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量子コンピューターの頭脳であるQPUとは一体何なのか?をNVIDIAが解説 202208

2022-08-03 21:32:00 | なるほど  ふぅ〜ん

量子コンピューターの頭脳であるQPUとは一体何なのか?をNVIDIAが解説
  by IBM Research
 Gigazain より 220803


 従来のコンピューターとまったく異なる計算方式を採用しているため、従来よりも圧倒的な速度と量の計算をこなすことができる量子コンピューターの計算ユニット「QPU」について、半導体企業のNVIDIAが解説しています。

What Is a QPU? | NVIDIA Blogs
https://blogs.nvidia.com/blog/2022/07/29/what-is-a-qpu/

 量子コンピューターは従来のコンピューターよりもはるかに高い計算能力を持ち、これまで「時間がかかりすぎるために解決が事実上不可能」とされたような問題も解決できる可能性が期待されています。
 例えば、さまざまな暗号技術の核となる因数分解計算も量子コンピューターによって爆速で解決できます。もちろん今日の暗号技術が持つセキュリティ性を一瞬にして破壊してしまう可能性はありますが、同時にこれまで以上に解読が難しい暗号を開発することも可能になります。
 他にも、原子レベルで量子力学をシミュレートしたり、タンパク質や薬品などの構造解析、飛行機の設計など、ありとあらゆる分野で役立つといわれています。

 QPUとは量子コンピューターの頭脳のことで、電子や光子などの粒子の振る舞いを利用して、従来のコンピューターのプロセッサよりもはるかに高速に特定の種類の計算を行うものです。
 QPUは「量子重ね合わせ」や「量子もつれ」といった量子力学の現象を利用し、並列計算を行います。一方で従来のコンピューターに使われるCPUやGPUなどは、古典物理学の原理を電流に応用したものです。そのため、量子コンピューターに対して従来のコンピューターは「古典コンピューター」と呼ばれます。

 例えば、CPUとGPUは電流のオンあるいはオフ状態をビット単位として計算を行いますが、QPUの量子ビットでは0と1だけではなく、「0と1を重ね合わせた状態」を示すことができます。古典ビットで3ビットの場合は「000」「001」「010」「011」「100」「101」「110」「111」のうち、一度に表わすことができるのはどれか1つだけです。
 しかし、量子ビットは0と1の重ね合わせの状態を示すことができるため、複数の状態を同時に表わすことが可能になります。

 量子コンピューターでは従来のコンピューターで1つ1つ行っていた計算を同時並列で行えるようになるため、これまでのコンピューターでは莫大な時間が必要だった計算も爆速で終わらせることができます。
 例えば、量子コンピューティング企業のQuantum Computing Inc.(QCI)は、BMWとAmazon Web Servicesが出した車両センサー配置に関する3854変数と500以上の条件が与えられた問題を解決したと発表しました。
 この問題は従来の古典コンピューターだと非常に時間がかかる問題でしたが、QCIの量子コンピューターはわずか6分で答えを出したそうです。

 もちろん量子ビット数が多ければ多いほど、可能な並列計算の量が増えるので、量子ビット数はQPUの能力に直結します。また、量子コンピューターの研究者はQPUのパフォーマンスをテストおよび測定するための方法を模索しています。

 QPUに量子ビットを構築する方法として最も人気のあるアプローチが、「超伝導量子ビット」と呼ばれる技術で、2つの超伝導体の間に絶縁体を挟むジョセフソン接合で、クーパー対と呼ばれる2個の電子がトンネル効果によって絶縁体を通過する現象を利用し、量子力学的重ね合わせを実現するというものです。
 量子ビットに使われる超伝導体の状態を持続させるため、量子コンピューターの回路は液体窒素などで極低温で動作させる必要があります。

 また、一部の企業は電子ではなく光子を使って量子ビットを開発しています。光子の振動や経路を0~1として計算を行うため、超伝導量子ビットと異なり、液体窒素などで量子ビットを極低温に保つ必要がありません。
 ただし、光子を管理するためのレーザーと高度な検出器が必要になるほか、検出時にエラーが起こりやすいという点がデメリットとなります。 

 他にも、電磁場で荷電粒子(イオン)を細くするイオントラップを用いて量子重ね合わせの状態を作り出すイオントラップ型量子ビットなど、量子ビットの実現方法にはさまざまなやり方が研究されています。NVIDIAは「今はまだ量子コンピューターの黎明期であるため、QPUの量子ビットにどの種類の量子ビットが広く使われるようになるのかは明らかになっていません」と述べています。

 ただし、いずれの方法においても、極低温を維持できる冷蔵庫や真空エンクロージャー、電磁シールドなど、一般の家庭には設置できないような施設が必要となります。
 そのため、量子コンピューターは主にスーパーコンピューティングを求められる研究施設や大規模なデータセンターに設置されるだろうと予想されています。

 そんなQPUで実用的なものが登場するのはまだ先のことだろう、とNVIDIA。ハードウェアレベルでは、QPUは現実世界の多くの仕事に対応できるほど強力ではなく、信頼性も十分なものではないとのこと。
 また、QPUに対応したソフトウェアもまだ初期段階であり、これは古典コンピューターの黎明期にアセンブリ言語のエンジニアたちが四苦八苦したのと同じことだとNVIDIAは述べています。

 しかし、AmazonやIBM、IonQ、Rigetti、Xanaduといった複数の企業がハードウェアの研究に投資しているほか、量子コンピューター向けのソフトウェア環境を整えるプロジェクトがさまざまな企業によって進められているそうです。
 NVIDIAも、量子コンピューターと古典コンピューターを連係させたハイブリッド量子コンピューティングシステムをプログラミングするためのオープンプラットフォームであるQuantum Optimized Device Architecture(QODA) を発表しています。

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