ステリア】

ところで、パンタシアの仮説に立脚する魔法学では説明できないものがある。それが問題の旧世界の「ステリア」の技術なのだ。本来、アストラル・プレーン側の魔力は、パンタシアの力による特異点を通じてのみ――物理的な力に置き換えれば想像を絶するレベルの力によって――現実界の力に姿を変えて現れる。だが、この特異点を経ず、何らかの「飛躍」によってアストラル・プレーン側の魔力をこちらの世界に現実化させるような話が、実はステリア技術の前提にあるのだ。

ステリアの詳細は謎に包まれているが、上記のように、アストラル・プレーン側の魔力を現実界に強制的に転移させるような働きと密接に関連していることは、明らかになっている。とはいえ、パンタシアの力による仲立ちを経ず、アストラル界の魔力だけをそのまま現実界に取り出せるなどということはあり得ない。どうやらステリア技術を用いた機関は(例えばアルフェリオンのステリア系機関)、魔法力を帯びたアスタロンをアストラル・プレーンから現実世界へと転移させることができる…という確率が高いのだった(このこととの関連から、やはりアスタロンは存在するという主張がイリュシオーネにおいて強まった)。そして、アスタロンと対をなす何らかのものが現実界側にも存在すると仮定し(これを負のアスタロンと名付け、本来のアスタロンを正のアスタロンと呼ぶ者もいる)、両者の衝突による霊的対消滅の結果、莫大なエネルギーが発生するというのである

このエネルギーを超高出力の攻撃兵器や恒星間移動(ワープ等)の動力のために用いたものが、おそらくステリア機関の正体である。そのパワーは、旧世界で用いられていたあらゆる物理的な動力機関を(おそらく対消滅機関も実用に至っていたであろう)遥かに上回ったとされている。このあまりにも巨大な力が旧世界滅亡の原因になったというのも、うなずけるところである。

 ◇

まだまだ、のんびりと不定期に、設定解説は続きます。

以上
コメント ( 0 ) | Trackback ( )