一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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今日のことば(112) ― スティーブン・J・グールド

2006-03-27 07:53:35 | Quotation
「人々が判断の道具を持つことを学ばずに、希望をおうことだけを学んだとき、政治的な操作の種が蒔かれたことになる。」 

スティーブン・J・グールド(Stephen Jay Gould, 1941 - 2002)
アメリカの古生物学者。ハーバード大学教授。バージェス頁岩で発見された化石を考察し『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』を著わす。また、進化を巡り『利己的な遺伝子』のドーキンスらを相手に論争を繰り広げる。米国で進化論教育の是非が問われれば科学者として矢面に立ち、広範な教養を基礎に『ナチュラル・ヒストリー』の月刊連載を1回も欠かすことなく四半世紀続け、『ダーウィン以来』『パンダの親指』『フラミンゴの微笑』『ニワトリの歯』『ワンダフル・ライフ』などの科学エッセイ集を刊行。
『個体発生と系統発生』はグールドの断続平行説とよばれる本格的で独創的な進化理論の大冊、『人間の測りまちがい』は自然に対する人間のスケールの取り方の問題を論じた注目すべき本。

グールドの言う「判断の道具」とは、論理的/科学的思考方法であり、「希望をおいうこと」とは、信念/信仰体系(=イデオロギー)と考えてもよいであろう。

権力者は、「論理的思考方法」を重視しているように振る舞うこともあるが(例えば、初等・中等教育での科学教育重視)、実際には、人びとに自らに都合の良い「信念/信仰体系」を信じていてほしい、と深く願っている。
いわく「愛国心教育」、いわく「道徳教育」などなど。

「愛国心」を抱くか抱かないかは、各人の自由な意思の問題で、国家が強制すべきものではないだろう(それは「俺を愛せ!」と無理矢理に命令することにも似ている)。
そして、その根拠には「論理的/科学的思考方法」とは不適合な部分が出てくるのも確かなこと(全面的に「正しい」歴史的過程を踏んできた国家などありはしない)。

グールドが直接に対象としているのは、疑似科学であり超科学であるのだが、このような「国家による信念体系の刷り込み/強制」も、その射程には入ってくるであろう。

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