震度5弱以上の地震、すでに昨年の3倍、なぜ? 倒壊リスクが高い最近の地震の特徴
AERA より 240516 野村昌二
4月17日深夜、豊後水道を震源に起きた地震で屋根瓦が落下した、高知県宿毛市の建物。地震は時間と場所を選ばない
今年、震度5弱以上の地震が多く観測されている。なぜ、大きな揺れが相次いでいるのか。最近の地震にはどんな特徴があるのか。AERA 2024年5月20日号より。
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かつて体験したことのない激しい横揺れが10秒近く続いた。
「立っているのがやっとで、すごい怖かったです」
高知県宿毛(すくも)市に住む女性(25)は地震の恐怖を語る。
4月17日午後11時14分ごろ、西日本の広い範囲を突然の揺れが襲った。愛媛県と大分県に挟まれた豊後水道を震源に、地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.6、愛媛県愛南町(あいなんちょう)と宿毛市は最大震度6弱を観測した。女性はちょうど風呂から上がったところだった。揺れでクローゼットの扉が開き、中から掃除機や布団が飛び出した。怖くて、その日は車中泊をしたという。
「ついに、南海トラフ(巨大地震)がきたと思いました」
■直下型と海溝型の二つ
南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州東沖にかけて延びる南海トラフを震源域とする地震だ。30年以内に70~80%の確率で発生し、想定されるMは8~9級、最大震度は7。「次の大地震」として懸念され、豊後水道はその想定震源域に当たる。そのため今回の地震で女性のように、多くの人の脳裏を南海トラフ巨大地震がよぎった。
だが、地震のメカニズムに詳しい東北大学の遠田(とおだ)晋次教授(地震地質学)は、両者は「直接関係はない」と言う。
「豊後水道を震源に起きた地震は、フィリピン海プレートの内部で起きた直下型地震。プレート境界で起きる南海トラフ巨大地震とは直接関係ありません」
しかし、気になるデータがある。
震度7を観測した元日の能登半島地震をはじめ、今年になって震度5弱以上の地震は豊後水道の地震を含め23回。
昨年1年間の8回を大きく上回る。4月3日には、台湾東部の花蓮県(かれんけん)を最大震度6強の地震が襲った。
日本列島は、海側の太平洋プレートとフィリピン海プレート、陸側の北米プレートとユーラシアプレートの4枚のプレート(岩板)が接する境界付近に位置する。
日本列島は、海側の太平洋プレートとフィリピン海プレート、陸側の北米プレートとユーラシアプレートの4枚のプレート(岩板)が接する境界付近に位置する。
地震は、海側のプレートと陸側のプレートがせめぎ合い、ひずみがたまると発生する「海溝型地震」と、プレート内の断層面がズレて起きる「直下型地震」──主にこの二つに分けられる。
能登半島地震は直下型地震で、台湾地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で起きた海溝型地震だった。
なぜ今、日本とその周辺で、大きな揺れが相次いでいるのか。自然災害に詳しい立命館大学の高橋学特任教授(災害リスクマネジメント)は「根本的原因は太平洋プレートにある」と見る。
「2011年3月の東日本大震災以降、日本の東側にある太平洋プレートの動きが活発化しています。太平洋プレートは1年に8~10センチほど東から西に動いていて、それがフィリピン海プレートと北米プレートを圧迫し各地でひずみが生まれ、北は北海道から、南は九州・沖縄、台湾まで地震が起きやすくなっています」
■震源浅いと倒壊リスク
最近の地震の特徴として「震源の深さが比較的浅い」と言う。能登半島地震は16キロ程度、台湾地震は23キロ、四国で起きた地震は39キロだった。
「震源が浅いと周囲を激しい揺れが襲い、揺れが1往復するのにかかる『周期』が1秒程度と短いため、老朽化した木造家屋やビルなどが倒壊しやすくなります」(高橋特任教授)
前出の遠田教授は「今年が特に大きい地震が多いわけではない」と話す。
遠田教授は、昨年の4月と5月に能登半島はじめ各地で比較的大きな規模の地震が相次いだことから、1923年以降のM5以上の地震の統計を取った。
能登半島地震は直下型地震で、台湾地震はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で起きた海溝型地震だった。
なぜ今、日本とその周辺で、大きな揺れが相次いでいるのか。自然災害に詳しい立命館大学の高橋学特任教授(災害リスクマネジメント)は「根本的原因は太平洋プレートにある」と見る。
「2011年3月の東日本大震災以降、日本の東側にある太平洋プレートの動きが活発化しています。太平洋プレートは1年に8~10センチほど東から西に動いていて、それがフィリピン海プレートと北米プレートを圧迫し各地でひずみが生まれ、北は北海道から、南は九州・沖縄、台湾まで地震が起きやすくなっています」
■震源浅いと倒壊リスク
最近の地震の特徴として「震源の深さが比較的浅い」と言う。能登半島地震は16キロ程度、台湾地震は23キロ、四国で起きた地震は39キロだった。
「震源が浅いと周囲を激しい揺れが襲い、揺れが1往復するのにかかる『周期』が1秒程度と短いため、老朽化した木造家屋やビルなどが倒壊しやすくなります」(高橋特任教授)
前出の遠田教授は「今年が特に大きい地震が多いわけではない」と話す。
遠田教授は、昨年の4月と5月に能登半島はじめ各地で比較的大きな規模の地震が相次いだことから、1923年以降のM5以上の地震の統計を取った。
すると、昨年の4月15日から1カ月間に起きたM5以上の地震は23回にのぼった。これは平均値である9回をはるかに上回った。それに比べると今年の同時期はまだ少ない、という。
「地震活動は月単位で『揺らぎ』がありますし、年単位で見ても多い年と少ない年とがあり、ここ2、3年は能登半島や沖縄、伊豆諸島など各地で群発地震が頻繁に起きています」
では、今年、震度5弱以上の地震が多く観測されるのはなぜか。
「地震活動は月単位で『揺らぎ』がありますし、年単位で見ても多い年と少ない年とがあり、ここ2、3年は能登半島や沖縄、伊豆諸島など各地で群発地震が頻繁に起きています」
では、今年、震度5弱以上の地震が多く観測されるのはなぜか。
遠田教授は、震源の深さが比較的浅かったり、震源が海域でも陸地との距離が比較的近いことなどが影響しているという。
さらに、多くの人が気にした、能登半島地震と台湾地震、そして豊後水道を震源とした一連の地震の間に関連性はないと言う。
「一つ地震が起きると周辺で地震を誘発することがあります。
「一つ地震が起きると周辺で地震を誘発することがあります。
しかし影響は、能登半島地震ほどの大きさでも距離にして周辺150キロ程度。台湾と豊後水道は直線距離で約1500キロなので、影響があったとは考えにくい」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年5月20日号より抜粋