
図は、米エネルギー情報局 (EIA) による主なシェールガス層の分布図。
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今後 世界のエネルギーの状況を一変しかねない “シェールガス革命”。 先頃 産出国の米国は日本への輸出を "あっさりと認める" 決定をした。 その背景は、同盟国 日本への好意か? 尖閣諸島問題で盛んに日本を挑発する中国へのアテツケか? それとも 米国の (エネルギー) 輸出額を増やそうという企みか? 色々な思惑が何重にも重なってのことでしょうが、それをよく見極めておきたいところです。
まず 日本のエネルギー事情ですが、東日本大震災後 日本の原発は全て定期検査で停止し、再稼働の見通しがたっていません。 しかも様々なエネルギーの中でも、日々欠かせない電力は貯めておくことが出来ず、毎日必要量を発電・消費しなくてはなりません。 原油備蓄タンクのように1~2年分 蓄電池に貯めておくことなど、全く想定できません。
要するに 技術的に不可能なのです。 そのために 代替え火力発電所で発電量を増やして、従来 原発で発電していた分を補っていますから、その火力発電所の燃料の LNG を高値で (中東などから) 輸入しているため、日本の貿易赤字が膨らむ原因となっています。 この LNG が安値で入手できるようになれば、日本の電力業界のみならず、産業界にとっても 朗報であることは間違いないところです。
そして 米国は TPP 非参加国にはシェールガス輸出を認めないとしていましたから、安倍首相が先頃 訪米して TPP 参加を表明したことで、日本への輸出を認める決定を下しました。 確かに 同盟国 日本への好意と想像しますが、中国を牽制する意味合いも含まれていると思いますね。
米国による “G2 体制提案” を蹴飛ばして以降 中国は何かと米国による世界秩序を乱すような動きを強め、市場経済分野では今にも米国を凌駕しようという鼻息です。 ハイテク領域では米国で中国の多数のスパイが暗躍しているともいわれ、また 米国へのサイバー攻撃による幾つかの疑いの震源は中国ともいわれ、米国としては中国に “何らかのカツ” を入れたいという思いもあったのではないでしょうか?
特に尖閣諸島周辺海域に中国船を出して、日本を挑発している中国には一触即発を防止するためにも 何らかの意思表示をする必要に迫られていたと想像しますね。 その他にも 色々と理由がありますが、それは記事1でお読み下さい。
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「アメリカの “シェールガス輸出解禁” で何が変わる?」(5月30日 興山英雄/週プレNEWS) _ ※追加1へ
「一体何がすごい? “シェールガス革命” とは」(2月26日 All About 編集部) _ ※追加2へ
ウィキペディアから__ シェールガス (shale gas) は頁岩 (シェール) 層から採取される天然ガス。 過去 シェールガスは頁岩層に自然にできた割れ目から採取されていたが、2000年代に入ってから水圧破砕によって坑井に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し、シェールガス生産量が飛躍的に増加し シェールガスブーム、シェールガス革命などと呼ばれるようになった。
米テキサス州バーネットシェールが経済的に成功したことは、アメリカとカナダにおけるシェールガスフィールドの探鉱に拍車をかけた。 しかし、急激な生産拡大と価格低下により開発企業の収益が悪化、2013年4月、独立系の GMX リソーシズ社が天然ガス価格の低迷から資金繰りに行き詰まり、連邦破産法 (Chapter11) の適用を受けた。 大手のチェサピークエナジーは資産売却に追われ、最大手のエクソンモービルも利益が出ていない。
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以上
※追加1_ 世界のエネルギー事情を一変させた「シェール革命」。 その先頭を突っ走るアメリカが、シェールガスの対日輸出を解禁した。 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の上席研究員、伊原賢 (まさる) 氏が語る。
「日本は東日本大震災後からアメリカに輸出解禁を要請していたが、それが認められた形。 4年後の2017年にアメリカ産シェールガスの対日輸出が始まります」
輸出解禁は日本にとっての悲願だった。 伊原氏がこう続ける。
「現在 アメリカの天然ガスの購入価格が 100万 BTU 当たり4ドル台であるのに対し、日本はその4倍超の約 16ドル。 イギリス (約8ドル) と比較しても倍以上です。 震災後に原発を停止し、その代替燃料として LNG (液化天然ガス) を大幅に増やした日本は、産出国カタールに足元を見られ、高値の LNG を買わされていた。 シェールガスはそんな状況を打破する決定的な切り札になります」
でも なぜアメリカは今になって日本への輸出を解禁したのか? 資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏が語る。
「アメリカはシェールガスのような戦略資源について、日本のような FTA (自由貿易協定) 非締結国への輸出を原則認めていません。 今回、アメリカが対日輸出解禁に踏み切ったのは、日本が TPP (環太平洋パートナーシップ協定) への交渉参加を表明したためです。 安倍首相の決断がなければシェールガスの輸出解禁はなかったといえるでしょう」
アメリカにはこんな事情も……。
「05年以降からシェールガスの生産量が急拡大したアメリカでは供給過剰に陥り、天然ガスの価格は08年時点で 100万 BTU 当たり 13ドルだったのが、昨年には2ドル前後まで暴落。 シェールガスの採算ラインは4ドルから6ドルなので、その水準まで値を押し上げるためにも、過剰在庫のはけ口 (輸出先) が必要だったというわけです」(柴田氏)
柴田氏が続ける。
「アメリカにとって、FTA 非締約国へのシェールガスの輸出解禁は今回の日本が第1号。 というのも、シェールガスを輸出するためには気体であるシェールガスを液化するための巨大なプラントが必要になります。 建設費は一基で数千億円規模。 資金力のある日本の企業にそのカネを出させようというもくろみもあったでしょう」
では、輸出解禁で日本にはどんないいことがある?
「先述のとおり、現在のアメリカの天然ガス価格は4ドル台。 これを日本が輸入する場合、液化コスト3ドル、船代3ドルとアメリカの利益が加わりますが、それでも 11、12ドル程度で輸入できるはずです」(前出・伊原氏)
現在の価格 (16ドル) と比べると最大で3割安。 その効果は?
「例えば 日本の家電メーカーが韓国勢に押されている原因は、韓国と比べて倍ほども高い電気代にありました。 アメリカと FTA を結ぶ韓国は日本よりも格段に安く天然ガスを輸入できていたから、電気代を抑えることができていました。 今後 安値でシェールガスが入ってくると、日本の基幹産業である製造業が息を吹き返すでしょう」(伊原氏)
さらにシェールガスが原油価格を押し下げるとの見方も……。 中堅商社の社長がこう話す。
「原油価格の国際的指標となる WYI 原油価格は現在、90ドル台で高止まり状態。 中東諸国が原油の生産量を意図的に抑えているためです。 しかし、今後はシェールガスの輸出を伸ばすアメリカに対抗して中東諸国がシェア奪還とばかりに生産量を増大させてくるはず。 そうなれば原油は適正価格に近づき、1バレル=50ドル程度に急落する可能性もあります」
となれば、ガソリン代も下がる? シェールガス輸入解禁の恩恵は、アベノミクスよりもはるかに大きそうだ。
…………………………………………………………
※追加2_ ● 世界が注目する新エネルギー
日々変わりゆく世界に、また新しい主役がやってきました。 その名はシェールガス。 石油や従来の天然ガスに匹敵するかもしれない将来有望なエネルギーとして、ここ数年世界的に注目されています。
そもそも、シェールガスとはどのようなエネルギーなのでしょうか? シェールガスは文字通りガスの一種であり、火力発電をはじめ、いろいろな用途に利用が可能なエネルギーです。 このガスは、地表から2000~3000メートルもの深い場所にある頁岩 (けつがん) 層という層に多量に存在するといわれ、頁岩層は別名「シェール層」ともいわれることから「シェールガス」と名付けられました。主成分はメタンとされています。
シェールガスの存在自体は、1990年代など かなり以前から知られていたのですが、ここ数年で地下からの採掘技術が急速に進化したため、本格的な採掘が始まりました。 特に積極的なのがアメリカ。 アメリカは広い国土のあちらこちらにシェールガスのガス田が存在していて、各地で本格的な採掘がすでに行われています。
● 実際に起こっている「革命」とは?
シェールガスの採掘が本格的に始まって、世にいう「革命」がアメリカで本当に起こっているのでしょうか? 現在のところ 最大の影響はガス価格の下落です。 これまで天然ガスなどに依存していたガス需要ですが、これからは低コストのシェールガスが大量に供給される見通しで、アメリカのガス価格は急落しています。
もう1つの「革命的」予測としては、シェールガスによってアメリカの経常収支が黒字化するのではないかといわれていること。 アメリカは長年の経常赤字国ですが、シェールガスを大量に生産して輸出することができれば、経常収支が黒字になるという予測が出ています。 長年赤字だったアメリカの経常収支が黒字になれば、それだけでも「革命」と呼ぶにふさわしいかもしれません。
● 日本にはどう影響するのか
日本へのポジティブな影響は、まずガス輸入価格が下げられること。 日本は2年前の震災・原発事故以来、原発をほぼ全て停止しています。 そのため 発電の多くを火力発電に依存し、その燃料輸入で莫大な費用を払っている状態です。 その費用によって、日本の貿易収支も黒字から赤字に転落。
日本がシェールガスを他の燃料よりも低コストで輸入することができれば、貿易赤字も多少は改善されます。 ここ2年で燃料費高騰のために上がっていた電気代も多少は値下げされるでしょう。
ちなみに 東京電力は、すでに2017年からシェールガスをアメリカから輸入すると発表しています。 それによるコスト削減効果は約 15% とのこと。 なぜ2017年からなのかというと、現在でも既存 LNG (液化天然ガス) などの契約は残っており、またその他の理由もあり、すぐにシフトができないとのこと。
もう1つ 日本へのポジティブな影響としては、シェールガス採掘のため、日本の多くの技術が必要とされることです。 2000メートル以上の地中深くに通せるパイプや、輸出するために必要なシェールガスの液化技術など、シェールガスビジネスにおいて日本企業に求められる技術は数多くあります。
アメリカだけではなく世界的にシェールガスの採掘が盛んになれば、技術を持つ日本企業に大きなビジネスチャンスとなります。
● 気になる他国の動向
シェールガスはアメリカの「独占物」ではなく、他国にも埋蔵があります。 例えば、中国。 中国国内にも多量のシェールガスが存在しているといわれていて、今後採掘が盛んになる可能性があります。
中国とアメリカの最大の違いは、当然その人件費。 中国が本格的に生産を始めると、アメリカよりもさらに安価で提供できるようになるのは間違いありません。そうなると既存のガスも含め、世界のガス市場はさらに低価格化が進むでしょう。
しかし 物事にはメリットがあれば、当然デメリットもあります。 シェールガスによって最も苦境に追い込まれると思われるのは、天然ガスなど既存のガス業界。 シェールガスによってガス価格が下落すれば、それによって既存のガス業界への打撃は容易に想像できます。
価格低下だけならともかく、なかには仕事を失ってしまう既存のガス関連企業もこれから出てくるでしょう。
● 環境汚染問題も
また シェールガス採掘による環境への悪影響がすでに指摘されています。 シェールガス採掘は、「水圧破砕法」という手法が使われています。これは化学物質を含む大量の水を地中に流し込み、水圧によって地層に割れ目を作ってガスを採掘できるようにする方法で、この化学物質によって採掘地域周辺の地下水が汚染されると専門家が指摘しています。 さらに恐ろしいことに、水圧破砕法を使用することによって、地震が起こりやすくなるという指摘も。
水圧破砕法と地震との関係は、まだきちんと証明されていませんが、一部のシェールガス採掘をしている地域で地震の数が突然増えているという観測データも出ており、本当だとすれば かなりリスクが高いといえるでしょう。
● 正直、「革命」かどうかは現在判然とせず
最後に、マスコミが最近頻繁に使っている「シェールガス革命」は、本当にその言葉にふさわしい革命をもたらすのでしょうか?
「シェールガスは今後世界のエネルギーを数百年間賄う」という見通しもありますが、これは楽観的すぎます。「せいぜい数十年間」という予測もあり、数百年もつというのは現時点では証明しようがありません。 また「石炭や石油の実用化に匹敵するエネルギー革命となる」という見方もありますが、これもまた現時点ではなんともいえません。
なんとも判然としないことがまだ多くありますが、日本への影響はポジティブになりそうなので、今後の採掘拡大に期待しましょう。
以上
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今後 世界のエネルギーの状況を一変しかねない “シェールガス革命”。 先頃 産出国の米国は日本への輸出を "あっさりと認める" 決定をした。 その背景は、同盟国 日本への好意か? 尖閣諸島問題で盛んに日本を挑発する中国へのアテツケか? それとも 米国の (エネルギー) 輸出額を増やそうという企みか? 色々な思惑が何重にも重なってのことでしょうが、それをよく見極めておきたいところです。
まず 日本のエネルギー事情ですが、東日本大震災後 日本の原発は全て定期検査で停止し、再稼働の見通しがたっていません。 しかも様々なエネルギーの中でも、日々欠かせない電力は貯めておくことが出来ず、毎日必要量を発電・消費しなくてはなりません。 原油備蓄タンクのように1~2年分 蓄電池に貯めておくことなど、全く想定できません。
要するに 技術的に不可能なのです。 そのために 代替え火力発電所で発電量を増やして、従来 原発で発電していた分を補っていますから、その火力発電所の燃料の LNG を高値で (中東などから) 輸入しているため、日本の貿易赤字が膨らむ原因となっています。 この LNG が安値で入手できるようになれば、日本の電力業界のみならず、産業界にとっても 朗報であることは間違いないところです。
そして 米国は TPP 非参加国にはシェールガス輸出を認めないとしていましたから、安倍首相が先頃 訪米して TPP 参加を表明したことで、日本への輸出を認める決定を下しました。 確かに 同盟国 日本への好意と想像しますが、中国を牽制する意味合いも含まれていると思いますね。
米国による “G2 体制提案” を蹴飛ばして以降 中国は何かと米国による世界秩序を乱すような動きを強め、市場経済分野では今にも米国を凌駕しようという鼻息です。 ハイテク領域では米国で中国の多数のスパイが暗躍しているともいわれ、また 米国へのサイバー攻撃による幾つかの疑いの震源は中国ともいわれ、米国としては中国に “何らかのカツ” を入れたいという思いもあったのではないでしょうか?
特に尖閣諸島周辺海域に中国船を出して、日本を挑発している中国には一触即発を防止するためにも 何らかの意思表示をする必要に迫られていたと想像しますね。 その他にも 色々と理由がありますが、それは記事1でお読み下さい。
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「アメリカの “シェールガス輸出解禁” で何が変わる?」(5月30日 興山英雄/週プレNEWS) _ ※追加1へ
「一体何がすごい? “シェールガス革命” とは」(2月26日 All About 編集部) _ ※追加2へ
ウィキペディアから__ シェールガス (shale gas) は頁岩 (シェール) 層から採取される天然ガス。 過去 シェールガスは頁岩層に自然にできた割れ目から採取されていたが、2000年代に入ってから水圧破砕によって坑井に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し、シェールガス生産量が飛躍的に増加し シェールガスブーム、シェールガス革命などと呼ばれるようになった。
米テキサス州バーネットシェールが経済的に成功したことは、アメリカとカナダにおけるシェールガスフィールドの探鉱に拍車をかけた。 しかし、急激な生産拡大と価格低下により開発企業の収益が悪化、2013年4月、独立系の GMX リソーシズ社が天然ガス価格の低迷から資金繰りに行き詰まり、連邦破産法 (Chapter11) の適用を受けた。 大手のチェサピークエナジーは資産売却に追われ、最大手のエクソンモービルも利益が出ていない。
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以上
※追加1_ 世界のエネルギー事情を一変させた「シェール革命」。 その先頭を突っ走るアメリカが、シェールガスの対日輸出を解禁した。 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の上席研究員、伊原賢 (まさる) 氏が語る。
「日本は東日本大震災後からアメリカに輸出解禁を要請していたが、それが認められた形。 4年後の2017年にアメリカ産シェールガスの対日輸出が始まります」
輸出解禁は日本にとっての悲願だった。 伊原氏がこう続ける。
「現在 アメリカの天然ガスの購入価格が 100万 BTU 当たり4ドル台であるのに対し、日本はその4倍超の約 16ドル。 イギリス (約8ドル) と比較しても倍以上です。 震災後に原発を停止し、その代替燃料として LNG (液化天然ガス) を大幅に増やした日本は、産出国カタールに足元を見られ、高値の LNG を買わされていた。 シェールガスはそんな状況を打破する決定的な切り札になります」
でも なぜアメリカは今になって日本への輸出を解禁したのか? 資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏が語る。
「アメリカはシェールガスのような戦略資源について、日本のような FTA (自由貿易協定) 非締結国への輸出を原則認めていません。 今回、アメリカが対日輸出解禁に踏み切ったのは、日本が TPP (環太平洋パートナーシップ協定) への交渉参加を表明したためです。 安倍首相の決断がなければシェールガスの輸出解禁はなかったといえるでしょう」
アメリカにはこんな事情も……。
「05年以降からシェールガスの生産量が急拡大したアメリカでは供給過剰に陥り、天然ガスの価格は08年時点で 100万 BTU 当たり 13ドルだったのが、昨年には2ドル前後まで暴落。 シェールガスの採算ラインは4ドルから6ドルなので、その水準まで値を押し上げるためにも、過剰在庫のはけ口 (輸出先) が必要だったというわけです」(柴田氏)
柴田氏が続ける。
「アメリカにとって、FTA 非締約国へのシェールガスの輸出解禁は今回の日本が第1号。 というのも、シェールガスを輸出するためには気体であるシェールガスを液化するための巨大なプラントが必要になります。 建設費は一基で数千億円規模。 資金力のある日本の企業にそのカネを出させようというもくろみもあったでしょう」
では、輸出解禁で日本にはどんないいことがある?
「先述のとおり、現在のアメリカの天然ガス価格は4ドル台。 これを日本が輸入する場合、液化コスト3ドル、船代3ドルとアメリカの利益が加わりますが、それでも 11、12ドル程度で輸入できるはずです」(前出・伊原氏)
現在の価格 (16ドル) と比べると最大で3割安。 その効果は?
「例えば 日本の家電メーカーが韓国勢に押されている原因は、韓国と比べて倍ほども高い電気代にありました。 アメリカと FTA を結ぶ韓国は日本よりも格段に安く天然ガスを輸入できていたから、電気代を抑えることができていました。 今後 安値でシェールガスが入ってくると、日本の基幹産業である製造業が息を吹き返すでしょう」(伊原氏)
さらにシェールガスが原油価格を押し下げるとの見方も……。 中堅商社の社長がこう話す。
「原油価格の国際的指標となる WYI 原油価格は現在、90ドル台で高止まり状態。 中東諸国が原油の生産量を意図的に抑えているためです。 しかし、今後はシェールガスの輸出を伸ばすアメリカに対抗して中東諸国がシェア奪還とばかりに生産量を増大させてくるはず。 そうなれば原油は適正価格に近づき、1バレル=50ドル程度に急落する可能性もあります」
となれば、ガソリン代も下がる? シェールガス輸入解禁の恩恵は、アベノミクスよりもはるかに大きそうだ。
…………………………………………………………
※追加2_ ● 世界が注目する新エネルギー
日々変わりゆく世界に、また新しい主役がやってきました。 その名はシェールガス。 石油や従来の天然ガスに匹敵するかもしれない将来有望なエネルギーとして、ここ数年世界的に注目されています。
そもそも、シェールガスとはどのようなエネルギーなのでしょうか? シェールガスは文字通りガスの一種であり、火力発電をはじめ、いろいろな用途に利用が可能なエネルギーです。 このガスは、地表から2000~3000メートルもの深い場所にある頁岩 (けつがん) 層という層に多量に存在するといわれ、頁岩層は別名「シェール層」ともいわれることから「シェールガス」と名付けられました。主成分はメタンとされています。
シェールガスの存在自体は、1990年代など かなり以前から知られていたのですが、ここ数年で地下からの採掘技術が急速に進化したため、本格的な採掘が始まりました。 特に積極的なのがアメリカ。 アメリカは広い国土のあちらこちらにシェールガスのガス田が存在していて、各地で本格的な採掘がすでに行われています。
● 実際に起こっている「革命」とは?
シェールガスの採掘が本格的に始まって、世にいう「革命」がアメリカで本当に起こっているのでしょうか? 現在のところ 最大の影響はガス価格の下落です。 これまで天然ガスなどに依存していたガス需要ですが、これからは低コストのシェールガスが大量に供給される見通しで、アメリカのガス価格は急落しています。
もう1つの「革命的」予測としては、シェールガスによってアメリカの経常収支が黒字化するのではないかといわれていること。 アメリカは長年の経常赤字国ですが、シェールガスを大量に生産して輸出することができれば、経常収支が黒字になるという予測が出ています。 長年赤字だったアメリカの経常収支が黒字になれば、それだけでも「革命」と呼ぶにふさわしいかもしれません。
● 日本にはどう影響するのか
日本へのポジティブな影響は、まずガス輸入価格が下げられること。 日本は2年前の震災・原発事故以来、原発をほぼ全て停止しています。 そのため 発電の多くを火力発電に依存し、その燃料輸入で莫大な費用を払っている状態です。 その費用によって、日本の貿易収支も黒字から赤字に転落。
日本がシェールガスを他の燃料よりも低コストで輸入することができれば、貿易赤字も多少は改善されます。 ここ2年で燃料費高騰のために上がっていた電気代も多少は値下げされるでしょう。
ちなみに 東京電力は、すでに2017年からシェールガスをアメリカから輸入すると発表しています。 それによるコスト削減効果は約 15% とのこと。 なぜ2017年からなのかというと、現在でも既存 LNG (液化天然ガス) などの契約は残っており、またその他の理由もあり、すぐにシフトができないとのこと。
もう1つ 日本へのポジティブな影響としては、シェールガス採掘のため、日本の多くの技術が必要とされることです。 2000メートル以上の地中深くに通せるパイプや、輸出するために必要なシェールガスの液化技術など、シェールガスビジネスにおいて日本企業に求められる技術は数多くあります。
アメリカだけではなく世界的にシェールガスの採掘が盛んになれば、技術を持つ日本企業に大きなビジネスチャンスとなります。
● 気になる他国の動向
シェールガスはアメリカの「独占物」ではなく、他国にも埋蔵があります。 例えば、中国。 中国国内にも多量のシェールガスが存在しているといわれていて、今後採掘が盛んになる可能性があります。
中国とアメリカの最大の違いは、当然その人件費。 中国が本格的に生産を始めると、アメリカよりもさらに安価で提供できるようになるのは間違いありません。そうなると既存のガスも含め、世界のガス市場はさらに低価格化が進むでしょう。
しかし 物事にはメリットがあれば、当然デメリットもあります。 シェールガスによって最も苦境に追い込まれると思われるのは、天然ガスなど既存のガス業界。 シェールガスによってガス価格が下落すれば、それによって既存のガス業界への打撃は容易に想像できます。
価格低下だけならともかく、なかには仕事を失ってしまう既存のガス関連企業もこれから出てくるでしょう。
● 環境汚染問題も
また シェールガス採掘による環境への悪影響がすでに指摘されています。 シェールガス採掘は、「水圧破砕法」という手法が使われています。これは化学物質を含む大量の水を地中に流し込み、水圧によって地層に割れ目を作ってガスを採掘できるようにする方法で、この化学物質によって採掘地域周辺の地下水が汚染されると専門家が指摘しています。 さらに恐ろしいことに、水圧破砕法を使用することによって、地震が起こりやすくなるという指摘も。
水圧破砕法と地震との関係は、まだきちんと証明されていませんが、一部のシェールガス採掘をしている地域で地震の数が突然増えているという観測データも出ており、本当だとすれば かなりリスクが高いといえるでしょう。
● 正直、「革命」かどうかは現在判然とせず
最後に、マスコミが最近頻繁に使っている「シェールガス革命」は、本当にその言葉にふさわしい革命をもたらすのでしょうか?
「シェールガスは今後世界のエネルギーを数百年間賄う」という見通しもありますが、これは楽観的すぎます。「せいぜい数十年間」という予測もあり、数百年もつというのは現時点では証明しようがありません。 また「石炭や石油の実用化に匹敵するエネルギー革命となる」という見方もありますが、これもまた現時点ではなんともいえません。
なんとも判然としないことがまだ多くありますが、日本への影響はポジティブになりそうなので、今後の採掘拡大に期待しましょう。
以上