Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

経済財政白書報道に見る保守とリベラルのバカ比べ

2009-07-30 10:25:27 | 経済一般
先週発表された平成21年度経済財政白書について、各社の報道の差が面白い。
たとえば産経新聞ではこう報じている。

非正規雇用が増加した背景として初めて、高齢化以外に
「労働法制の改正」を原因にあげた。麻生政権はこれまで
「小泉構造改革」で生じた“ほころび”の修復を掲げてきたが
白書の表現ぶりは
「行き過ぎた規制緩和が格差拡大を助長した側面もある」
と暗に認めた形だ。


これは大間違いだ。
「労働法制の改正」は「もう正規雇用は雇えない」というニーズの結果であって
原因ではない。本末転倒とはこのことだ。
ちなみに法改正してなかったら、請負やパートが増えていたか、失業率が上がって
いただけの話だ。
「労働法制の改正」という結果をいくらいじっても、原因は無くせないのは小学生
でもわかるロジックだろう。

まあ、百歩譲ってここまではいい。解釈によってはそう読めなくも無い書き方が
されているし。
この記事で最大の問題は後半部。
少なくとも白書のどこにも
「行き過ぎた規制緩和が格差拡大を助長した側面もある」
なんて書かれちゃいないのだ。

実際には、まったく逆である。

小泉政権の5年間にほぼ重なる02~07年において、実際には賃金格差は縮小している
こと、そしてその理由は失業率の1%近い改善にあると明記されている(236p)。
よく言っているように、小泉政権は(正社員の既得権にメスを
入れられなかったため)100点満点とは言えないものの、規制緩和で
格差を縮小させたのであり、野党が言うように労働再規制なんて
バカなことをやったらまた以前の失業率に戻るだけだ。

まあ、雇用労働者内での賃金格差だけは縮小するかもしれないが。

そして総論として、格差縮小の最大の特効薬は景気拡大であり、就業形態の多様化は
失業率を抑制できると明確に述べている(279p)。

ついでに言うと、非正規雇用の拡大は先進各国共通の現象であり、相対的にそれが
少ないのは、雇用規制の少ない英米であるとする分析も併記されている。
これも以前から指摘されている話だが、正社員の処遇見直しが可能なら、わざわざ
好きこのんで非正規雇用なんて使わない。
当たり前のロジックだ(なぜか日本のメディアは伝えようとしないのだが…)。

もうちょっと読み込みましょうよ産経さん。
そういう意味では、北海道新聞の編集委員は、読解力にかけては産経より上らしい。

 白書は非正規労働や所得の格差にも焦点を当てている。社会問題化
している重い課題だ。問題なのは、派遣労働などの「多様な就業形態」
が失業者を減少させるとして、非正規労働の拡大を容認している点だ。
 経営者にとって非正規労働者は使い勝手のいい労働力といわれてきたが
今回の不況ではまさに雇用の調整弁となった。安全網もないままに職も
住まいも失った人は数多い。
 白書は「景気回復が最大の格差対策になる」と強調する。しかし2002年
から5年以上にわたった景気拡大期に非正規労働者が増え続け、働く人の
3分の1にもなった。この事実をどう考えるか。



まあ、頭の悪さはどっちもどっちだが(笑)