ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

ケネディスクール出願・合格までの道(その5)

2007年08月28日 | ケネディスクール出願・合格までの道

 

 米国大学院への留学を実現する上でもっとも重要なポイントとなるエッセイ。ケネディスクールに加え、ジョージタウン大学の公共政策研究所、コロンビア大学院のSIPA、そしてミシガン大学院のフォードスクールに出願した自らの経験に加え、他のフィールドに留学経験のある多数の先輩・友人の話を聞くにつけ、公共政策大学院の出願プロセスにおけるエッセイの比重はビジネス・スクールと並び、他のプロフェッショナル・スクールよりも高く、また公共政策大学院の中でケネディスクールにおけるエッセイの重要性はことさら高いという実感を強く持つに至りました。

 今日・明日の記事では、そんなケネディスクールの出願プロセスでは実際にどのようなエッセイが課されるのか、そして何故ケネディスクールが他校と比してもなお、エッセイをより重要視するのか、僕が体験した2006年度のエッセイ課題を例に考えていきたいと思います。

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 2005年9月上旬、ケネディスクールのウェブサイトからAdmissionのページに飛び、自分の名前とe-mailを登録したことをもって、僕のケネディスクール出願プロセスが本格的にスタートしました。

 そしてウェブサイトに掲載されていた5つのエッセイのテーマは、その後4ヶ月間、僕の頭を悩ませ続け、心の中心を占拠し続けたのです。以下、暗記してしまうかと思われるほど何度も何度も目を通し、時には音読をしたケネディスクールのエッセイ課題文(2006年度出願用)を、その含意について僕なりの解釈を交えつつ紹介していきます。

Essay 1
 The Admissions Committee is interested in your academic, professional and personal development. List each significant position held, most recent first. Include in this listing the dates (including month and year, and full-time or part time), agency or firm, title, starting and ending salary, major responsibilities, and name and title of your supervisor. Please explain any gaps in your employment history. You should also include information on personal hobbies and a vocational interest. Your current resume, providing it includes all of the above information, is sufficient.

 いきなり長々と書かれているEssay1の課題文。要約すると「あなたの職歴・学歴・趣味等を箇条書きにして教えて下さい」ということで、要するに履歴書を書けと言っているのとおなじです。しかし、他校であれば単に「履歴書(Remume/CV)を添付しなさい」の一言ですまされている履歴書の提出が、エッセイの課題の一つとして課されている点に、ケネディスクールからのメッセージを敏感に感じとる必要があると思います。

 しかもわざわざ「Personal Hobbies(趣味)」や「Vocational Interest(今後のキャリア・パスの中で興味のある職業)」も含めて書くように、というおせっかいのような指示までついている。

 ここにケネディスクールの追及する姿が浮かび上がってきます。それは即ち、その人の職歴や学歴など外形的に明らかな履歴だけでなく、趣味や性格、ボランティア活動の経験、さらには今後のビジョンまで、様々な角度から出願者を観察することを通じて、「できる限り多様な“面白いキャラ”を集める」というケネディスクールの姿勢を感じ取ることができます。

 よって、このEssay1に対して「あぁ、履歴書か。これまで外資系の就職活動に使っていた履歴書をアップデートして添付しよう」では、あなた自身を理解してもらうチャンスを大きく逸してしまうでしょう。手品でも囲碁でもクラブ活動でも、自分にとって大切な事柄は全て織り込みつつ、かつ箇条書きの下に「そのポジションで自分が何を達成したのか」を簡潔かつ力強く列挙することで、自分をドンドンと売り込んでいかなければなりません。

 同時に、自分が関わったポジションが「任命(Appointed)」ポジションではなく、投票や推薦によって選ばれる「Selected」なものであるならば、そこは明確に示すことが「公共部門のリーダーの育成」をミッションとするケネディスクールの出願においては大切なポイントと言えると思います。

 

Essay 2 (Optional)
 If you have any concerns about your prior academic background or if you believe the Admissions Committee may have concerns, please give a brief explanation of your performance in college and its relation to your past and future career accomplishment.(750words)

 書いても書かなくてもどちらでもよい(Optional)という位置づけのEssay2ですが内容がなかなか興味深い。

 「あなたの学歴や成績について、(例えば留年した、あるいはGPA(成績)が悪い等の理由で)こちらが何らかの懸念を持つと思ったら、このエッセイをフォローのために使ってもいいですよ」

という感じの内容。 ここでも前述した「学歴や成績、職歴といった外形的なキャリアだけでなくその人の全人格を把握するよう努め、学生の多様性を追求する」というケネディスクールの姿勢が強く感じられますが、一方でなかなかイジワルな内容だと思いませんか?

 人は「大丈夫ですか?」と聞かれるとこれまで何も心配していなかったのにとたんに不安になるもの。僕もまさにその一人でした。

 というのも、僕は大学で一年留年して5年生で卒業、GPAも芳しくなく、しかもよく見ると大学の英語の成績が「可(C)」!これでは次から次へと懸念が湧いてくるのも無理はありません。

 「この成績を見てAdmission Officeは「コイツ大丈夫だろうか」という懸念を持つだろうか・・・(イヤ、きっと持つに違いない)」とモンモンと考えているうちにOptionalという位置づけが僕の中で「Required」に変わるまでそう長い時間はかかりませんでした。

 しかしより重要なのは「どうやってフォローするか」という問題。これが日本の就職活動だったら、「いや、サークル活動と塾講師のアルバイトに夢中になってて・・・でもその代り机上の勉強では得ることのできない、貴重な経験と学びに満ちた大学生活でした。たとえば・・・」と言った調子でペラペラとフォローできるのでしょうがそれが果してアメリカの大学院で通用する言い訳なのだろうか??下手な言い訳をするくらいだったら一層書かないほうがよいのではないか・・・

 これは散々悩みました。

 そして大勢の先輩や友人たちの意見も聞いた結果、結局、何度も書き直したエッセイ2がケネディスクールに送られることはありませんでした。

 サークル活動やアルバイトに没頭していたために大学の成績が芳しくないというのは、要するに大学の学業よりも課外活動の優先度が高かったと言っているに他なりません。しかもそれは自分自身の選択であり、そこに何の不可抗力もなかったため、日本とは比べモノにならない程大学での本業が重視されるアメリカでは、上記のような内容は「ヘタな言い訳」に他ならないという結論に達したからです。

 ここで求められているのは、例えば親が失業した、病気になった、あるいは自分自身が病気になった等の正に不可抗力によってやむを得ず学業に支障が出たという事情を持つ人の経験とそこから得た人間的な成長であるといえると思います。

 またケネディスクールで留学生のGPAは出願プロセスの中でそれ程大きなウェイトを占めておらず、英語の成績については現在はTOEFL等で必要なスコアを上げているのだから特段懸念する必要はない、という大勢の人からのアドバイスがあったことも、Essay2が日の目を見なかった理由の一つでした。

 いずれにしてもエッセイを書くときの大切なポイントの一つは、課題文を何度も何度も繰り返し読んで、そこで何が求められているのか、ケネディスクールの視点に立って熟考することだと言えるでしょう。


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