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シャープ、蓄エネ技術の開発を開始--大規模電力貯蔵ができる「フロー型亜鉛空気電池」活用 202208

2022-08-25 01:10:28 | 気になる モノ・コト

シャープ、蓄エネ技術の開発を開始--
 大規模電力貯蔵ができる「フロー型亜鉛空気電池」活用
 Cnet Japan より 220825  大河原克行

 シャープは、大規模な電力貯蔵に適した「フロー型亜鉛空気電池」を用いた蓄エネルギー技術の開発をスタートした。
 2024年度に開発を完了し、2025年度以降の事業化を目指す。
 開発を目指す蓄電池は、大容量化に最適している一方で、設置する面積が大きくなることから、メガソーラーや風力発電のような再生可能エネルギーの蓄電などを主な用途に想定している。今後は、他社との協力も視野に入れて開発や事業化を進めることになる。

 シャープでは、「長年培ってきた亜鉛空気二次電池の技術をベースにして、新たにフロー型方式を採用することで、低コストで、大容量の蓄エネルギー技術の確立を目指していく」と述べている。

 オフィスや工場での自家消費用途や、発電所やマイクログリッドでの分散型電力貯蓄用途などに展開することで、再生可能エネルギーの普及促進とともに、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献できるとしている。

 なお、今回の取り組みは、環境省の「令和4年度地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」の「ボトムアップ型分野別技術開発・実証」による採択事業となっている。

 フロー型亜鉛空気電池は、空気中の酸素を活用して充電や放電を行う空気電池の一種であり、電気を蓄える蓄エネルギー物質に亜鉛(Zn)を利用しているのが特徴だ。充放電を担うセルと、フロー型方式を採用し、セルで充電された亜鉛の貯蔵を担う貯蔵部で構成している。

 充電では酸化亜鉛(ZnO)が亜鉛に化学変化する際に、電子を蓄える。また、放電では空気中に含まれる酸素との作用によって、亜鉛が酸化亜鉛に戻る際に、蓄えていた電子を放出して、電気を取り出すことができる。酸化亜鉛と亜鉛の変化サイクルを活用することで、繰り返しでの充電および放電が可能な蓄電池として活用することができる。

 亜鉛を利用したフロー型二次電池には、いくつかのメリットがあるという。1つ目は、安価な亜鉛を蓄エネルギー物質に利用するため、低コスト化が可能であるという点だ。

 現在の蓄電池では、蓄エネルギー物質にリチウムを利用することが主流となっているが、リチウムは、産出国や精製国が限られているため、調達に関わるコストが高価であり、需給が逼迫するリスクもある。社会情勢の変化や地政学的リスクも受けやすいといえる。それに対して、亜鉛は多くの地域で産出および精製されるため、安価であり、供給も安定しているのが特徴だ。

 2つ目は、セルと貯蔵部がそれぞれに独立したフロー型方式を用いているため、貯蔵部の大型化が容易であり、大容量化に適しているという点だ。「原理上、貯蔵部はセルより低コストであり、大容量化する際にはコストメリットが大きい。安価な亜鉛の利用と相まって、低コスト、大容量の蓄電池を実現できる」という。

 3点目は、水系電解液による高い安全性を実現していることだ。亜鉛を浸す電解液には水系の液体を使用しているため、発火の可能性が極めて低く、有機溶剤を用いた蓄電池よりも、高い安全性を確保できる。

 シャープでは、「豊富で安価な資源である亜鉛を利用することに加えて、貯蔵部の大型化による大容量化が容易なことから、低コストで大容量の蓄電池が実現できる。また、電解液には水系の液体を使用しているため、高い安全性も確保できる」とし、
 「日本では、再生可能エネルギーに高い関心が集まっており、政府が掲げたエネルギー基本計画では、2030年度には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの電力構成比を36~38%に高める目標が掲げられている。
 だが、自然条件によって発電量が変動する再生可能エネルギーを主力電源化するには、蓄電池を活用した電力供給の平準化が必要不可欠となる。革新的な電力貯蔵技術の開発が期待されており、フロー型亜鉛空気蓄電池はそこに貢献できる」としている。

 なお、モバイルバッテリーや家庭用蓄電池のような小型蓄電池への応用は現時点では未定だという。

 シャープでは、環境ビジョンとして、カーボンニュートラルの実現に向け、「2050年における自社活動での温室効果ガス排出量実質ゼロ」を掲げ、2035年までに、2021年度比で60%の削減を目指している。

 また、2022年4月に就任したシャープ 社長兼CEOの呉柏勲氏は、「ESGに重点を置いた経営」に取り組む姿勢を強調。
 そのひとつとして、「カーボンニュートラルへの貢献」打ち出し、エネルギーソリューション事業の変革を加速することによって、再生可能エネルギーの拡大に貢献する考えを示している。

 これまでは、住宅用太陽光発電や産業用太陽光発電、EPC(設計・調達・施工)、アジア向けPPAサービスのほか、V2Hシステム、車載用シリコンモジュールなどの取り組みについては示していたが、フロー型亜鉛空気電池を用いた蓄エネルギー技術は、将来に向けたロードマップのなかには含めていなかった。
 今回の取り組みは、再生可能エネルギーの拡大に貢献する技術のひとつとして、新たに位置づけるものになる。

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