記憶の向こうにあるもの・・・『明日の記憶』(2006年8本目)

『明日の記憶』・・・萩原浩2004年10月出版の同名小説を映画化したものだ。


『アルツハイマー病』を知っているだろうか?
脳の神経細胞が萎縮する・・・平たく言えば脳ミソが縮んで痴呆になる病気だ。
老人の痴呆症のほとんどはこの病気なので特別珍しい病気ではないそうである。
年をとれば脳の老齢化にともない誰にでも起こる可能性のある病気。
いわゆる認知症やボケたなどといわれる症状だ。

しかしこれがまだ働き盛りの40代~50代、
いや最近は20~30代での発症も珍しくはないらしい。
そんなまだまだこれからという時期に、もしもこの病気『若年性アルツハイマー病」を発病したらどうしょう。

この映画の主人公佐伯雅行は49歳、広告代理店のエネルギッシュなやり手の営業部長。
そんな彼がある日この病気を発病し、会社を辞めて最後に自分の奥さんの名前も記憶から消えていくまでを綴った映画だ。


自分はまだ原作を読んではいない。
話の密度はやはり原作のほうがあるのだろうが、
映画化で一番成功していると思うのは、映像によって観客もアルツハイマーの症状と発症の恐怖を擬似体験できることだ。
それは医者の「次の質問に答えてください」というところから
まるで自分が質問されているような気持ちで映画の世界に入っていける。

この映像からどんどん送られる恐怖心は最近モノ忘れが多い中年以降の人にはより迫力をもって伝わってくるのではないだろうか。

若年性が増えているのは、食生活の乱れやストレス、喫煙、寝不足など
生活習慣病なんかと同じ要因もあるようだ。
自分の前職でも上司、同僚でもアルツハイマーはいなかったものの。
30代はスゴイ元気だったのに40代になると亡くなった人や病気になる人が激増した。
オレもそうだけど友達も三人くらいは心臓病になった。
やはり30代にガンガン飛ばした反動がきたんだろうな。
40代になったとたんそのつけがきた感じだ。

渡辺謙はこの病気の怖さを迫真の演技で演じていた。
役者としての才能のすごさもあるだろうが、あの白血病との闘病生活から経験も活きているのかもしれない。
アルツハイマー病の自分の中からドンドン記憶が消えていくことの恐怖は
やがて悲しみに変わっていく。

自分が誰かを認識できなくなり、自分が愛した人も認識できなくなる。
さらにその人とくらした思い出も記憶の中から消える。
いつかそんな日がやってくるとわかったらとても悲しくせつない。
その辺の感情をじっくりと感じたいから次は原作を読んでみたい。

※いささか唐突な感じで使われていたが
挿入歌のスリードッグナイトの『ジョイ・トゥ・ザ・ワールド』と
哀愁のある女性リードボーカルと間奏のギターソロが印象的な
ショッキングブルーの『悲しき鉄道員』の70年代ポップスが
耳に残った。


「明日の記憶」の公式サイト

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