独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

ゆかた(5)縁は異なものー

2010-06-06 | 月刊アレコレ
「縁は異なもの、味なもの」という諺は、本来は男女の縁はどこでどう結ばれるかわからず、不思議で、面白いもの、という意味だそうですが、月刊アレコレの復刊が決まってから第一号を発行するまでのこの1ヶ月、男女ではありませんが、「人の縁」の不思議に驚かされています。写真の粋な女性は、某出版社の編集者。出版社として初めての着物の本を企画しているので、少し着物の世界の様子を聞きたい、とご紹介いただいたのがご縁。話が脱線し、というか着物好きな女子が出会ったのですから、当然着物の話に。これも面白い、というか着物を着るきっかけは様々なだなあ、と驚いたのですが、それこそ縁は異なもの、の縁をきっかけに着物、三味線の世界に入られたそうです。どんなご縁か、知りたいのが人情という物。人一倍好奇心旺盛なわが編集長、速攻逆取材となり、次号の「きものびと十人十彩」に登場となりましたので、好奇心旺盛なみなさん、次号を読んで下さいね。
で、昨日は彼女の行きつけの新宿ゴールデン街で撮影。その1カットがアップした写真です。お召しになっているゆかたはお母さんの藍の絞り。お気に入りだそうです。いっときユニクロのゆかたが話題になりました。私は実際に見たことがないので、都市伝説の1つだと思いますが、花火大会の後、駅のゴミ箱にユニクロのゆかたがいっぱい捨ててあった、なんて話がありました。安いがゆえに、花火大会のコスプレとしての必要性がなくなったら、ポイ!ということなのでしょうが、それは余りにも悲しいと思うのです。買う方はそもそも安い物は1シーズン持てばいい、極端言えば1回で着捨ててもコストパフォーマンスが合うからよい、ということのようです。そのような価値観もありかもしれませんが、私は良いものを長く使う、愛おしんで使う方が好きです。そういう物との出会いを楽しみにしています。先日NHKの番組「ワンダー×ワンダー」で京都/東山の別荘群を紹介していました。私も初めて知りましたが、明治・大正の政財界の大物たちが財力に糸目をつけずに美意識を結集し、競い合って作った別荘群があるんですね。それは素晴らしい物でした。その中の1つの別荘を代々受け継いでいる呉服関係の方が「この別荘は、大切な預かり物だと思っています。次の世代に引き継いで行きたいと思いますので、大事に手入れして使っています。」と語っていたのが印象的でした。昔、ある財界人がゴッホの「ひまわり」を死んだときには「一緒に棺桶に入れて焼いてしまいたい」といって非難されたのを思い出しましたが、天地雲泥の差ですね。私たちの先達たちが工夫し、職人たちが引き継いできた素晴らしい技や美意識が結集している染織、きもの。母から娘へと譲られ、娘に、もしかしたらその次の世代にも着られてくかもしれない、と想像したとき、なにやら作り手の、そしてきものの幸せを感じます。良い物を愛おしんで長く使い、次に引き継いでゆけるよう手入れ、始末する。素敵な日本人の美意識、たしなみを感じます。そういえばアレコレのスタイリストとして活躍いただいている彩詠さんのお婆ちゃまも、着なくなった着物をいつの間にか、お母さんの寸法に仕立て直してあった、と聞きました。千円もしないゆかたから十数万円のゆかたまで、多種多様にあります。ゆかたを選ぶとき、1回で着捨ててしまうような消耗品としての選択だけはして欲しくないと思います。いまどきでいえば、地球に優しくない、エコじゃないですから。