ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

Korea Japan Trip 2007 (その5:ソウル最終日)

2007年03月27日 | Korea-Japan Trip

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Korea-Japan Trip 3日目のスケジュール
サムスン電子訪問(9:00~10:10)
朝鮮日報訪問・職員との昼食会(11:00~13:30)
☆ 韓国のポップスター、ピ(Rain)との面会(14:30~16:30)
ソウル市長との面会(17:30~18:10)
☆ 韓国人友人宅での夕食

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 ソウル最終日にあたる今日は、韓国No.1企業の一つである総合家電・電子部品メーカー、サムスン(三星)電子訪問ではじまりました。

 皆でスーツで身を包み向かった先は市内の巨大なビルディング。入り口での荷物チェックがやけに厳しく、パスポートの一時預かりを求められたほか、カメラ類の持込は一切禁止。

 これは一体どうしたことかと、ケネディスクール留学以前にサムスン電子に勤めていた韓国人の友人に尋ねてみると、サムスンが抱える大きな課題の一つに知的財産の保護、具体的には企業スパイの防止があるから、とのこと。何でも高額報奨金と引き換えに企業機密を主に中国企業に売ってしまう企業犯罪が絶えないそうで、彼女が働いていた時にも、メール、ファックスの送受信を含め、社員の行動が相当厳しく監視されていたとのこと。

 既に一韓国企業ではなく、グローバル企業として世界100カ国以上でビジネス展開するサムスン電子。特に半導体部門は世界市場シェア2位を占め急成長を続ける企業と言うこともあり、参加者からはサムスンのマーケティング戦略やイメージ戦略など、グローバル戦略について質問が次々と出されました。

 僕からは、サムスンの人事政策の特徴について、具体的には年功序列・終身雇用型の雇用体系から成果主義・実力主義への移行が見られるのか、という点について質問をぶつけたところ興味深い回答を頂きました。

 「1998年の通貨危機以前、サムスンの人事体系は他の韓国企業と同じく、年功序列でした。自分の上司が自分より年下なんてことは絶対にあり得なかった(一同(特にアメリカ人)爆笑)。

 ただ、経済危機を乗り越える過程でサムソンは人事政策を見直し年功制は完全に廃止しました。今では年下の上司に仕えることも稀ではないし、給料も個々の職員の実績に応じて変動します。このような抜本的な改革を実行できたもの経済危機を背景とした危機感があったから。こうした改革を経てサムスンはグローバル企業として生まれ変わることができたのです。」

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 続いて訪問した先は、韓国のトップ新聞社である朝鮮日報。日本語版の記事配信サイトもあることから、韓国情勢に詳しい友人に紹介されて以降、僕も韓国の状況、あるいは韓国の日本観を把握するための有力なツールとして活用しています。

   

 62名のケネディスクール学生を前にはじまった朝鮮日報のプレゼンテーションの内容は予想だにしなかったものでした。終始一環発せられていたのは「朝鮮日報、さらには韓国の新聞メディアは今、瀕死の危機にある」という悲痛とも言えるメッセージ。韓国はサムスン電子等のIT企業の活躍や政府の大々的な取組みもあり、世界最大のネット大国。この結果、新聞・ラジオ等の従来のメディアはインターネット等の新メディアに完全に取って代わられており、収益の柱であった広告収入も激減。

 例えば、韓国と米国の新聞社の2003年度時点での収益率の比較を見ると、ワシントンポストは約25%、ニューヨークタイムズは18%に対し、朝鮮日報はわずか5%。しかも、韓国の新聞メディア全体の平均収益率は何とマイナス2%。

 こうした大変厳しい環境の中、現在何とか生き残り策を模索しているとのことですが、とにかく自虐的かつ正直なプレゼンが何とも印象深く感じられました。

    

 質疑応答の後は、朝鮮日報の職員の皆さんとの昼食会。中にはケネディスクールの卒業生も二人いらっしゃいました。

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 固めのイベントが続いた韓国でのスケジュールですが、この日の午後は、韓国のポップスター、ピ(Rain)と面会予定。ポップカルチャーに弱い僕はピ(Rain)のことは知りませんでしたが、CDや主演の映画・ドラマが大ヒットし、韓国だけでなく日本、中国でも人気が高いとのこと。

 しかし、

 「韓国のポップスターに会う前に、“日本のポップスター”の実力を披露しない訳にはいかんだろー!」

 ということで立ち上がったのが日本人の友人T。

 ピ(Rain)の事務所に向かうバスの中で長渕剛の「とんぼ」をカラオケで熱唱したところ、バスが揺れんばかりの大盛り上がり。酒を一滴も飲まずにここまで盛り上がれる一行の(特にラテンアメリカン軍団の)パワーには脱帽です。。

     

 Tの活躍により相当“温まった”一向は、ピ(Rain)の事務所であるJYP Entertainmentでも大はしゃぎ。彼は自分の稽古場やレコーディング部屋を案内してくれた後、20分ほど僕達との質疑応答の時間を持ってくれました。

   

 その模様は朝鮮日報にも「レインに興奮する米ハーバード大の学生たち」とタイトルで克明に取り上げられています・・・・ちなみに、記事では「学生たちはRainの到着前から興奮していた」とありますが、この背景に、Tのトンボの熱唱があったことはさすがに触れられていません(笑)。

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 韓国での最後の公式スケジュールとなったのが、呉世勳(Oh Se-hoon)ソウル市長との面会。

   

 ほぼ満開の桜を見ながら入ったソウル市庁舎。広い講堂に登場した市長の第一印象は、若い!1961年生まれとのことなので今年で46歳。最前列に座る学生と一人ひとり握手をした後に席に付いたのがまた印象的でした。

    

 僕達を歓迎するスピーチに続く質疑応答では、日韓関係、ソウル市の交通政策、他国の都市(香港・北京)との競争とソウル市の強み、貧困対策、大気汚染対策など多岐に及びました。

 その際、僕から投げかけた日韓関係に関する質問に対して、市長が「日本と韓国は長い間、そして今なお“近くて遠い国”である」と表現されたのには、思わずはっとさせられました。

 韓国は間違いなく日本にとって地理的に一番近い国ですし、例えば福岡からソウルまでは東京までの距離よりも近いくらいです。また、民主主義、自由主義経済という同じ政治・経済体制を共有しています。

 しかし、僕自身、韓国への訪問はこれが初めてであり、また、ケネディスクールで精神的に成熟した優秀な韓国人の友人達と出会い、色々と語り合う以前は、韓国という国に対して深く思いをめぐらせたことは、正直殆どありませんでした。いや、もう少し正確に言うと、日本に対して抱く韓国の人々の複雑な感情について殆ど理解していなかったといってもいいと思います。

 初めての韓国訪問となった今回のKorea Japan Tripではその準備の段階から本当に多くの事を学びました。その最大の成果の一つは、これから一生涯の付き合いになるであろう韓国人の友人達を得ることが出来たこと。そして、僕の中での「韓国との距離」がこれまでと比べて格段に近くなったことでしょう。

   

 1時間近くに亘った市長との面会は皆で肩を組みながらの記念撮影で終わりました。

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 市庁舎に向かう直前、韓国人のよき友人、DWが僕にこっそり話しかけてきました。

 「今晩、市長と会ったあと、僕の家にこないか?君を初め、MPPのクラスメートを是非、自宅に招待したいんだ。両親も楽しみにしているから。」

 思ってもいなかった素晴らしいお誘いに、MPPの仲間8人でDWの家に押しかけることに。ホテルからタクシーで1時間ほど移動した郊外にあるご自宅で待っていたのは、英語とフランス語がペラペラのお父さんと、DW曰く「スゴイ教育ママだった・・・」お母さん、そして食べきれないほどの素敵な夕食。

    

 食卓を囲みながら、韓国での思い出や厳しいケネディースクールでの日々、あるいは皆のこれからの将来について語り合いました。

 3日間とは思えないほど内容の詰まった韓国での日々。Bullet Taxiでホテルの前に乗り付けたのが一週間以上前のような思いにさせられます。

 日本人幹事の半分の人数でこんな素敵なトリップを創ってくれた韓国人の友人達のハードワークには驚きと感謝の念を抱かずにはいられません。

 そして、明日からはいよいよ僕達日本人の出番です!

 20カ国から参加した62人を乗せた飛行機は明日朝9:00にソウルを離れ、広島、関空に向けてそれぞれ旅立つことになります。


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2 コメント

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こんにちは! (いずみ)
2007-04-09 08:33:58
素敵なコメントありがとうございます(・ω・)

すっごく嬉しかったです!



私としては韓国(語)に対する理解早い内に認められたいという事が正直なところです(日々勉強しなければ…)。なのでそこを後押しされるという事がとても嬉しかったです!頑張ります!



ところで『Korea Japan Torip 2007』について全て読ませて頂きました(・ω・)



DMZ・金九博物館などの訪問

また金大中前大統領・びとの面会

行く先行く先が羨ましい!

金九に関しては私も全く知りませんでしたが…そんな素晴らしい人がやはり居たのですね!勉強になりました(‘v`人)



やはり日本・韓国の近代史についてはよくわからない事ばかりです。

「温故知新」を何時のときも頭に入れて近代史を学習していきたいです。



ビとの面会後の報道記事がおもしろいですねw

到着前の興奮はビのことではなくてT氏のトンボ…www



4つの記事を面白く読ませて頂きました!本当に勉強になりましたし考えさせられました(¨@)

また来ますね!
>いずみさん (ikeike)
2007-04-11 01:03:04
こんにちは。ブログを読んでいただき、また早速コメントをいただき、ありがとうございました。
日韓の近代史は確かに複雑で、感情的な対立を引き起こしてしまう難しい問題があるのは事実だと思います。

ただ一方で、日韓の間にはそれ以上に多くの共通点、共有する文化、価値観があるのもまた事実です。

複雑な歴史認識の違いや争いの種に目を向けるよりもまず、いずみさんのように、多くの韓国人の良き友人達をつくり、楽しみを共有し、そして信頼関係を作ることが先であるように思います。その信頼関係の上に立てば、将来、難しい問題を議論しなければならなくなったときにでも、相手の立場を理解しつつ、冷静に議論できるように思うのです。

新学期が始まり、新しいクラス、先生との出会いでワクワクすることが沢山あると思います。僕もアメリカで引き続き、色々吸収し発信していこうと思っていますので、いずみさんも、韓国語を思い切り勉強して、大勢の良い友達と思い切り遊んで、充実した二年生生活を送ってください。

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